「私」はすっかり暗くなった空を見上げているのでしょう。
そこに星はありません。
何故見えないのか、それも歌詞には書かれていません。
「私」が立っている場所が都市部で、街頭や建物の光で星が見えないからなのでしょうか。
それとも空が曇っていて見えないのかもしれません。
ともあれ星が見えない、ただただ真っ黒なだけの空はどこか寂しい感じがしますね。
この空虚さと、「あなた」に何もできない自分の無力さが重なっているようです。
加えて、その寂しさが「あなた」に対する想いを増幅させています。
不思議な話ですが、それが「好き」という感情なのでしょうね。
ただただ「その寂しさ、よく分かるよ」と共感してくれるだけではダメなのです。
寂しいからこそ会いたいと思わせてくれ、会いたいと思うから愛おしいと感じるのでしょう。
愛と悲しみ
好きな人に対する気持ちって、意外と複雑なようです。
若い時はただただ「カッコイイ」とか「可愛い」とか、「好き」という純粋で真っ直ぐな気持ちが主体。
しかし大人の恋愛になると複雑化します。
「愛する」ということがどういうことなのか、それが分かるからなのでしょうか。
一言で言い表せない気持ちに揺らいでいるのが「私」です。
愛も悲しみも痛みを伴う
誰かを愛すること
それは悲しみに似ている
痛いほど私の全てが こぼれてく
つめたい独りの夜
出典: 見えない星/作詞:長瀬弘樹 作曲:長瀬弘樹
「愛する」と「悲しみ」は、まったく違う印象があります。
しかし、「私」の中ではこの両者はよく似ているようです。
よく誰かを好きになると胸が痛くなるといいますが、それは悲しい時もなる現象。
誰かを想うことも悲しくなることも、同じように胸が痛み泣きたくなるのでしょう。
それを和らげてくれるのは「あなた」だけ。
しかしその人がいない今、やってくるのは余計に辛さを運んでくる「つめたい夜」だけなのです。
想像するだけで切なくなってきますね。
支えてくれるもの
あなたがくれた言葉想う
どれくらい会えない時間を
また埋められるだろう
出典: 見えない星/作詞:長瀬弘樹 作曲:長瀬弘樹
愛する人に会えない間、「私」を支えてくれるのは「あなた」の言葉だけなのでしょう。
優しい言葉や愛の言葉をくれていたようです。
それらに浸っている間は、胸につかえる寂しさを紛らわすことができる。
それでも、きっとそれはいつまでも続くわけはありません。
言葉を思い出して思い出に浸るよりも、実際に会う方が嬉しいですからね。
また近い内に会えることを祈っています。
好きな人の中に自分はいる?
からっぽの空 見えない星に
遠く祈り届くように
あなたの中に私がいること
確かめたくて そっと名前を呼んだ
出典: 見えない星/作詞:長瀬弘樹 作曲:長瀬弘樹
歌詞からして、「私」の中に「あなた」がいるのは確実です。
では「あなた」の中に「私」はいるのでしょうか。
「私」はそれが不安なのかもしれません。
自分の中に相手がいるというのは、その相手を愛しているということですから、
もちろん真相は「あなた」でなければ分からないでしょう。
だからといって、直接聞くとそれはそれで重いと思われてしまいそうです。
そのため、一人でぽつりと「あなた」を呼ぶことしかできない。
「私」ができるのは、「あなた」が自分を愛してくれていることを願うだけだと考えています。
恋人だからといって、何でも話せる仲というわけではありません。
星の見えない空が、「私」の心を映し出しているように思えます。
空虚な空に願うもの
どんなに恋が成就しても、それで心配事が減るわけではありません。
今度は「相手も私のことを好きでいてくれるだろうか」などと不安になってしまうもの。
だからといって、それを直接聞くのも憚られます。
胸の内に秘めることしかできません。
それでも、もし相手に何か伝えられるとしたらどうでしょう。
星がない夜空の下、「私」は愛する「あなた」に何を願っているのでしょうか。