恐らく峯田和伸は、この歌詞に書かれている「奴」と同じ立場になったことがあるのでしょう。
だからこそ「見ているはず」ではなく「見てる」と断言できるのです。
この表現は強い説得力を持ってリスナーの胸に届きます。
峯田和伸の歌詞が嘘くさく聴こえないのは、彼がリスナーと同じ目線の高さにいるからではないでしょうか。
ダメ人間だっていいんだ!と正統派の人間が歌ったところで誰にも届かないのです。
頑張れ、という抽象的なメッセージではなく具体例を出して納得性を高める。
こうした歌詞もまた、峯田和伸の魅力でありスキルの高さを窺わせます。
7位:人間
アコースティックギターと少しのブルースハープ、比較的淡々とした峯田和伸の歌声で構成されている『人間』。
本当にこの人には嘘がない。そう思わせてくれる一曲です。
曲調もパンク色が感じられず、静かに終わると思いきや中盤から一気にラウドに変化!
この流れ、痺れます。
自分のことだけで精一杯なのが人間
君がないてる夢を見たよ
君がないてる夢を見たよ
僕はなんにもしてあげられず
僕はなんにもしてあげられず
まわる まわる
ぐるぐるまわる
吐くまで踊る 悪魔と踊る
出典: 人間/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
困っている人がいたら助けてあげるのが世の中のセオリー。
では助けてあげられない人は価値がない人なのでしょうか?そんなことはありません。
助けてあげられなかったことを悔いて、具合が悪くなるまで自分を追い詰める人もいます。
助けたくないのではなく、助ける余力がない、余裕がない。本当は自分だって助けを求めたい。
この曲ではとんでもなく人間臭い人間を歌い上げています。
6位:もしも君が泣くならば
さらりとしたロックサウンドに重すぎる想いをこれでもかと乗せた『もしも君が泣くならば』。
この曲もまたGOING STEADYの頃から歌われていた曲です。
好きな人にこんなふうに歌われたら……嬉しさ半分、あとは、なんでしょうか。
君なら何でもいい
もしも君が泣くならば 僕も泣く
もしも君が死ぬならば 僕も死ぬ
もしも君が無くなれば 僕も無く
もしも君が叫ぶなら 僕も叫ぶ
出典: もしも君が泣くならば/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
「君」は感情を表に出して顔を歪めることを嫌っているのかもしれません。
しかし「君」には美しく、嘘なく生きて欲しいと思っているのでしょう。
「君」と共にいられれば自分も美しく生きられる。そんな思いを感じます。
ですから、彼女が感情をむき出しにしたときには隣に並び、彼女の存在がかき消されるほど泣き、叫ぶのです。
守ってあげる、という考え方ではなくとにかく好きすぎるのでしょう。
最終的には一体化してしまいたいぐらいなのです。
5位:BABY BABY
GOING STEADYの頃から人気が高い一曲『BABY BABY』。
エモーショナルパンクというよりは普遍的なラブソング、そんな印象を受けます。
メロディラインが非常に美しく、例えロック色を無くしても美しい曲に仕上がるのではないでしょうか。
峯田和伸の脳内を覗いてみたくなる歌詞
甘いシュークリーム
君はシュープリーム
月面のブランコは揺れる
夢の中で僕ら
手をつないで飛んでた
目が醒めて僕は泣いた
出典: BABY BABY/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
ファンタジックなパステルカラーで彩られた夜空の景色をイメージする歌詞ですね。
これを峯田和伸が書いているのだと思うと、本当に多才なアーティストだなと実感します。
月面から放り出された二人はきっと手を離さないでいたのでしょう。
しかし現実に戻ると、涙を拭くために自由に動かせる自分の手があるのです。