夢のような、楽しい時間が終わってしまうのはとても切なくてさみしいもの。この感情は、男女共通ではないでしょうか。

「覚めて」のところを繊細なファルセットで聴かせる長屋晴子の歌声がまたきゅんときます。

バスタブの泡は、何かのメタファー? 続きを見ていきましょう。

黒いシャツが揺れてる
靡く風も含めてよく似合ってるね
知らない街に2人ぼっちだ

アルコールがかけた魔法
解ける前にその手に触れてしまいたい
なのにまだとぼけていたい

言葉にしなくちゃ届かないけど
言葉にしたら失うものもあるよ
「あのね…」
また言えなかった

出典: 大人ごっこ/作詞:長屋晴子 作曲:長屋晴子

女性目線の歌詞ですね。

黒いシャツ、「靡く風も含めて」似合うなんて、ちょっと詩的。

試着室で着て「似合う!」っていうんじゃなくて、着こなして歩いている様子が本当に似合う、なんだかおしゃれな男性を思わせます。

二人は遠距離恋愛中で、彼のいる街に会いに来たんでしょうか。それとも、付き合ってはいないけれど、旅行中?

周りは当然、知らない人だらけ。そんな様子を「2人ぼっち」と言ったのでしょうか。

それとも、黒シャツの似合う彼にすっかり見惚れていて、周りの人なんて視界に入らないのかも。

ディナーの後でしょうか、ちょっぴりお酒も飲んで。

アルコールのせいにして手をつないでしまいたい、でもそうしたくない…

お酒の力を借りて、いっそ言ってしまおうか、言葉にしないと届かない。でも、もし返事がNOだったら?

そんな想像が、「あのね…」に続く言葉を阻んでしまうのでしょうね。

明日になればこの夢は醒めてしまうの
バスタブの泡は多過ぎて溢れる
臆病が身に付いて
明日の夢さえ作れない
まだまだまだまだこのままがいい

出典: 大人ごっこ/作詞:長屋晴子 作曲:長屋晴子

明日になれば、二人はまた別々の生活をするんでしょうか。

泡風呂なんておしゃれ。でも、多すぎる泡が溢れてしまうように、泡のように脆くてはかなげな気持ちが、もう心から溢れてしまいそうなのかも。

NOと言われるのが怖い、そんな臆病のせいで踏み出せず、今の距離感に甘えてしまう。

踏み出せない恋心の繊細な迷いを、情緒たっぷりに切り取っています。

臆病が身についたせい

黒いシャツのその向こう
今鏡に映して確かめたい
舞い上がって私 馬鹿みたい

近付く度に離れちゃいそうで
壊れないように後ろを気にしていた
「あのね…」
ああ 言いたかった

出典: 大人ごっこ/作詞:長屋晴子 作曲:長屋晴子

黒いシャツの内側にある彼の本心が覗けたら。確実にOKがもらえるなら、どれだけ楽でしょう。

二人はいい雰囲気なんでしょうね。でも、二人で楽しく過ごすことだけが望みじゃないって、自分でもわかっている。もう一歩踏み出したいんでしょうね。

舞い上がってしまう自分と、それを冷静に馬鹿みたいと突き放す自分がいる。

距離感を気にしていたら、結局また言い出せない。本当は言いたいのに。

葛藤の狭間で、ためらいたいわけじゃないのにためらってしまうもどかしさが絶妙です。

ガラス窓に映ったあなたが曇って消えてゆく
誤魔化しがきかないくらい胸がつぶれる
気付かれないようにと
可愛げのない顔してる
まだまだまだまだこのままがいい

「自分にないものをあなたはたくさん持ってる」
あなたもそう言っていたね
ふたりはまるで別の生き物のようで
結末はもう分かっていた

明日になればこの夢は醒めてしまうの
バスタブの泡が焼き付いて離れない
臆病が身に付いて
明日の夢さえ作れない
まだまだまだまだこのままがいい

出典: 大人ごっこ/作詞:長屋晴子 作曲:長屋晴子

もうお別れの時間。電車でしょうか、新幹線でしょうか。見送ってくれる彼の姿をガラス窓越しに見ながら、言い出せなかった後悔が胸をぎゅっと締め付けているのかも。

彼の姿が曇るのは、窓の曇りのせいなのか、こぼれないまでも目に浮かんだ涙のせいなのか、どちらでしょうね。

「まるっきり違う二人だから、きっとうまくいかない」とわかっていても、楽しく一緒に過ごせていると、やっていけるんじゃないか、って思ってしまうのも無理のない話。

でも、心のどこかで「きっとうまくいかないんだよ」と思っているから、なおさら踏み出せない、言い出せない。全て失うのが何よりも怖いんでしょう。

わかっているはずなのに、お別れの時間になると胸が締め付けられて、一緒にいた時の光景が頭に浮かんで離れなかったりして。

様々な感情が渦巻く切ない瞬間を切り取るのが、本当に上手ですね。

大人ごっこ、というタイトル

〇〇ごっこ、って、何かになりきる遊びを指す言葉ですよね。

ということは、大人ごっことは「大人になりきったつもり」の状況、裏を返すと、本当はまだ子ども、とも取れます。

一歩踏み出すこと、失ってしまうことを恐れて今の距離感に甘えてしまう恋心を、本当はまだ子どもな「大人ごっこ」と表現したのでしょうか。

緑黄色社会の世界観

切ない女心を描き出した曲として「またね」を発表しています。

曲調はかなりポップなのに、実はとても切ない恋愛ソング

こういった歌詞とは特に、長屋晴子の透明な声・繊細なファルセットの相性が抜群ですね。

セカンドミニアルバム収録の「始まりの歌」は爽やかなアップチューン。

「君は越えていったんだ/僕のキャパシティを」というキラーフレーズから始まるこの歌は、壁を突き抜けたい人の背中を押す応援歌です。

2018年はワンマンツアーも決定済み!