空想上の世界を泳いでみたい
黄昏の陽には 思い出が 思い出が 思い出が
流れ落ちた
出典: 心海/作詞:Eve 作曲:Eve
ここでいう空想上の世界というのは、主人公が思い描く人との関わりがある世界のことでしょう。
引用した歌詞の2行目に示されている黄昏時の太陽は、今までの歌詞に出てきた光に関する表現と呼応しています。
この部分の歌詞は、主人公を優しく照らす存在である他者のことを表しているのだと想像できますね。
消極的 希望のないような口ぶりで
明日を見上げる空 困ったな 困ったな
未来に縋ることさえも
出典: 心海/作詞:Eve 作曲:Eve
やはりまだ主人公は希望のないふりをしたり、心の内をみせて自分の殻を破ったりすることに消極的なのです。
未来に期待して傷つくことを避けているような様子が見て取れる表現ですね。
見紛うくらいの煌めく声が覗いた
傷だらけの夢だけど
出典: 心海/作詞:Eve 作曲:Eve
「光」のような他者の存在は、これまでやわらかなイメージで表現されてきました。
ここで、一段と強くきらきらと光り輝く声となって主人公を呼びます。
主人公の1人籠っている「心海」の底まで届くことのなかった光が、力強く主人公に声となって届いたのです。
すでに葛藤をたくさんしてきて、他者と生きていく夢に希望だけがあるわけでもない。
けれど、それでも進んでいこうという強い決心がうかがえます。
自分を認めて今踏み出していく
鼓動は速く ざわめいていた
心海の果てになる音が
確かに生きた 君との証なら
きっと探していた 零れそうな 呼ぶ声が
今いくと
出典: 心海/作詞:Eve 作曲:Eve
今まで主人公は他者である「君」との関わりを夢見てきましたが、自分の殻を破れず傷ついてきました。
でも、ついにここで呼ぶ声のもとに行くと告げることが出来たのです。
葛藤抱えながらも生きてきた自分を肯定し、今までの他者との関わりも大切に捉えることが出来た主人公。
心の成長が見て取れます。
最後に繰り返すサビ部分はポジティブな今からの振り返り
ああ心はまだ応えられないまま
深い海凪いでは 理想描いた今
ただ痛いほど願って 忘れはしないから
ああこのまま立ち止まってしまったら
涙の味でさえ 知らないままだったな
君と笑って
出典: 心海/作詞:Eve 作曲:Eve
曲の最後となるサビ部分は全く同じ歌詞の繰り返しです。
しかし、曲の最後に聞くとまた違った印象をもつことができます。
それは仮定の表現が、実際に「心海」から出ていくことが出来た現在からの振り返りと受け取れるからです。
主人公は、大事に思う他者との出会いをきっかけに自分の殻を打ち破ることが出来ました。
元気をもらえて励まされるような、ポジティブな爽やかな気持ちになれる結末になっています。
音から読み解く「心海」
この楽曲では、歌詞とリンクする主人公の心と重なるような音の表現がみられて大きな魅力となっています。
冒頭の穏やかな曲調は、主人公がいた外からの影響を受けない静かな場所と想像できますね。
ドラムのビート音も、主人公のざわめく心の鼓動と呼応しているかのようです。
Eveさんの歌い上げる歌詞のメロディーラインは波のようにゆったりと高音と低音を行き来しています。
こちらもタイトルの「心海」にまつわる海のイメージと重なります。
爆発音のようなサウンドが随所にポイントとして盛り込まれているのも特徴的です。
主人公が自分の殻を破る姿と重なって、力強く前進していく効果音のように楽曲を盛り立てています。