L'Arc~en~Ciel 14枚目のシングル
いまや日本にとどまらず、世界的人気を誇るバンド「L'Arc~en~Ciel」。
そんな彼らが1998年、14枚目にリリースしたのがこの作品です。
全体的に重々しく、暗く、厳かな雰囲気をまとっていることが特徴的な本楽曲。
ドラムの規則正しいリズムが印象的で、非常に心地よい反面どこか気味の悪い雰囲気も醸し出しています。
Aメロ、Bメロともに静かで、あまり動きのない展開が特徴的です。
しかしサビに入ると、これまで蓄えていたエネルギーを一気に爆発させるような印象を抱くことでしょう。
その対比が、楽曲の美しさを際立たせているように感じられます。
タイトルの意味とテーマは?
タイトルは直訳すると「禁じられた恋人」。
本来自由であるはずの恋愛。そこから連想されるのは恋人ですが、それが禁じられているとは…?
タイトルから謎が深いですね。一体どういう意味なのでしょうか。
なんだか矛盾しているような、腑に落ちないような表現です。
実はこの表現、主人公とその恋人との関係性を反映しているものでした。
禁じられた恋に落ちた男女の、切ない物語を読み解いていきましょう。
大好きなあなたに会うため
小さなボートで旅立つ
あぁ凍える暗い海へ
流されてゆく歴史の波にのまれ
出典: forbidden lover/作詞:hyde 作曲:ken
この楽曲の主人公は若い男性。
純粋で優しい心を持っているだけでなく、強さやたくましさも兼ね備えている青年です。
青年は小さなボートに乗り込み、大海原へと繰り出したようです。
その時間はなんと夜。月の明かりだけを頼りに、船を進めていきます。
何故主人公がたった1人で、かつ航海には向かない時間帯に海へ飛び出していったのか。
それこそまさに、禁じられた恋のためでしょう。
心から愛する女性は遠くに住んでいます。そんな彼女に会いに行くため、主人公はわざわざ船に乗り込んだのです。
悲劇の幕開け
切って落とされた争いの火蓋
やがて幕は上がり
儚い夢を連れて争いに火をつける
出典: forbidden lover/作詞:hyde 作曲:ken
ここで登場している「争い」という言葉は、そのまま直接的に「戦争」を意味していると捉えて良さそうです。
「幕が上がる」という言葉自体は一般的に、お芝居などをする舞台の緞帳が上にあがることを指します。
これから何が始まるのか、という楽しいワクワクとした心を想起させますね。
しかしここでは、悲劇の幕開けです。互いに準備万端、争う覚悟ができている国同士の対峙を意味します。
続けて2行目。
争い自体が燃えるわけではありませんが、「戦いの火ぶたが切って落とされた」ことの比喩表現でしょう。
hydeさんらしい、美しい詩的な表現です。
あたり一面瓦礫の山だって…
いつの日に見失った心は 繰り返す忘れ去られた罪を
あやまちを育てその汚れた愛で 瓦礫に築く楽園
出典: forbidden lover/作詞:hyde 作曲:ken
このフレーズを読むと、どことなく中世のヨーロッパが思い浮かびます。
差別がはびこっていた負の時代。そんな時代が舞台なのかもしれません。
しかしこの主人公は、そんな時代に反旗を翻そうとしていました。
国のために尽くすという忠誠心を捨て、禁じられていた他国の女性との恋を選んだ。
それが、1行目の歌詞が意味していることでしょう。
それ故に、純粋で美しいはずの愛が「汚れている」と表現しているのです。
街は戦争で荒れており、建物は崩れ、瓦礫だらけで見る影もありません。
それでも2人の深い愛があれば、そこに楽園さえも創り出すことができる。
相手のことを想い合う、2人の愛の深さや美しさが感じられます。
さらにここで、冒頭の歌詞を見た時に生まれた謎が1つ解決されました。
主人公が航海に向かない夜を選んで船を出した理由。
それはまさに、彼女との恋が禁じられていたからでしょう。
なるべく人目につかない時間帯を狙って、主人公はこっそりと彼女に会いに行こうとしていたのです。