B'zの14thシングル「MOTEL」
「MOTEL」は、1994年発売のB'zの14thシングルです。
5thシングル「太陽のKomachi Angel」から始まったシングル初登場連続1位の記録を現在も更新中、もちろんこの作品もチャート1位を記録。
初動70万枚を記録し、ミリオンも達成。
月間シングルチャートでも1位と、大ヒットとなりました。
ブルージーなバラード
ちょっとブルージーな雰囲気を感じさせる、渋めのバラードです。
松本孝弘は当時”この曲は売れ線ではない”とはっきりと言っていましたが、それでもミリオンを達成してしまうとは、当時のB'zの勢いがどれだけすごかったのか、思い知らされますね。
当時のヒット曲がつまらないと感じていたという松本孝弘は、この曲がヒットチャートの上位に来たことが面白いと感じていたということ。
確かに、当時こんな本格的なロックをやるメジャーバンドは皆無でしたし、ブルースをシングルに持ってくるというバンドはさらにいなかったように思います。
でもよく考えたら松本孝弘があきらかに影響を受けているだろうと思われるLed Zeppelinも、ブルース由来のロックを奏でるバンドなので、当然といえば当然かもしれませんね。
「MOTEL」の約半年前にリリースされた2枚組のオリジナルアルバム『The 7th Blues』でも、少しブルースのニュアンスを感じさせる曲が収録されていました。
この次のシングルとなる「ねがい」でもイントロのピアノでジャズ的なアプローチが聴けることなどから考えると、この時期のB'zはいろんな方向性を模索していたのかもしれないですね。
「MOTEL」の収録アルバムは?
オリジナルアルバム未収録
「MOTEL」は、大ヒットしたシングル曲にも関わらず、オリジナルアルバムには収録されていません。
まあこれは、B'zに関していえばあまり珍しいことではないですね。
B'z最大のヒットシングルである「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」でさえも、オリジナルアルバムには収録されてないのですから、無理もないでしょう。
複数のベストアルバムに収録!
「MOTEL」が収録されているのは、ベストアルバムになります。
1998年にリリースされたB'z2枚目のオフィシャルベストアルバムである、『B'z The Best "Treasure"』の12曲目に収録されています。
このベストアルバムは、ファンの人気投票によって収録曲が選ばれました。ちなみにこの時の投票結果の1位は「恋心 (KOI-GOKORO)」でした。
「MOTEL」は9位にランクインしています。
また、2008年にB'zのデビュー20周年を記念してリリースされた、同じくファン投票で収録曲が決定される形式のベストアルバム『B'z The Best "ULTRA Treasure"』にも登場。
この時の投票では22位をマーク、収録はDISC 1の13曲目となりました。
さらにデビュー25周年にあたる2013年にリリースされたオールシングル・ベストアルバム『B'z The Best XXV 1988-1998』のDISC 2の1曲目に収録されています。
ファン投票でのベストアルバムに2度も選出されるとは、いかにこの「MOTEL」がファンに高い人気を誇っているのかを窺い知ることができますね。
「MOTEL」の歌詞の世界
それではここからは、「MOTEL」の歌詞を見ていきましょう。
たどりついた小さなベッドの上で僕らは眠る
今日という日がまた消えてゆく
重ねてもはみだす心
安い石鹸のように磨り減らし
ひとりじゃないから
汚れながら生きてる
罪に寄り添い アイツも泣くよ
星降りそそぐこのモーテルだけが
僕らを撫でてくれる
出典: MOTEL/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘
”たどりついた小さなベッド”は、今までの人生を経て迎えた今日のことでしょう。
人それぞれ、いろんな経験をして生きてきたはずです。
その中には辛いことも悲しいこともあったでしょうし、幸せを感じたことや楽しかったことももちろんあったでしょう。
でも生きていくということは、それだけではありません。
時には、罪を犯すことだってあります。
たとえそれが法律によって裁かれるような罪ではなくても、人は誰でも罪を背負って生きているといってもいいでしょう。
まず、生きている時点で、人間は他の生き物の命を奪っています。
食料となる動物たちの命はもちろん、植物だってそうです。
状況によっては、大切な誰かの為や生きていく為に、本意でなくても罪を犯すことだってあるかもしれません。
ずっと一人で生きていくなら、自分の理想だけを貫いて生きていくことだってできるでしょう。
それで命を落とそうが、すべて自分のことだからです。
でも誰かと生きていくなら、そういうわけにはいきません。
一緒にいる為に誰かを傷つけたりしてしまうこともあるでしょう。
そうした罪に手を汚しながらも、居場所を探して生きていくのです。
ひとりじゃないから……
勢いないぬるいシャワーで体を洗い流して
ただの独りよがりの禊ぎ
きれいな宝石(もの)だけを愛した君は
それでも僕といるね
ひとりじゃないから
忘れながら生きてる
根雪のよな思い出が夢に出て
こらえきれずに塞がりかけた
傷をまた掻きむしる
出典: MOTEL/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘
禊をしてもなお、体には罪がまとわりつきます。
そんな自分でも、”君”はそばにいてくれるようです。
きれいなものだけを愛したという”君”。
その”君”がそばにいてくれるということは、”僕”はきれいな存在なのです。
罪悪感に苦しみ、忘れられない想いを積み重ねて、後悔を重ねて夢に見るような、そんな”僕”は、たとえ罪を犯しているのだとしても魂は汚れていないのです。
何度も何度も昔の罪を思い返しては、苦しむ”僕”のそばに、”君”は寄り添います。
ひとりじゃいられないなら
奪いながら生きてる
何も返せるものは無くても
冷たい風が窓を叩いて
僕は君抱き寄せる
明日は何処へゆこう...
出典: MOTEL/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘