時代を選ばない名曲
主題歌となったのは
秘められたテーマ
歌詞を書いたのは、ユニコーンのドラマー川西幸一さんと、ボーカルの奥田民生さん。
川西さんは時代物の小説がお好きなようですが、歌詞の中には時代を示唆するような言葉は使っていません。
それでも映画の世界観とマッチした歌に仕上がっているのは、さすがの一言。
そしてそこには、主題歌という役割にとどまらないテーマが見え隠れします。
込められているであろう思いを、少しずつ紐解いていきましょう。
「でんでん」の旅
季節を感じながら
春の夜明けに飛ぶ鳥たちの
羽音に目覚めてまた歩く
夏の日差しに汗をかいて
左の足出して右足出して
出典: でんでん/作詞:川西幸一,奥田民生 作曲:奥田民生
清少納言の「枕草子」を思い出すような、自然を描いた爽やかで文学的なフレーズ。
匂い立ってくるような情景描写により、時代劇の主題歌でありながら現代の歌としても通ずるように響きます。
少しずつ、着実に
秋の夕暮れ見上げてみれば
丸い月に故郷を照らす
凍てつく冬の風をかわして
左の足出して右足出して
出典: でんでん/作詞:川西幸一,奥田民生 作曲:奥田民生
最後のフレーズ「左の〜」は、最初に挙げた箇所にも登場します。
一歩一歩、ゆっくりながらも着実に歩を進めていく様子が伝わってきますね。
しかし、この曲のタイトルは「でんでん」。
でんでん虫といえば、かたつむりのことです。
彼らには足と呼べそうな部分はないのに、どうしてこのような表現になるのでしょうか。
「でんでん」の正体
映画の中の「でんでん」
実は「でんでん」とは、映画の中で主人公につけられたあだ名のことなのです。
本の虫で何事も歩みが遅い。
そんな主人公はいつしか、ゆっくりのんびり進む生き物に喩えられてしまったのでした。
しかしそれでも、本から培った知恵と仲間の協力で、城の引越しという一大事業を着実に進めていきます。