BUMP OF CHICKEN「車輪の唄」
アルバム「ユグドラシル」収録
「車輪の唄」は、2004年8月に発売されたBUMP OF CHICKENの4枚目のアルバム「ユグドラシル」に収録された曲です。
邦楽ロックの枠に収まらない幅広いバリエーションの楽曲が魅力の本作は、アルバムタイトルをはじめとして北欧神話をモチーフにしたワードが多く用いられています。
アルバム全体を通して、どこかファンタジックな雰囲気がありますね。
幻想的なアルバムジャケットは、ボーカルで作詞・作曲者の藤原基央自身が描いた絵だそうです。
オリコン週間チャートでは1位、月間で2位、2004年度年間でも19位と大ヒットを記録しました。
また、ランキングには140回も登場し、脅威的なロングセラーを記録しています。
初回限定盤には「ユグチャリ」と呼ばれるオリジナル自転車の抽選応募ハガキが同梱されました。
後に9枚目のシングルとしてリリース
「ユグドラシル」の発売からおよそ4ヵ月後の2004年12月、「車輪の唄」はBUMP OF CHICKENの9枚目のシングルとしてリカットされてリリースされました。
アルバム収録バージョンから細部にアレンジの施された別バージョンとなっています。
また、このシングルの発売と同日にMV集「ユグドラシル」が発売されました。このDVDには、同名アルバムの曲を中心にBUMP OF CHICKENのMVが収録されています。
MVの世界観に注目
「車輪の唄」のMVは、メンバーの演奏シーンとストーリー性のある物語が合わさったものになっています。
どこか牧歌的な世界観が、カントリー調の穏やかな曲の雰囲気とマッチしていますね。
ドラムスティックがブラシタイプになっていたり、ウッドベースが使用されていたり、藤原がギターではなくマンドリンを弾いているなど、一般的な邦楽ロックでは見られない楽器編成も見所です。
マンドリンの音色は、実際に曲中でふんだんに用いられています。
「車輪の唄」のMVは通常版だけでなく、MV集「ユグドラシル」に収録された別バージョンが存在しています。
歌詞の物語を読み解く
明け方、二人だけの世界で
錆び付いた車輪 悲鳴を上げ
僕等の体を運んでいく 明け方の駅へと
ペダルを漕ぐ僕の背中
寄りかかる君から伝わるもの 確かな温もり
出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
歌詞の物語は、ボロボロの自転車に「君」を乗せて主人公がペダルを漕ぐ風景から始まります。
時間はまだ明け方。目的地が「駅」ということは、これから旅立ちが待っていると想像できますね。
背中に「君」の温もりを感じている描写があることからも、二人がお互い大切な親しい間柄なんだと分かります。
線路沿いの上り坂で
「もうちょっと、あと少し」後ろから楽しそうな声
町はとても静か過ぎて
「世界中に二人だけみたいだね」と小さくこぼした
出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
車輪が錆び付いた自転車に二人分の重さを乗せて上り坂を進むのは大変なことでしょう。
必死にペダルを漕ぐ主人公を楽しそうに励ます「君」。その光景は、和やかで幸せそうな様子に見えます。
まだ明け方の町には歩いている人もおらず、「君」と主人公と、二人だけの時間が続きます。
坂の上の朝焼け
同時に言葉を失くした 坂を上りきった時
迎えてくれた朝焼けが あまりに綺麗過ぎて
笑っただろう あの時 僕の後ろ側で
振り返る事が出来なかった 僕は泣いてたから
出典: 車輪の唄/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
坂を上りきると、今まで斜面に隠れていた朝焼けが見えたのでしょう。
最小限の表現で、坂の頂上で朝焼けを眺めながら息を呑む二人のドラマチックな光景が描き出されます。
そのあまりの鮮やかさが、主人公の涙を誘ったようです。
感情が高ぶっている様子なのは、これから待っている別れを考えていたからなのかもしれません。