映画の中の「でんでん」は、映画の中の主人公が喩えられた名前だと前述しました。

では、歌詞の中では、曲の主人公の喩えとしてみるとどうでしょうか。

そう考えると、主人公が進んでいるのは、実際の道というより、“人生”の喩えであるように感じられます。

「でんでん」の歩き方

ゆっくりでも、いつか

人生の歩み方もまた、実際の歩き方と同じで人それぞれ。

歩幅もスピードも違うものでしょう。

けれど、人生という道を進める時間にリミットがあることは同じです。

その長さもまた、人それぞれとはいえ。

だからこそ、ゆっくりのんびりしすぎてもいられない。

タイムリミットが来る前に、行きたい場所にたどり着きたい。

主人公はそう考えているのです。

重なって見えるのは

そう考えると、「でんでん」の主人公が目指しているのは、具体的な場所ではないように思えてきます。

つまり、人生における一つの“到達点”または“目標”でしょうか。

今まで誰もが到達しておらず、開拓されていないところ。

自分自身でさえ見たことのない、けれど「花」のような、美しく素敵なものがあるところ。

人生というタイムリミットのある旅の中で、それを探し求めながら歩いているのです。

それはどこか、この曲を歌うユニコーンというバンドの姿にも重なります。

バンドが目指すもの

100分だけのコンサート

タイムリミットという言葉で思い出されるのは、2019年に行われたユニコーンライブツアーです。

ユニコーン100周年ツアー『百が如く』」と銘打たれたこのツアー

一つの公演時間はちょうど100分でした。

タイムリミットが来ると「ハッタリ」という曲が流れ、強制的に終了するというルールのもと行われたのです。

そのため、メンバーは様々な工夫をしながらライブを作り上げました。

MCを短く切り上げたり、曲のアウトロにつなげて次の曲を始めたり、複数の曲をメドレーにしたり。

それでも、演奏それ自体については妥協することはありません。

以前のツアーと遜色ない、それどころかさらに充実したグルーヴを響かせたのです。

共通するテーマとは

いまだ目にしてない 触れられてもない
確かにそこにある 新しい世界
海鳥に寄り添って ウインクをしよう
南風に乗れば スピードはどんどん加速する

出典: ZERO/作詞:ABEDON 作曲:ABEDON

「でんでん」が収録されているのはアルバム「UC100W」。

それに先行して、同じ年にリリースされたアルバム「UC100V」。

そのリードトラックがこの「ZERO」でした。

歌詞を書いたのはキーボードのABEDONさん。

ですが、「でんでん」のそれともリンクするテーマが窺えます。

他の誰かが到達したところを目指すのではなく、未知の場所に向かう。

それでもただグイグイと進むのではなく、周りを見てウインクするような余裕や楽しげな様子も見せている。

それこそが、ユニコーンというバンド全体のテーマなのかもしれません。

混ざり合って生まれるもの

ユニコーン【でんでん】歌詞の意味を徹底解釈!なぜ歌をうたうのか?新天地に向かう理由について紐解くの画像

ユニコーンはメンバー全員が歌詞や曲を書き、パートをもシャッフルするというスタイルで音楽を作っています。

そんな中で生まれた曲は、彼らのアイデアがふんだんに詰め込まれた、個性豊かなものばかり。

ロックという枠にとどまらない曲も多数あります。

けれどそのどれにも、特に再始動後の曲に共通しているもの。

それは、音楽の新しい魅力や楽しさに溢れているということです。

メンバー同士の技やアイデアがバンドの中で混ざり合って、化学変化が起きる。

それによって生まれる“新しさ”。

言うなればそれが彼らにとっての「新天地」なのでしょう。

そしてそんな「新天地」との出会いを一番楽しんでいるのは、他の誰でもない彼ら自身なのかもしれません。

だからこそ、どこまでもそれを追い求めたい。

きっとそれこそが、彼らがバンドという旅を続ける理由なのです。