ここで本作のタイトルである「ヨシ子さん」が登場します。

既に述べた、林家三平さんの「好きです(ヨシコさん)」とリンクする部分です。

登場する「ディラン」とは、アメリカを代表するシンガー「ボブ・ディラン」のこと。

彼の作品「Don't Think Twice, It's All Right」は、「くよくよするなよ」という邦題で知られています。

惚れてしまった女性とそれに落ち込む自分の感情を、大好きな歌を引用して慰める主人公。

ディランを敬愛する桑田さんらしい歌詞です。

後半の「Ah…」の部分は、ビートルズがカバーしたことでも知られるR&Bの名曲「Twist And Shout」を連想させます。

さまざまな音楽ジャンル

【桑田佳祐/ヨシ子さん】意味深な歌詞を徹底解説!歌詞中にも出てくる「ヨシ子さん」って一体誰のこと…?の画像

真夏の太陽 スゲェ High!!
情熱の恋に燃えて 礼!!
青春はお洒落でスゲェ High!!
ニッポンの男達よ
Are you happy?

出典: ヨシ子さん/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐

こちらが本作のサビにあたる部分です。

「真夏」「情熱」など、歌われている言葉にはどこか昭和的な雰囲気があります。

コーラスを歌うのはインド音楽で聴くことができるような女性の声。

すでに登場した「レゲエ」「アラブ」などに続き、ここでさらに新しい音楽の要素が加わります。

憧れの「ボウイさん」という存在

イイ歳こいて
捨てられたんだよ
ヨシ子さん ノー・リターン
「ブラックスター」で
ボウイさんが
別れを告げた
Everybody say,
Ah…(Ah…Ah…Ah)

出典: ヨシ子さん/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐

どうやら主人公は「ヨシ子さん」にフラれてしまったようです。

嘆いていても彼女はもう帰ってこない。

ここで登場する「ボウイさん」とは、イギリスのミュージシャン「デヴィッド・ボウイ」のことです。

「Blackstar」というアルバムをリリースした直後、本作リリースと同年の2016年1月に亡くなっています。

デヴィッド・ボウイは桑田さんの9歳ほど年上。

リアルタイムな「デヴィッド・ボウイ世代」の桑田さんにとって、この出来事は忘れられないものになったようです。

そんな「ボウイさん」への想いも本作には盛り込まれ、「ヨシ子さん」への想いと共に歌詞になっています。

自作ヒット曲の引用

【桑田佳祐/ヨシ子さん】意味深な歌詞を徹底解説!歌詞中にも出てくる「ヨシ子さん」って一体誰のこと…?の画像

真夏の太陽 スゲェ High!!
最近はエロが足んねぇ Why?
笑ってもっとベイビー Smile!!
ニッポンの男達よ
ヤッちゃえ ほい

出典: ヨシ子さん/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐

2コーラス目のサビにあたる部分。

「笑って~」以降の歌詞は、サザン名曲「いとしのエリー」へのオマージュです。

このような歌詞の引用からは、桑田さんの持つ「ミュージシャンとしての風格」が感じられます。

「ヨシ子さん」の歌詞が訴えかけるもの

【桑田佳祐/ヨシ子さん】意味深な歌詞を徹底解説!歌詞中にも出てくる「ヨシ子さん」って一体誰のこと…?の画像

本作の歌詞には、深いストーリーはありません。

いわゆる「中高年男性の嘆き」をストレートに歌った作風は、ある種のメッセージソングであり、現代版のフォークソングのようです。

自分の身近に居る「ヨシ子さん」という存在と、その外側でぐるぐる回る現在進行形の文化。

「レコードの時代は良かった」なんて昔を懐かしんでみても、時代はどんどん最新化されていくのです。

そこにこの主人公の悲しさがあり、それでもその時代についていこうとする姿はけなげですらあります。

「ニッポンの男達」に向って「幸せかい?」と聞くサビのフレーズから感じられるのは、年長者としての提言のようなもの。

批評をしていながら「間違っているのは自分の方なのか?」という疑問も見え隠れする、彼の複雑な心境が歌詞に綴られています。

「ヨシ子さん」のサウンドとMV

前述したように、本作には世界各地のいろいろなサウンドが取り入れられています。

また年代的な観点からは少し懐かしさが感じられて、アナログシンセサイザーのリフやビートが印象的です。

無国籍なジャンルの音楽を古き良きシンセサイザーの世界によってまとめ上げたような作風となっています。

シュールな世界を楽しむ桑田さん

このサウンドから着想を得たように、本作のMVで演出されているのも「ごった煮」な雰囲気。

浴衣姿の桑田さんが、無国籍なセットをバックに歌います。

モンゴル人のような男女、頭にターバンを巻いた緑色の体を持つDJ、中近東的な雰囲気を持った集団など。

繰り広げられる世界はシュールでありながら、楽曲のサウンドに似合っています。

置かれているマッサージチェアや体重計、脱衣ボックスなどから推測すると、どうやら舞台は銭湯のようです。

「サタデー・ナイト・フィーバー」の、あのポーズをやる桑田さんも楽しめます。