この蛍光灯を4本固定しただけのチープな舞台装置。
『Highway Cabriolet』では歌詞やシチュエーションに合わせ以下のように使用されています。
- 都市生活者の夜
- 真夜中のハイウェイ
- ディスコ
- フォトフレーム
- ターンテーブル
これらは全て80年代~90年代のユースカルチャーの象徴ともいえるキーワードです。
カラーコーディネートされた映像
3色のカラーコーディネートと80年代
Highway Cabriolet 2人送り込む
彩りを博した鍾乳洞
イエロー混じりでもレッドカードぎりぎり
しつこいビームの乱反射
BGM波風 DJウミガメ
行けたらクラッシュで竜宮城
返しては寄せてくラブソング
出典: Highway Cabriolet/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
もう1つ『Highway Cabriolet』において重要視されたのが色による心象描写です。
MVにはカラーリスト、ライティング・デザイナーといった専門家の名前が最後にクレジットされています。
そして綿密に計算され舞台に用いられる配色はレッド、イエロー、ブルーの3色です。
カラーコーディネイトされた映像は海外の映像作家が顕著に取り入れる手法で映画でもよく見かけます。
ここで使用されている3色とネオンカラーで思い浮かべるキーワードはやはり80年代です。
代表的なものは山下達郎や大滝詠一作品を手掛ける鈴木英人のイラストレーションでしょう。
また前述したようにそれぞれの色には作品における心象風景を視覚的に表す役割も設けられています。
印章に残るレッド
「アイラブユー」って空耳してもいいかな
それでもこれくらい君はなんてことないの
今にも黄昏が溢れ出す
留めたい心の奥で光るパッセンジャーランプ
出典: Highway Cabriolet/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
例えばもっとも目にするレッドは赤い公園のバンド名にも象徴される色です。
『Highway Cabriolet』は赤のカブリオレ(オープンカー)で夜のハイウェイをランデブーしています。
レッドはマグマや血液の色に代表されるように生命の根源の色です。
そして真っ赤な薔薇の花のような情熱的な愛を示す色でもあります。
実際に『Highway Cabriolet』のAメロにはレッドを連想されるフレーズが多数登場するのです。
イエローとブルーの役割
次にイエローとブルーが効果的に併用されるネオンの枠について解説いたします。
ネオン管がディスコとしての舞台装置に用いられる際には光はイエローとブルーに変化します。
余談ですがディスコのシーンを取り入れるきっかけはやはり石野理子の加入でしょう。
『消えない』でも見ることができた歌詞とリンクした振付。
ダンスという要素が生まれ変わった赤い公園の1つの特徴でもあるのです。
ディスコがイエローの光で照らされる場面では主に石野理子が自由に踊っています。
対してブルーの場面では彼氏役と思しきクールなブロンドのモデルが登場するのです。
カラーセラピーでいう“イエロー=ハッピー”、“ブルー=クール”を表現しているのでしょう。
2人きりのランデブー
Highway Cabriolet 2人を乗せて
果てまで泳いでく遊覧船
目を光らせたガイコツも呆れて
煙を吐いてる遊園地
BGMおまかせ DJ風任せ
あらゆるヘルツの観覧車
止まらない 止まれない
回しても 回しても ラブソング
出典: Highway Cabriolet/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
次は個別に撮影された演奏シーンに注目してみましょう。
真っ赤なオープンカーの助手席でそれぞれのパートを演奏しています。
歌川菜穂のみ玩具のドラムを使用しているのはご愛敬ということで...。
運転手のお相手はいつも同じ人物です。
楽曲のテーマでもある「Highwayを颯爽と走り抜けるオープンカーでPOPなランデブーを」。
つまりランデブー=2人きりのドライブデートを表現するためにあえて個別に撮影を行っているのです。
クローズアップのカメラアングルを用いることで改めて赤い公園の演奏力の高さを体感することができます。
特筆すべきは津野米咲の多彩なギターテクを間近で見られることでしょう。
彼女のなめらかなギターストロークやテクニカルな運指が視覚的にもとても格好いいです。
唇にほんのちょっと携えた余裕
カーウインドウはまるで超高速の映画
優しい目尻 忌むような視線
どうでもよくなる熱帯夜
出典: Highway Cabriolet/作詞:津野米咲 作曲:津野米咲
2人だけのドライブは終盤に向けより互いの距離を縮めていきます。
MVの序盤では俯きがちに、時には窓の外を向いていた赤い公園。
しかし終盤には運転席の恋人と見つめ合いながら演奏を行うのです。
恋人の手が頬に触れます。
この終盤の展開は見ていてドキドキしてしまいました。