行き交うシティーボーイズ
そこは楽園か
【楽園都市】は2019年8月21日にリリースされたオーイシマサヨシのシングル曲。
彼といえば突き抜けるような爽快感ある楽曲と歌唱が持ち味ですが、こちらは少し違った装い。
色調はラテン、空気感は熱帯夜の様相です。
そこはまるで夜景と共にシティーボーイズが行き交う亜熱帯都市といったところでしょうか。
彼らは目くるめくようなビルを背に、思い思いの夜を満喫するのでしょうか?
いやその都市は思いのほか闇が深く、歪んだ欲望が渦巻く魔都市の側面も併せ持つような。
コップクラフト主題歌
本作のもうひとつの側面は【コップクラフト DRAGNET MIRAGE RELOADED】の主題歌です。
こちらのアニメ、原作は賀東招二のライトノベルでして、ファンタジー要素込みの刑事ものといった内容。
物語の舞台は太平洋に浮かぶカリアエナ島サンテレサ市。
この島は異世界『レト・セマーニ』へと繋がる『ミラージュ・ゲート』と共に現れたとされています。
異世界では妖精や魔物がその住処とし、王国は魔法使いや騎士を召し抱えるファンタジーの世界。
そしてサンテレサ市は地球と異世界の移民が混在する交易都市となっていました。
200万の住人で賑わう反面、時折怪奇な事件も発生します。
巡査部長のケイ・マトバや騎士見習いのティラナ・エクセディリカもまたその渦中に巻き込まれていくのです。
タイトルの【楽園都市】とはこのサンテレサ市を指しているわけですね。
ではそろそろ我々も楽園都市へと赴いてみましょう。
偽りの楽園
うわべは楽園、その実…
100万ドルを望む シティライツ
遠巻きじゃここは楽園
近づいてよく見れば 骨組みだらけのハイウェイ
出典: 楽園都市/作詞・作曲:大石昌良
舞台は100万ドルの夜景。
宝石とも見紛うシティライツが無数に煌めき、地上の星々さながらの様相。
遠目で見ればまさにそこは楽園と思しき空間が広がっています。
しかしよくよく目を凝らせば無骨な骨組みの高速道路などが目についたりもする。
更にいえば、景観はその象徴という見方もできます。
つまり一見華やかなシティライフの陰をクローズアップすれば人間ドラマや犯罪が人知れず発生していると。
それぞれが都市の断片
交差点で叫ぶ シティボーイズ
他人事のようなサイレン
善人も悪人も 巨大な都市が飲み込む
出典: 楽園都市/作詞・作曲:大石昌良
さてその人間ドラマの主役であるシティボーイズの叫びも、犯罪を知らせるサイレンも、当事者以外は知らん顔。
そう、ここは猫が撥ねられてニュースになる静かな町ではないのです。
そこでは種々の事件が頻発し、それぞれに反応することなどできはしない。
またそれぞれが自身の問題を抱えていて、人に構っている余裕すらない場合も多い。
都市では光と闇が交錯しながら、それでも人々の営みが連綿と続いてゆくのでしょう。
終焉の時まで
どこまでいこう 兄弟
世界が終わるまで?
この手元に何が残るか
死に際まで足掻きましょう
出典: 楽園都市/作詞・作曲:大石昌良
コップクラフトは刑事ものの話でしたが「兄弟」は相棒を意味するものと見なせます。
刑事の仕事はやはり危険と隣り合わせで、いつ命が途絶えるとも知れません。
実際劇中ではひとつ間違えると命を落としかねない銃撃戦まで演じることになりました。
そんな死線をも乗り越え、事件の真相究明の手懸かりはせめてこの手で掴みたい。
お前もそうだろ兄弟、そんな呼びかけにも思えます。
相棒との絆を感じさせてくれるパートです。
ちなみにコップクラフトのストーリーではマトバの最初の相棒リックが殉職。
続いて現れタッグを組むことになったティラナとも幾多の危機に遭遇することになります。
世界が終わるか、俺たちがやられるか、それまで彼らの戦いは終わることはないのでしょう。