人生で味わった劣等感を独白
GADOROの原点
自らを「クズ」と呼び、劣等感むき出しの本音をリスナーに投げかけるGADORO。
今回は彼の原点ともいえる楽曲「クズ」をご紹介します。
ラッパーとしての夢を追いかけ続けたGADOROの人生は、決して平坦ではありませんでした。
積み重ねた後悔と屈辱…。
そして弱さを認めて地の底から這いあがるエネルギー。
彼の放つ言葉にはこのような世界感が感じ取れます。
楽曲「クズ」に表現されている彼の人生を一緒に辿ってみましょう。
MVをチェック
MCの意味
こちらが「クズ」のMVです。
楽曲が始まる前のLIVEでのMCがリアルですね。
真っ暗な人生の中で腐ってしまった自分の心。
努力が報われなかった日々。
自分の弱さを「暴力を振りかざす」という言葉で表現しています。
確かに、弱さを使って人の心を揺さぶるのは、ある種の「暴力」なのかもしれません。
「可愛そうな自分」を演出して得られる同情が「美しい」とはいえないでしょう。
でも彼の生々しい言葉は劣等感を抱える人の心に寄り添ってくれる気がします。
MVで終始顔が隠されているのはなぜでしょうか…。
辛い独白だからこそ、目を合わせないようにしているのかもしれません。
それでは、歌詞の意味を解釈していきましょう。
GADOROにとっての人生とは?
まず彼は今までの人生を振り返ります。
どんな内容が綴られているのか、どんな感情を抱えて生きてきたのか、読み解いていきましょう。
繰り返す現実逃避
アルコールを浴びて今日も逃避する現実
偽った笑みの裏に隠された真実
一瞬の魔法 解き放たれた副作用
切れた瞬間が本当の素顔
今に見とけって何度口にしただろうか
この街で弾かられた社会不適合者
ぼんやりと何時の間にか過ぎていく時間
また今夜も無駄に寿命を減らした
出典: クズ/作詞:GADORO 作曲:観音クリエイション,GADORO
内心「不安な気持ち」や「焦り」を抱えて生きていたのでしょう。
でもそれを周囲に悟られないよう、笑って誤魔化し続けたようです。
飲酒で現実逃避するも、アルコールの作用がなくなれば現実に引き戻される…。
その繰り返しの中で受け入れたくない現実と向き合っています。
いつかラッパーとして成功してやる。
自分を認めない人たちを見返してやる。
そう強気な発言をしたのはいいけど、結果が伴わずに時間ばかり過ぎていく日々。
社会に馴染めない自分と、負け犬の遠吠えのように強がりを言う自分を客観視しています。
「遺書」としての役割
取り返しつかない、後にすら戻れない
枕を濡らすものがヨダレでありたいだなんて
想うよりもそれを願う他ない
一枚の紙切れに嘆くしかない
落ちぶれた生き方でも唄わせてくれ
これ以上は俺自身に嘘なんてつけない
背けない目ん玉で見据えている
俺が死んだ時この唄が産声を上げる
出典: クズ/作詞:GADORO 作曲:観音クリエイション,GADORO
実際に枕を濡らしているのは涙なのでしょう。
ろくに眠れないからこそ、ぐっすりとヨダレを垂らすように眠りたいと願っています。
手に取った紙に書かれた内容に絶望しているようです。
そこには現実逃避しようがない、事実が記載されています。
どんな内容なのかはこの先の歌詞で明らかになるでしょう。
そして、自分の死で楽曲「クズ」に命が宿ると歌っています…。
つまり、「遺書」の役割を果たしているということ。
死すら決意した彼の「遺書」にはどんな心情が描かれているのでしょうか?
生きなければならない
絵にもかけないような情けない人世
小さい手の平で掲げたい信念
どうすればいい もう消えたい
尋ねたとこで明日は待ってくれない
死ぬ直前後悔したくない
最後ぐらい笑って散りたい
あの日の残像を掻き消す様に
今日の日の風景を焼き付けるように
出典: クズ/作詞:GADORO 作曲:観音クリエイション,GADORO