手を挙げて 叫んでいるのを
誰かがきっと見ているから
怖がらないで 貴方は貴方の
生命だけを輝かせて
出典: 鯨の唄/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
サビの歌詞です。
あふれだすストリングスの音が美しい。
どんな人も自身の居場所を知らせて助けを求めるときがある。
叫び声は聴く者の誰しもを一瞬、戦慄させます。
「助けて」という叫び声に振り向かずにいられる人は僅かですし、他者の叫びに気づけない人は不幸です。
共感するチカラは人間などに限られた崇高な能力。
だから恐れることなく声を上げて欲しい。
誰かが気づいて手助けしてくれるかもしれない。
また、誰かが苦境を強いられている貴方の叫びに共感してくれるはずです。
だから自分の人生を生きることに専念していい。
大森元貴の書く歌詞は、根本が人として優しいです。
いま若い人たちから絶大な支持があるのもうなずけます。
疎外された生命が息を吹き返す
音韻を意識した作詞
奪われちまったバイタリティーが
気づかぬうちに 形になった
汚れを纏った言霊が
時間をかけて澄んでいくのを見た
出典: 鯨の唄/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
2番のAメロの歌詞です。
1番の歌詞と音韻を意識するように歌われます。
1番ではアイデンティティーだったところが、2番ではバイタリティーというように。
生命力は日々の暮らしの中で枯渇していきます。
時間ごとに労働を切り売りしている私たちは自分の人生からどんどん疎外されてしまうのです。
労働の搾取は生命力を奪われることでもあります。
そんな日々でしたがなにかのきっかけでうまく転がりだしたようです。
決められた言葉、決められた挨拶で息をしなくなった言霊も、その生命を吹き返します。
1番のAメロと呼応するような展開の歌詞です。
抗ってでも大切にしたいもの
譲れない想い
この“時”に抱く感情を
言葉にするには勿体無いな
失わぬように 傷付かぬように
盾と剣を握りしめた
僕の世界と
出典: 鯨の唄/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
感情を言葉に置き換える作業では追いつけない感激した想い。
驚くような歓喜。
そうした言葉にできない想いを守っていきたい。
心を武装させてでも守りきりたい譲れない想いがある。
すべての闘いが悪いわけではないです。
自分自身が脅威に曝されているのなら武器を握りしめたっていい。
世界と一線を交えてでも闘い、抗うように自分の人生とその価値観というものを大事にしたいと歌います。
ミセスからのメッセージ・ソング
魂の蜂起を呼びかける
手を挙げて 銃声が響いた
誰かがきっと泣いているから。
怖がらないで
掲げた誓いを果たす為に戦ってくれ
出典: 鯨の唄/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
2回目のサビです。
雄大、壮大なスケールで鳴り響くストリングス。
大胆なドラミング。
一言で表現すると「かっこいい」展開にぞくぞくします。
歌詞はいよいよ逼迫(ひっぱく)したドラマとその場にうずくまる想いを爆発させるのです。
舞台はあたかも戦場のような様相になっています。
居場所を示すように手を高く挙げて欲しい。
傷んで泣いている人のために立ち上がって蜂起して。
不安がることなく自分の信念を貫いて欲しいと歌います。
メッセージをドラマに昇華
ここまで聴いていただいてお分かりだと思います。
この曲はプロテスト・ソングやメッセージ・ソングの系譜に連なるものです。
ただし、言いたいことを直接歌詞にするのではなく、すべてひとすじのドラマへと昇華しています。
視覚情報にも訴えかけるような、状況が見える歌詞になっているのです。
曲間に響くファズ・ギターによるソロが鮮烈で素晴らしい。
サビはまだまだ続いていきます。