現実のゲームの行方は混沌としています。
またゲームのルールを理解するのも大変です。
近年では真っ向勝負を許さないようにルールが為政者の一言で都合よく変わります。
それでも「ジョーカー」である限りはいついかなる時にでも最高の切り札として通用するのです。
国家権力を名指しでこき下ろすこともしばしば。
ここでは革命での連帯について歌っています。
彼らのバックバーンである本場のレゲエやヒップホップではこうした描写が当たり前です。
しかし日本という社会に移入されると途端に大人しい歌詞になってしまうもの。
その点、湘南乃風はこうした傾向には負けません。
自分たちの音楽が「レベル・ミュージック」であることにこだわりを魅せるのです。
社会に存在するあらゆる境界を超えてゆく「レベル・ミュージック」。
革命のサウンド・トラックとして機能します。
この歌詞でチャートのNo.1を獲得するのですから日本社会には様々な鬱憤が溜まっているのでしょう。
大人しくしていられないまでに状況が逼迫すると本当に革命の機運も高まるはずです。
近年は新卒の就職率や株価の上昇くらいしか明るい材料はありません。
政治は腐敗を極めていますが、為政者たちは誰も起訴すらされない社会になってしまいました。
消費するための購買力が年々低下して「格差社会」は限界値まで突き進みます。
「上級国民」への怒りはSNSで毎日シェアされる社会になってしまいました。
湘南乃風の掲げる革命が賛同される客観的な条件は整いつつあるのです。
昨日の王様が玉座から引きずり降ろされる不穏な雰囲気を彼らは「限界」と表現しています。
隷属状態に甘んじない
どんなに小さくても 可能性が1%あるならば
命を賭けてみろ
俺だけのJoker
白か黒かのDead or Alive
出典: Joker/作詞:湘南乃風 作曲:湘南乃風
革命の話題だけではすみません。
自己実現のために何かをしてみようとする意志は年々低下しています。
社会生活を円滑に過ごすためだけに価値観を練り上げてゆく時代が長く続いているのです。
夢というものがしぼんでしまいます。
革命という概念が古臭いと考えられるような倒錯した社会になっても疑問を抱く人は少ないです。
そうやってどんどん自分の活動範囲を縮小させてゆき、結果として息苦しい社会になってしまいました。
湘南乃風はそうした風潮に身体を張って抗います。
自分の夢というものにもう一度チャンスを与えてやれと歌っているのです。
人生を賭けてみる価値が夢というものにはあるはずでしょう。
成人したら、社会に出たら夢とは無縁の生活を強いられる。
それは魂が監獄に囚われているのと同じ状況です。
こうした理不尽な隷属状態に抗って生きるのが「レベル・ミュージック」の本旨でしょう。
愛はすべての動機
身近な愛を叶えるために
Ah 勝利をつかさどる女神
アナタを抱きしめるまで 決して終わりは無い
愛の元にSing for life
出典: Joker/作詞:湘南乃風 作曲:湘南乃風
トランプなどのゲームに社会を喩えるのが「Joker」という曲の骨になっています。
勝利の女神であるのは身近な女性のようです。
そばにある愛からより大きな愛へと観念を拡張させます。
革命を歌ったかと思えば身近な愛を歌うのですが、決して違う話題をしている訳ではないです。
愛による革命というものを「レベル・ミュージック」は目指してきました。
革命というのは大事(おおごと)のように感じるかもしれません。
しかしそんな大きな出来事も動機はすべて愛であること。
それこそが「レベル・ミュージック」の掲げる革命の姿なのです。
今の社会は愛を存分に楽しめる社会ではありません。
因習的な考えは今なお社会の中で影響力を誇っています。
極端な純潔主義を教義とするカルト集団が為政者の後援をしているグロテスクな現状があるのです。
湘南乃風はこうした現状を決して容認しません。
人生とギャンブルの相似性
Life is gamble 勝負する道化師
狂喜乱舞 掴み取るMic
舞い込むChanceに 一点張り
掴んで全てを帳消し
出典: Joker/作詞:湘南乃風 作曲:湘南乃風
人生をギャンブルと見立てる勝負師の姿が浮き彫りになります。
どこかヤクザな世界観でもあるでしょう。
しかし敗残者が一夜にして人生を逆転させる道はもはやギャンブルにしか残っていない社会です。
宝くじなんて悠長なものではありません。
もっと神経の限界でキリキリしながら挑む勝負です。
そのためにマイクを掴み取ったと湘南乃風は歌います。
アーティストの世界は才能だけが資本の勝負の世界です。
才能を認められて一夜にしてスターになれる可能性が1パーセントくらいはあります。
それならばその僅かな可能性を信じて勝負を賭けてみた。
その結果がオリコンランキング1位です。
過去の負け分は一夜にして帳消しになりました。
「格差社会」で一発逆転を狙うためにマイクを握ってみる。
志のある方は老若男女問わずぜひ挑戦して欲しい勝負の世界です。
「お道化もの」は王室に勝る
「ジョーカー」こそ革命の象徴
ウザがられたって くらったって なんだってんだ
"A"よりも輝けるJoker
どんな状態でも覆してやる
革命児 それがJoker
折れない力付けたら負け無し
たった一つのJoker
無敵 素敵 大胆不敵
時に命取り Joker
イチかバチか・・・Rah!
出典: Joker/作詞:湘南乃風 作曲:湘南乃風
勝負の世界では「ジョーカー」は「エース」よりも上位の存在です。
しかしトランプという王様・女王・王子とその他という階級社会を模した遊びは面白いです。
すべてのカードに勝つ存在を道化師のような「お道化もの」に求めているのですから。
「お道化もの」は社会の周縁部にいます。
社会の中枢の王室より、外から彼らを嘲笑できる「お道化もの」を最高の切り札にしました。
この遊びを考えた人々は封建時代の階級社会に我慢がならなかったのかもしれません。
劣勢を覆すには「ジョーカー」がうってつけとされます。
湘南乃風はこの「ジョーカー」の資質に革命児の素養を見込むのです。
今は資本主義の社会になりました。
かつての絶対王政とは違った階級社会に変わります。
ここで革命について考えてみない限り隷属した階級はいつまでも劣勢なままです。
湘南乃風の革命の概念は「レベル・ミュージック」の思想に由来します。
愛と音楽でなしうる革命です。
支配階級を打倒して隷属状態にある人々が権力を掌握すること。
何か緻密な革命理論として打ち立てられたものではないです。
しかし抗うことの意味を再確認させてくれるのですから貴重なものでしょう。
「お道化もの」の力で権力関係を転倒させること。
湘南乃風の革命のスローガンは愛とユーモアに満ちています。