It's a dirty story of a dirty man
And his clinging wife doesn't understand.
His son is working for the daily mail
It's a steady job, But he wants to be a paperback writer,
Paperback writer.
Paperback writer.
出典: PAPERBACK WRITER/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
男が書いた小説の内容がうかがえます。
所謂「入れ子構造」になっているので面白い箇所です。
「下品な男の下品な物語です
彼にしがみついている妻は理解しようともしません
彼の息子はデイリーメール紙に勤めています
手堅い仕事です しかし彼も大衆文学の作家になりたがっています
大衆文学の作家に
大衆文学の作家に」
小説の中の登場人物も「ペイパーバック・ライター」、大衆文学の作家になりたがっています。
これでは誰もが大衆文学の作家になりたがっているようです。
皮肉がいっぱいの歌詞
実際、作家になりたい夢を胸に秘めている人は多くいるはず。
現代日本ではカルチャーセンターなどに小説家志望の生徒さんがいっぱいいます。
文学部で創作を学んでいる人も多いでしょう。
しかし実際に作家になれる人は僅かです。
インターネット上で自作の小説を晒す人が増えましたが紙媒体できちんと評価される人は少ないです。
デイリーメール紙はイギリスの東スポのようなタブロイド紙。
ポールの本音はデイリーメール紙などちょっと馬鹿にしているフシがある気がします。
デマやフェイク・ニュースが多い媒体ですからビートルズも餌食にされていたでしょう。
大衆文学の作家になりたい男の登場人物も大衆文学の作家になりたがっている。
中々、皮肉がきいた歌詞です。
編集の方とはいい関係で
仰ることは何でも聞きます
It's a thousand pages, Give or take a few,
I'll be writing more in a week or two.
I can make it longer if you like the style,
I can change it 'round and I want to be a paperback writer,
Paperback writer.
出典: PAPERBACK WRITER/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
是が非でも小説を出版して欲しいので編集者のいうことは何でも聞き入れるというラインです。
「千ページもある大作です
1週間か2週間いただければ もっと書けるでしょう
お好きな文体があるのでしたら そこをもっと長く書けます
書き換えることもできます 私は大衆文学の作家になりたいのです
大衆文学の作家に」
何年も掛けて書いた労作ですから1000ページを超える勢いです。
最初から長い作品は嫌われるでしょう。
もっと書くこともできますと本人はいいますが、もっと短くすることの方が先決です。
男が自分の作品について客観的に評価できていない心情をポールは見事に表現します。
ただ、編集の方といい関係を築くことは売れる作家になる基本でしょう。
編集の方のいうことを聴いて作品をブラッシュ・アップしたら見違えるようになった。
そんなエピソードはたくさんあります。
自意識過剰な男の夢
滑稽な姿を素描
If you really like it you can have the rights,
It could make a million for you overnight.
If you must return it you can send it here,
But I need a break and I want to be a paperback writer,
Paperback writer,
Paperback writer
出典: PAPERBACK WRITER/作詞:Lennon=McCartney 作曲:Lennon=McCartney
ポールが描きたかったのは作家志望の人にありがちな自意識過剰な側面。
ちょっと鼻持ちならない男の姿だったのでしょう。
歌詞を和訳してみました。
「皆様がお気に召すようでしたならば 貴社に出版権があります
この本はわずか一晩であなた方に巨額の富をもたらすでしょう
返品の際には こちらに送り返してください
でも私はブレイクしたいのです
私は大衆文学の作家になりたいのです
大衆文学の作家に
大衆文学の作家に」
自身の作品に対する過剰なまでの自己評価。
自意識過剰で自作の小説に肩入れする姿は滑稽です。
しかし小説を書いたことがある方は分かると思うのですが、作品とは自身の分身や子どものようなもの。
自分がまず肯定してあげないと誰も評価してくれません。
若き日のポールの夢
この曲はポールの若き日の願望を歌にしました。
しかしポールが実際に小説を書いたことがあるかどうかは分からないことです。
出版されていないということは書いていないか出版に値しなかったかのいずれかでしょう。
ポールには音楽や歌詞で何かを表現する術がありますから、あえて文学で訴えることはないのかも。
ポールの小説でしたら不出来でも引く手あまたでしょう。
その点、この歌の主人公の男は無名の小説家志望。
自信作のようですが一晩で巨額の富をもたらすなどの夢物語に酔っています。
若き日のポールもこんな夢を持っていたのかもしれません。
しかしこの歌「ペイパーバック・ライター」にはどこか皮肉のニュアンスが含まれています。