「1997」によるリーガルリリーの実験
イントロのただならぬベース、むせび泣くギター、タイトなドラムに即ノックアウトされた方も多いでしょう。
そこへ優しく澄み渡ったボーカルが重なるのですから、たまりません。
そんな「1997」は2020年2月にリリースされた、リーガルリリーの1stアルバム「bedtime story」収録曲。
同年1月に先行配信もされました。
MVには、2019年12月10日、東京LIQUIDROOMで開催されたライブ映像が収められています。
この日はワンマンツアー<リーガルリリーpresents「羽化する」>最終日。
たかはしほのかさん(Vo/G)が22歳になった誕生日でした。
またMVの後半では、メンバー3人の幼少期の姿も見ることができます。
この辺りからもわかるとおり、タイトルはたかはしほのかさんの生まれ年。
同世代の方ほど共感しやすいというこの曲には、どのような意味が込められているのでしょうか。
歌詞に出てくる「実験」の意味とは?
じっくり見ていきましょう。
1番の歌詞はこちら!
「自分の世界」を試せる人
降り立った東京 1997年の12月
始まった東京 1997年の12月
私は私の世界の実験台
唯一許された人
出典: 1997/作詞:たかはしほのか 作曲:たかはしほのか
メンバー3人は東京出身。
作詞作曲もしている、たかはしほのかさんは12月10日が誕生日です。
タイトルで生まれ年を表しているだけでなく、歌詞では生まれ月まで表現。
つまり、たかはしほのかさんが自分自身について語っている曲になります。
自分が生まれた場所と時間を見つめる「もう1人の自分」がいる感じです。
つまり自分を客観視するとか、俯瞰するという話になるでしょう。
この曲が配信リリースされた当時、彼女は22歳になったばかり。
10代の高校生の時に結成されたバンド、リーガルリリーにとっても、社会人としての自覚が芽生える頃ですね。
子どもから大人へと変わる時期。
そんな時に彼女は、「もう1人の自分」だけが「自分の世界」を実験台にできる、と考えました。
たかはしほのかさんらしい、独特の世界観かもしれません。
実験とは、実際にやってみること。
調べる、試す、確認する、検証する、といった言葉が当てはまります。
一般的には、学校の理科の時間や医療の現場などで用いられる言葉ですが、その対象は自分自身というわけです。
承諾もなく、勝手に他人を対象にして何かを試す自由はありません。
そう考えると、確かに自分だけが「自分の世界」を試すことができます。
「あの坂」の意味
あの坂を越えて
私に会えたらいいなんて
思わせないでほしい。
最終列車飛び乗って
降り立った世界で
片道切符に気付いた
出典: 1997/作詞:たかはしほのか 作曲:たかはしほのか
この曲のキーワードとなる「あの坂」が出てきました。
東京には案外、急な道が多いという話も考えられますし、「人生の坂」という意味も含まれるかもしれません。
この歌物語の主人公は、自分で「自分の世界」を検証しています。
そして平坦な道よりも、角度の急な道のほうが進むのは大変です。
一口に東京といっても広いので、「自分らしく輝ける場所」に行く為には、電車に乗る必要があったのでしょう。
そこに行って「もう1人の自分」と遭遇したいと想像しながら、そう思わせる場所を斜に構えて見つめています。
行くか行かないか迷いながらの決断。
勇気を振り絞って進んだものの、辿り着いてから引き返せないことを思い知ったわけですね。
2番の歌詞はこちら!
生まれ変わった?
なくなった空白 1997年の12月
私は私の世界の実験台
唯一愛した人
出典: 1997/作詞:たかはしほのか 作曲:たかはしほのか
ここにきて突然、自分の生まれ年、生まれ月が消えました。
これは「急な道を進む」という検証を行った結果ではないでしょうか。
「生まれ育った場所を離れた」という意味が考えられます。
新しい場所に辿り着いたその日が「もう1人の自分」の誕生日ということ。
生まれ変わったと感じるくらい、大きな変化だったことが伝わってきます。
「自分の世界」を試すことができるのは、そこに愛があるからでしょう。
例え自分自身であっても、愛のない挑戦を課すのは無謀です。
まるで「かわいい子には旅をさせよ」ということわざの自分バージョン。
旅をさせるのも、旅をするのも自分自身ですが、そこには深い思いやりがあるわけですね。
手にしたチャンスを大切に
あの坂を越えて
私になれたらいいなんて
思わせないでほしい。
最終列車飛び乗って
降り立った世界で
片道切符を失くさないように
出典: 1997/作詞:たかはしほのか 作曲:たかはしほのか