世界のすべては周囲からの言葉
君はいい子って
言われるたび
嬉しくって
寂しかったのよ
ここプラットホーム
優等生の逆襲
ひときわ輝く星になる
出典: 笑って/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
若かりし頃に聞く両親や先生からの言葉は、時として自分を取り巻く世界の全てになってしまうことがあります。
「あなたはいい子だから」という褒め言葉には、それを発する人間の期待や願望が込められているもの。
「私って優れているんだ」と素直にその言葉を受け取り、喜んでいたのもつかの間。
彼女はその言葉が持つ本当の意味を理解し始めます。
投げかけられるそんな喜ばしい言葉は次第に自分を締め付け、理想像に近づかなければならないというプレッシャーを生みます。
ここにある「優等生の逆襲」という言葉にあるのはアンバランスな雰囲気。
本来、「逆襲」などという「人に楯突くような行動」を取らないのが優等生です。
こんな正反対の意味を持つ言葉を繋げた歌詞からは、言葉選びのセンスが感じられます。
ダメな自分も愛おしい
人はへたくそ
だからこそ愛しい
出典: 笑って/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
1コーラス目にあった部分に引き続き、短い言葉でまとめられたBメロの歌詞。
この部分のメッセージは、人間の本質を解くような哲学的なものとなっています。
自分に迷い、周囲の期待にも応えながら、それでもやはり自分らしく生きようとする彼女。
葛藤を抱えながら、不器用にも一生懸命生きようとする姿を言い表すのは「へたくそ」という言葉です。
決してスマートではないけれど、そんな自分を愛らしく感じてしまう彼女は、人間的に少しずつ成長しているのかもしれません。
とにかく現状を変えなければいけない
笑って笑って笑って
笑い疲れたら
涙が出そうだ
プライド捨てて この際
やけっぱちでもいい
産声をもういちど
出典: 笑って/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
2コーラス目のサビにあたる部分です。
今ある環境から抜け出せずにいたのは、ここで語られている「プライド」が彼女を邪魔しているから。
「周りの期待に応えられない自分」は、できそこないなのでしょうか。
「自分は優秀だから」という気高い気持ちが、現状を変えることを否定します。
それでも、そんなものにいつまでも押しつぶされていられないほど不満を募らせた彼女。
この先どうなってもいいからとにかく現場を変えなければいけない、という焦りのようなものも感じられる歌詞です。
楽曲はこのあと間奏を挟み、エンディングに向かっていきます。
「笑って」の歌詞が伝えるもの
本作で描かれているのは、思春期を迎え自分なりの人生を考え始めた主人公の想いです。
誰かの管理の中で、その誰かが思い描く「理想の姿」になろうと暮らしてきた日々。
その期間を経て、自分が本当にやりたかったことや、本来の生き方に気付くことができました
タイトルになっている「笑って」という言葉は、前述の通り「他人からの期待」を意味するもの。
それと合わせて、ここには「笑いながら暮らしていきたい」と言う彼女の本心も含まれていると感じます。
前者が「作られた笑顔」であるとすれば、後者を象徴するのは「心の底から笑えている自分」です。
繰り返される「笑って」というセリフは、「もっと心の底から笑っていいんだよ」と自分に問いかける言葉。
「涙」の描写は、そんな「本来の生き方に気付いた喜び」を表す嬉し涙としても捉えることができます。
「笑って」のMVをチェック!
本作のMVはストップモーションや無表情な彼女たちにより、少しシュールな世界観を持った作品に仕上げられています。
「2分27秒」あたりに登場するフラフープの場面などは少しコミカルです。
「0分20秒」以降のバスケットボール、そしてマラカスの描写は本作の歌詞には登場しないもの。
それでも、メンバーの真顔などとあわせて「歌詞の世界に通じるメッセージがあるのではないか?」と勘繰ってしまいます。
「優等生を演じなければいけない」という主人公の本心を表現する「能面のような顔」。
そして散りばめられた小道具たちには彼女の願望が表れているのでしょうか。
そのアーティスティックな作風はそれまでの彼女たちのMVにはなかったもので、新境地を切り開いています。
「笑って」の概要
本作は2017年にリリースされた彼女たちの二枚目のシングル。
作詞作曲を担当しているのは、バンド「赤い公園」の津野米咲さんです。
もともとハロプロの大ファンである彼女は、他にも何曲かの楽曲提供を行っています。