BUMP OF CHICKEN「firefly」とは

「firefly」はバンプの23rdシングル

【firefly/BUMP OF CHICKEN】ドラマ「息もできない夏」主題歌の歌詞の意味を考えるの画像

突然ですが、皆さんには夢や目標がありますか?

しかし、こんなことは言いたくないけれど……もしかしたらいつか、その夢を断ち切らなければならない日がくるかもしれません。

中には、すでに夢の喪失を体感した人もいるでしょう。

そのとき、夢や努力してきた取り組みは、どこへ行ってしまうのでしょうか?

「全ては無に帰してしまう」「やってきたことは無駄だった」

もしそう思う人がいるなら、ぜひ一度「firefly」を聴いてみてほしいと思います。

2012年9月にリリースされたBUMP OF CHICKEN(以下、バンプ)の23rdシングル「firefly」

同年に行われたツアー中に制作からレコーディングまで行われたというこの曲は、疾走感のあるアッパーチューンです。

ライブツアーの熱まで込められたのではないか?と思われるほどの熱量も含まれたこの曲。

その歌詞にはどのような意味があるのでしょうか?

「firefly」の歌詞の意味を考える

<夢>が生まれた、物語の始まり

蛍みたいな欲望が ハートから抜け出して
逃げるように飛び始めたものが夢になった

当然捕まえようとして 届きそうで届かなくて
追いかけていたら物語になった

いろんな場面を忘れていく

出典: firefly/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

「firefly」を起承転結の型で解説するとしたら、"起"に当たる冒頭部がこちら。

曲名の「firefly」「蛍」という意味です。

昆虫の仲間で体の一部が光ることで知られる蛍の光は多く集まると圧巻ですが、1匹1匹の光は小さくて儚いもの。

そんなささやかな<欲望>から、主人公の<夢>が生まれました。

蛍のように逃げて、手に入らない<夢>。

それを捕まえたくて追いかけるうちに、主人公の人生と言うべき<物語>が紡がれていきます。

<いろんな場面を忘れていく>という表現には、夢を追うのにガムシャラにやってきて、周りを振り返る余裕もなく今の立ち位置に来た主人公の心情なのかな、と思います。

笑って泣いたころもあって そうでもない今もあって
どっちでもいいけどどっちも追いかけてた

分かれ道もたくさんあって 真っ暗に囲まれて
かすかな黄色に必死でついてった

いつのまにか見えなくなっても 行方探してる
命の仕掛けは それでもう全部

出典: firefly/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

起承転結の"承"がこの部分。

言ってしまえば、主人公の<物語>は、こんな風に進んできました、と説明する部分です。

『笑って泣いて、その感情すら忘れることもあって、それでも<夢>を追いかけていた。

わかりやすい1本道ではなく迷ったこともあり、暗闇の中で進むべき道さえわからなくなってしまったときもあった。

それでも必死に<夢>を追いかけていた』

これらが、主人公の<命>を突き動かしていた<仕掛け>とも言えるほどに、懸命に追いかけてきたのですね。

そんな歌詞からは、主人公がいかに真剣に<夢>を追いかけてきたのかが伝わってきます。

色々と難しくて 続ける事以外で
生きている事 確かめられない

報われないままでも 感じなくなっても
決して消えない 光を知ってる

出典: firefly/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

<夢>を追うことは誰にとっても難しいことです。

主人公は<夢>を追い続けるでしか<生きている事>を確認できないと言います。

成果が出なくても、結果を感じられなくても……。

しかし、それでも<夢>に向かって"続ける"ことは、かけがえがなく、尊いことだと思います。

主人公だって、きっとそう思っているはず。

自分の<夢>は<決して消えない 光>であると認識しているのだから。

<夢>を諦めざるを得ない事態に

諦めなければきっとって どこかで聞いた通りに
続けていたら やめなきゃいけない時がきた

頑張ってどうにかしようとして 頑張りの関係ない事態で
ふと呼吸鼓動の意味を考えた

解らない事ばかりの中 唯一解っていた
大切なものが あぁ

出典: firefly/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

ストーリーが転換するような事件が起こる"転"の部分がこちら。

『諦めなければ、夢は叶う』

私たちは、こんなキャッチフレーズをよく目にすることがあります。

主人公もそんな風に頑張ってきたのですが、なんと、努力を<やめなきゃいけない時>がきたと言うのです。

しかも、自分の努力や力量がまったく関係ないことが原因らしい。

たとえば、予期せぬ事故や病気などで<夢>を奪われること。それは、誰にだって起こりうることです。

<頑張ってどうにかしようとして 頑張りの関係ない事態>というのは、辛く苦しく、自分の存在意義さえ疑ってしまう事態

意味不明な世の中で唯一頼りにしていた<夢>さえ奪われてしまって……。

一人だけの痛みに耐えて 壊れてもちゃんと立って
諦めた事 黄金の覚悟
まだ胸は苦しくて 体だけで精一杯
それほど綺麗な 光に会えた

出典: firefly/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央

その心の痛みに、主人公は壊れたようになってしまったのでしょう。

それでも、運命にひれ伏すことなく立っていた主人公は、<夢>を諦めました

その諦めこそが<黄金の覚悟>と表現されています。

理想通りに叶わなかった<夢>。そのために努力してきたこと。

それらは叶わなくなった今でも、主人公にとって<綺麗>で尊いのです。