早朝に主人公を夢から起こしたのは懐かしい音。
その音は「あなた」と恋人同士だった頃によく聞いた音でした。
恋人が好きだった音楽。恋人の家の近くを走っていた電車の音。あるいは恋人が自分の名前を呼ぶ声。
主人公は恋人の夢を見ていたのかもしれませんね。
懐かしい音が聞こえたように感じたのも、そのせいだったのかも。
寝ても覚めても好きな人のことを考えてしまう。
それは別れた後も変わらないようです。
何気ない日常が幸せだった
6弦の響きを聴きながら眠っていた
冬の思い出
可もなく不可もなく過ごしていた
僕と君の日々
出典: Frozen/作詞:アマダシンスケ 作曲:アマダシンスケ
ここの歌詞から考察すると、やはり懐かしい音というのは恋人が好きだった音楽のことを言っているようですね。
恋人を腕に抱いて、恋人の好きな音楽を聴いていた日々。
そんな何気ない日常の1コマが、今も主人公を思い出に縛り付けています。
恋人と過ごした日々に何か大きな出来事があったわけではない。
それなのにいつまでも忘れられないのは、ありふれた毎日に幸せを感じていたからでしょう。
そのことに主人公が気付いたのは、恋人と別れた後だったのかもしれません。
特別悲しい思い出も、特別嬉しい思い出もない。
だけど失いたくない日常だった。
そんな切ない思いが「可もなく~」の歌詞で歌われています。
嘘でもいいから愛されたい
フローズン僕はまだ今も求めているよ
凍えたまま透明に凍った僕らの日々が
いつの日かまた巡り会えるのならば
嘘の愛でもいい 気付かぬ 僕に気付いて
優しく離れてね
出典: Frozen/作詞:アマダシンスケ 作曲:アマダシンスケ
愛する人にもう一度会って、愛の言葉を交わしたい。
それが「嘘でもいい」というのが、なんとも切ないですね。
今更やり直せる可能性がないことは、主人公自身よく分かっているのでしょう。
それでもまだ愛する気持ちを捨てられないから、優しい嘘を欲しがってしまう。
主人公はもう何度も、叶わないと分かりながら愛する人と再び恋人に戻れる日を思い描いているのかもしれません。
もしも本当にあなたと再会できたなら、きっと僕は何もかも忘れて同じ過ちを繰り返してしまうだろう。
だからどうか、あなただけは冷静でいて。
最後の「優しく~」の歌詞には主人公のそんな気持ちが込められているのではないでしょうか。
嘘の愛すら求める胸の内
愛する「あなた」はもう自分を愛してはくれないだろう。
確信に近くそう思っているから、主人公は嘘の愛すら求めてしまうのでしょう。
残酷な真実よりも、覚めることのない夢を見たい。
その願いを愚かだと切り捨てることは、きっと誰にもできないのでしょうね。
伝えたかった言葉
あれから1年が経って
頭の奥が壊れそうだよ
思えば思うほど僕は嘘つきで
小さな事すら胸の奥に響いてたのに
忘れたくない
出典: Frozen/作詞:アマダシンスケ 作曲:アマダシンスケ
別れた日からどれだけの月日が流れようと、恋人だった頃の記憶が薄れることはありません。
思い出す景色はいつでも美しく鮮明で、後悔の念をより強いものへと変えていきます。
もっと素直になれていたら...。
別れて初めて、主人公は自分の非に気が付きました。
しかし気付いたところで、今となっては謝ることすらできません。
あなたのくれた言葉、1つ1つが宝物だった。
それを伝えることも、もうできない。
だからせめて、愛する人との思い出だけは大切にしよう。
「忘れたくない」と願うのは、主人公が思い出の中でしか愛する人を感じられないからなのでしょうね、
唯一の救い
フローズン僕はまだ今も探しているよ
凍えたまま透明に凍った僕らの日々に
いつの日かまた巡り逢えるのならば
嘘の愛を許して
愛し合っていた日々を優しく起こしてね
出典: Frozen/作詞:アマダシンスケ 作曲:アマダシンスケ
主人公が「嘘でもいい」と言うのは、自分もまた嘘をついていたからなのでしょう。
けれどその嘘は、恋人のためについた嘘だったとも考えられます。
今となってはそんな弁明もできないけれど、どうか許して、時々でいいから愛し合っていたあの日々を思い出して。
主人公の胸を突き刺す思い出は、きっと一生消えることはないでしょう。
かつて恋人だった「あなた」の胸にも、自分と同じ思い出が少しでも残るといい。
それだけが今の主人公にとって唯一の救いとなり得ることなのかもしれません。