死を意識した時、人は今までの人生を振り返ります。
彼にとっての人生は後悔に満ちていたようです。
せめて最後ぐらい笑って死を迎えたい。
そう思ったとき「まだ生きなければならない」と命が息を吹き返したのでしょう。
「あの日」とは後悔している出来事のことなのかもしれません。
過去を思い出せば辛くなってしまう。
だからこそ、「生きなければならない」と思った今日の景色を脳裏に刻み込もうとしています。
限界を迎えて感じること
現実逃避を続けてしまった結果、経済的にも精神的にも限界を迎えます。
また、その時になってやっと心情が変化したようです。
彼はどんな答えを見つけたのでしょうか?
全ては自分が招いた結果
家賃なら五千円の風呂なしのアパートでは
ろくすっぽ足伸ばして寝ることも出来ない
四畳半の部屋を電球が彩る
色濃く残るほんの一筋の光明
また支払いの封筒と重荷が積み重なる
隙あらば逃げたいが自分の罪だから
全て自己責任さ 何も文句ないぜ
涙と同時に啜ったノンフライ麺
出典: クズ/作詞:GADORO 作曲:観音クリエイション,GADORO
GADOROの楽曲にはこのアパートでの生活が頻繁に歌われています。
ここでの生活が今の彼を作ったのでしょう。
もう希望の光は電球ほどしかありません。
そして様々な支払いを滞納している事がうかがえる描写です。
できればこの現実から逃避したい。
でも、支払いできないのは全て自分が招いた結果。
自分のせいだと分かっているのに無力だからこそ辛いのでしょう。
貧困生活に食事もままならない彼は、安いインスタントラーメンを食べる毎日を過ごしていました。
本心を隠していた今まで
後ろ指が突き刺さる傷口の断片
痛みを悼むよりも甚振られる日々だ
時の歯車ってヤツはいつから狂った
正常に戻したいがとどまることを知らない
涙腺が緩めばもう一度結び直す
次ことは解けないと固く誓う
感情を押し殺して生きるは辞めた
秒針の音 刻んだ沈黙の狭間
出典: クズ/作詞:GADORO 作曲:観音クリエイション,GADORO
序盤では周囲から批判されても「見返してやる」と闘争心を燃やしていました。
でも、内心は深く傷ついていたようです。
なんとか泣かないように我慢しているけど、精神的にはもう限界なのでしょう。
辛い気持ちも「飲酒」や「無理な笑顔」で隠していると前述しました。
ここでは、自分の正直な感情を肯定しようと決意しています。
自己嫌悪で胸がいっぱいに
本音や表情を隠してきた白いマスク
酷い逆風に飲まれながら一人歩く
手繰り寄せる言葉 想像を具現化
出来れば楽だって全てシュレッダーに捨てた
ご存知の通り借金が募るありさま
膨れ上がる風船が宙に舞ってくれない
クズすぎて笑えないそんな日常に
嫌気がさして感じてきた憤り
出典: クズ/作詞:GADORO 作曲:観音クリエイション,GADORO
マスクをしながら逆風を歩く光景。
これは彼が今までどんな風に人生を歩んできたのかを描写しています。
そしてひたすら膨らんでいく借金を風船に描写。
その風船は空に浮かんでいくヘリウムガスタイプではなく、目の前で破裂寸前まで膨らみ続けるものです。
ここでタイトルでもある「クズ」の一言が登場しました。
自己嫌悪で胸がいっぱいになってしまったのでしょう。
あてのない日々
さて、こっから どうプラスに戻せるか
マイナスが多すぎて0すら見えねえんだ
短いしけもくも一吸いほどで無くなる
Eランプ点灯の車を走らせる
購入したechoと九十円の緑茶
財布の中身も完全に底をついた
ヨレヨレのTシャツと汚れきったコンバースで
今日も町に繰り出す行く宛てもなく
出典: クズ/作詞:GADORO 作曲:観音クリエイション,GADORO
自らの弱さや過ちを受け入れ、心を隠すことなく生きると決めた彼。
起死回生…といきたいところですが、どうしたらいいのか分からないくらい深刻な状況です。
あてもなく町へ繰り出すのはじっとしていられないから。
未来が見えないこの時期、彼はどんな気持ちで過ごしていたのでしょうか…。
衝撃を与えた出来事
彼の心が変化するのには、とある出来事が引き金になっています。
何度か登場した「あの日」のことです。
一体どんな経験をしたのでしょうか?