『のめりこめ、震えろ。』

PERIMETRONと山田健人の共同制作したMV

のめりこめ、震えろ。/Tempalay

今回ピックアップするのはミレニアル世代を代表するバンドTempalay(テンパレイ)です。

NASAの惑星探査機に搭載されたレコードにインスパイアされた作品集『21世紀より愛をこめて』

2019年6月5日に発表されたTempalayの3枚目のアルバムです。

そのリード曲として先行配信された『のめりこめ、震えろ。』の素晴らしさを何と例えればよいのでしょう。

ソロアーティストとしても知名度の高いAAAMYYYを正式メンバーとして迎え入れたこと。

そのことでより自由度の高い表現力を手にしたTempalayの凄みが滲み出たMVをご覧ください。

King Gnuの常田大希とプロデューサーの佐々木集が率いるPERIMETRON

そしてTempalayのMVを初期から監督するyahyelの山田健人が共同制作しているのです。

人類の死に絶えた世界を表現したと思しきMVの内容は自由に解釈していただくとして...。

今回は『のめりこめ、震えろ。』の歌詞に焦点を当てて彼らの魅力に迫ってみようと思います。

岡本太郎から受け継がれた情熱

「美しく怒れ」=「のめりこみ」「震える」こと

Tempalay【のめりこめ、震えろ。】歌詞解説!「のめりこむ」のは一体何?独特の世界観を感じようの画像

『のめりこめ、震えろ。』はAAAMYYYの故郷でもある長野の山奥で制作されたそうです。

嘘か誠か、酸素ボンベを吸引しつつ、文字通り震えながらのめりこんで挑んだ楽曲制作。

その過酷な環境下で音楽業界への挑戦状を叩きつけようとした時に思い描いたのが岡本太郎なのです。

岡本太郎の残した数多くの名言の中でもトップ10に入るであろう「美しく怒れ」

『のめりこめ、震えろ。』はそんな岡本太郎の憤る姿勢を思い浮かべながら制作されたのです。

いわば岡本太郎へ宛てたラブレター

それこそが『のめりこめ、震えろ。』に託されたメッセージの1つなのです。

Tempalay小原氏の作詞スタイル

Tempalay【のめりこめ、震えろ。】歌詞解説!「のめりこむ」のは一体何?独特の世界観を感じようの画像

Tempalayの作詞作曲を手掛けるボーカル・ギター小原綾斗氏。

作詞家はざっくりというと「物語」を語るタイプと「状況」を語るタイプに大別されます。

彼の作詞のスタイルはどちらかといと自身の置かれた「状況」を歌うタイプです。

『のめりこめ、震えろ。』も彼らの思い描く世界の現状をありのまま描写していると思われます。

整理しますと『のめりこめ、震えろ。』を紐解くキーワードは以下の通りです。

  • NASAの惑星探査機ボイジャーが録音したレコードからの影響
  • 岡本太郎へのラブレター
  • Tempalay自身の内面の描写

これらを念頭に置いて楽曲が描く世界観を紐解いていこうと思います。

どうかしちゃった者同士が描く狂気の太陽

命のタイムがチックチック

Tempalay【のめりこめ、震えろ。】歌詞解説!「のめりこむ」のは一体何?独特の世界観を感じようの画像

のめりこむbeats いつ以来だっけこんな感覚
浪漫飛行 チックチックどうしたって命のタイム
震えろ!一瞬を燃やした狂気の太陽
それでも一途に愛しちゃってどうかしちゃったもん同士I love you

出典: のめりこめ、震えろ。/作詞:小原綾斗 作曲:小原綾斗

Tempalayが『のめりこめ、震えろ。』を歌いかけるのは自身の創作活動そのものに対してです。

かつて岡本太郎が短い生涯を革新的な芸術に捧げたように...。

歌詞には明らかに「太陽の塔」と思しき表現が登場

さらに時計の針の刻む音が聴こえるのは人生の儚さへのメタファーです。

自身の思い描く創作物の世界観、その規模が日々膨れあがることへの焦燥を感じます。

藤本氏の刻むリズムとAAAMYYYが鳴らす不協和音。

そこに小原氏の変態的ギターが1つのビートとして集合したのがTempalayの音楽です。

命がけの創作活動をなぜ続けるの?という世間からの問いかけ。

その答えは「音楽と相思相愛」だからなのです。

「毒」から身を成す快感に震える

毒なら身になる、毒から身を成す

出典: のめりこめ、震えろ。/作詞:小原綾斗 作曲:小原綾斗

直情的でメロディアスなサビで始まる『のめりこめ、震えろ。』。

そのサビ後に極小さな音量でリフレインされるのがこちらのフレーズです。

「毒」という明らかに害のある物質。

それが体細胞を形作り精神世界にも影響を与えるという不思議なフレーズです。

ここで歌われる「毒」とは物質的なものではなく概念としての「異物」だと考えることでピースが重なります。

「芸術は爆発だ!」

岡本太郎のあまりにも有名な一節です。

世界に広がる目には映らない「異物」を拾い集め楽曲制作するというTempalayのスタイル。

その微細な作業は相当なエネルギーを消費することでしょう。

だからこそ美しい作品として実を結んだ瞬間の震えるような快感を味わえるのです

それが表現されているのがこの一節なのでしょう。