「僕」は歌を歌うことで「君」を応援します。
あくまでもアクションするのは「君」。
非力ながらも主人公はひたすら歌を歌います。
「僕」とは米津玄師その人なのではないでしょうか?
そう考えれば、この歌が届けられているのはリスナーである私たち。
歌詞が私たちの中に閉じ込められた本当の自分に対して問いかけているように思います。
「この曲を聞いたら自分の素直な気持ちにもう一度向き合ってほしい。」
米津玄師からのそんなメッセージなのかもしれません。
2番Aメロ
いつだってその手に丁度いい 憎める敵を探している
そうやって独りをつるし上げ 皆で笑い合うんでしょう
出典: ホープランド/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
人間はストレス解消に「他人を批判」する動物です。
「人の不幸は蜜の味」という言葉がありますが、まさに正鵠を射ていますね。
「他人を批判すること」は悪いことと自覚していても、その人の「弱さ」でそれをしてしまう。
人間は矛盾した感情を持つ生き物だと思います。
それを限られた言葉で表現する米津玄師。
辛辣な言葉が胸に刺さります。
それと同時に「憎める敵」というのは具体的な誰かではなく、社会全体を表しているとも捉えられます。
自分が行動できないのはこの社会が悪いと決めつけることによって、行動しない自分を正当化することができます。
多くの人はこうして行動するということから逃れているのかもしれません。
行動すれば、自分が批判の的になってします。
行動しない人間の方が愚かであり、強い意志を持って一歩前へ出たものが本当の自分を手に入れられるのです。
2番Aメロ(2回目)
自分のことを愛せぬまま 何も選べないまま
逃げ出すことさえできない 君をいつも見ていた
出典: ホープランド/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
自分に自信がなく、落ち込んでいた「君」。
それまでは傍観者だった主人公。
「逃げるが勝ち」という言葉がありますが、それすらできない「君」。
我慢できずに主人公は「君」に救いの手を差し伸べます。
2番Bメロ
善し悪しはみんな次第 悪い子は自由にしちゃいけない
そうやって作られたものに いくつも声を奪われて
出典: ホープランド/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
「悪い子」というのは誰を指すのでしょうか?
そして「悪い」というのはどういうことを指すのでしょうか?
それは言うまでもなく「社会規範を乱すこと」であり、「乱す人」でもあります。
ただ、過度にそれを人に求めてはいけないですね。
偽悪的にそれをしているひとならともかく、悪意なくそれをやってしまう人もいます。
そのうち自分自身を表現する術すら失われてしまった「君」。
もはやここまでくると「君」がかわいそうになってきますね。
いい部分も悪い部分も尖っている部分はみな削り取られてしまう。
そんな社会環境によって本当の自分を見失ってしまいます。
そして仮面をかぶった偽りの自分として知らずしらずの内に生活をしているのかもしれません。
しかし本当の自分はそんな中でも私たちにずっと語りかけています。
それを聞こうとしなくなってしまったのは、紛れもなく自分なのです。
この部分は「君」を「本当の自分」に置き換えるとスッと歌詞が入ってきます。
2番サビ
ソングフォーユー 憶えている?
僕らは初めましてじゃない
同じものを持って
遠く繋がってる
出典: ホープランド/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
実際は会ったこともないのでしょう。
主人公と「君」は。
「精神的につながっている状態」を米津玄師は「初めましてじゃない」という風に表現しています。
同じ「魂」を共有している主人公と「君」。
どれほど遠く隔たっているとしても、「精神的な友人」だとしたらつながりは保たれるはずですね。
「君」は自分を出し切ることに自信を無くしています。
そしてこれは自分だけが抱えている感情なのだと自分自身をさらに押し殺しています。
しかし主人公は君と同じ気持ちを共有できる仲間がここにいる…と強いメッセージを送っています。
感情の共有は人を大きく動かすのです。
直接会わなくても、歌や本、言い伝えなどで同じ時代に生きていなくても感情を共有することができます。
曲の壮大さと歌詞から読み取れるメッセージが見事にリンクしている部分です。
Cメロ
海が見えるあのテラスから声が聞こえる
気怠げな日陰の中で猫が鳴いている
青空を白く切り抜いた鳥が飛んでいる
この街は君の歌を歌う 君が何処にいようとも
いつまでも
出典: ホープランド/作詞:米津玄師 作曲:米津玄師
Cメロでは「主人公がいる世界」が描写されています。
他人を批判し合うこともせず、穏やかに過ごしている人間がいる世界。
その世界から主人公は「君」に歌を歌い続けます。
「君」が「こちら側の世界」へ辿り着くまで。
一歩を踏み出すのは「君」。
「君」を、倒れないようにその背中を優しく支えるのが主人公の役目です。
次のサビと最後のサビはそれぞれ1番、2番のサビと同じ歌詞なので、掲載は省きます。
おわりに
いかがでしょうか?
今回は米津玄師の『ホープランド』を解説しました。
暗い気分の時には、逆に明るい曲しか作れないという彼。
もしかしたら『ホープランド』も逆説的なメッセージなのかもしれません。
しかしそこには寛容な気持ちで佇む主人公がいます。
「君」=「リスナー」はそれを汲み取り、成長し続けていかなければならないですね。
「OTOKAKE」では米津玄師の記事を豊富に掲載しています。
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