旅立ちと別れの切なさを歌う
ドラマに書き下ろされたエンディング曲
ガールズバンド「赤い公園」のギター・コーラス担当・津野米咲の才能を惜しむ声は絶えません。
「赤い公園」は津野の急逝をうけて、ラストライブをもって解散することを発表しています。
「pray」の歌詞は彼女たちの今後の行き先を感じさせるものといえるかもしれません。
自分たちを投影したかのようなガールズバンド「ちゃあはん」
「pray」はフジテレビFODオリジナルドラマ「時をかけるバンド」のエンディングとして書き下ろされました。
「時をかけるバンド」では女子3人組のバンド「ちゃあはん」の青春がコメディタッチで描かれています。
彼女たちが未来から来た謎の男と出会い、共同生活を営みながらメジャーデビューを目指す物語です。
ライバルとの確執や恋愛・将来への不安そして切ない別れなど、さまざまな試練が彼女たちに降りかかります。
しかし、それぞれが力を合わせて乗り越えていくことが魅力です。
彼女たちの悩み葛藤する姿が「赤い公園」のメンバーと重なって見える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
作詞作曲を担当した津野米咲は、ドラマのコンセプトや内容を充分に吟味して進めたのかもしれません。
デビューを目指して奮闘するガールズバンド「ちゃあはん」の姿がとても眩しいと感じます。
青春まっただ中の「青い空」を謳歌する彼女たちに、自分たちの姿を重ね合わせていたのかもしれません。
花咲く前に旅立つ「君」へ
「pray」には誰かの旅立ちを示唆する言葉が多く使用されています。
新しい場所に旅立とうとしているのは「君」です。
それを見送り、餞の言葉として歌を贈る理由はどのようなものでしょう。
彼らは人生の岐路に直面し、別々の道でそれぞれの新しい生活を始めようとしているのかもしれません。
旅立つ君のことは大切に思っていても自分は一緒に行かない選択をしています。
目指すベクトルの向きが同じではない限り、ずっと一緒にはいられないのです。
痛みを伴う旅立ち
手放すことで感じる「痛み」と「傷」
逆毛の街に風が吹く
ひと撫でしたなら
もうじき花が咲くだろう
それでも行くのかい
出典: pray /作詞: 津野米咲 作曲:津野米咲
逆風を感じても手放したいものは心の中にたまった不平不満だけではありません。
胸が躍るような新しい一歩を踏み出すためには、積み重ねてきた想い出も一旦手放さなくてはならないのです。
それを風に吹かれながら「ひと撫で」することで、いつくしむ気持ちを表しています。
この部分でいわれている「逆毛」は世の中の流れに沿わないことを表しているのかもしれません。
「風」は今から逆風に吹かれることを示しているとも感じ取れます。
何かにあらがうようにしてでも「胸が躍るほうへ」向かおうとする君の姿が浮かんでくるようです。
花が開く前の不安と希望に満ちた「君」をそっと見守る優しい視線を感じます。
それでも、幸せを願わずにいられない
ただ「君」には自分とは違っても新しい世界へ羽ばたいてほしいと願う気持ちが感じられます。
前を向いて希望に向かって歩みを進めてほしいと願っていることは間違いないでしょう。
その祈るような気持ちは、進学や就職でそれぞれの場所へ旅立つ友との別れのようです。
愛し合ったにもかかわらず、お互い別々の人生を歩むことを決めた恋人との別離とも受け取れます。
家を出て自立する我が子へ母親が寄せる思いのようにも感じられるでしょう。
「pray」の歌詞は聞き手の感情や置かれたシチュエーションにより自由に想像を巡らせることができるのです。