独特なスタイルを持っている
5人中3人がギター担当
5人組のバンドはそこそこ多くありますが、一般的にはヴォーカル、リードギター、サイドギター、ベース、ドラム、という構成になるものでしょう。
ツインギターにしなければメンバーは4人で済みますし、誰かがヴォーカルを兼任すれば、スリーピースバンドも可能です。
主にヴォーカルとギターのみで活動するバンド(コンビ?)も多いですし、もちろん1人でシンガーソングライター活動をしている方もたくさんいます。
どの場合においても、テレビ出演やライブ、CD制作の際にはサポートメンバーを迎えて音の幅を厚くしたりするのは一般的ですから、どんな人数でも特に不利でも不便でもないのです。
しかし、このHello Sleepwalkersは、5人構成のバンドでありながら、当たり前の楽器の割り当てをしていません。
メインのヴォーカルとギターを担い、作詞作曲までこなすリーダー的存在のシュンタロウは、長身痩躯のやや異色なルックスの男性。
バンド内での紅一点であるナルミもギターとヴォーカルを受け持ち、主にコーラス担当ですが、結構アクの強い歌い方であるため、知らなければ男性と思うかも知れません。
そして3人目のギターのタソコ(男性です)は、あまり目立つ部分ではないものの、楽曲を構成する上では必須となるような音を受け持つ立場のギタリストです。
ベースのマコトは、シュンタロウとともに現在のHello Sleepwalkersとなる前のバンドからのメンバーで、作曲の際は自分の担当部分だけに関わっているとか。
2歳の頃からドラムをしていたというユウキは、メンバーの中では最年少で、メディアやライブでもほとんど話さないというほどに寡黙ですが、その腕前はバンドを引っ張っていくのに十分な実力です。
活動スタイルもありきたりではない
彼らがメジャーデビューしたのは、2012年1月に発表された1stアルバムである「マジルヨル:ネムラナイワクセイ」です。
しかし、実はその前の2011年10月に「センチメンタル症候群」というシングル曲をインディーズで、しかも「タワーレコード限定」という縛りの中で発表しています。
その楽曲でタワーレコード内でのインディーズランキングの1位を獲得し、そのおかげか、デビュー前からさまざまな音楽専門チャンネルで何度も紹介され、流されていました。
今回取り上げる「午夜の待ち合わせ」は、彼らにとっては3枚目(メジャーでは2枚目)のシングル曲で、2014年1月に発表されたものです。
これも不思議な形態で、1曲入りのワンコインシングルとなっています。
2017年12月現在では、この楽曲以降にはまだシングル曲の発表はされていませんが、2月に全7曲入りの初めてのミニ・アルバムとなる「シンセカイ」が発売されました。
いくつかの楽曲でタイアップも果たしていますが、活動のメインとなるのはライブのようです。
ワンマンライブはもちろん、彼らが主催したライブも多くあり、出演したイベントも数知れません。
しかし、肝心のライブ映像の発売はなく、唯一先述のミニ・アルバム「シンセカイ」の初回限定盤にのみ付属されたものしかありません。
幸いにして、オフィシャルサイトでは多くのMVが見られるようになっていますので、ご覧になってみてください。
活動内容やMVなどが見れます。
ここでは「午夜の待ち合わせ」のMVを置いておきますね。
『ノラガミ』の世界
長く続く人気漫画
『ノラガミ』は、2011年から今までもまだ連載が続いていて、現在のところ講談社から第18巻までの単行本が発売されている、あだちとか氏の人気作品です。
無名の神様である主人公・夜ト(やと)が、ヒロインの壱岐(いき)ひよりと出会い、名を与えることで武器に変化する死霊を見つけ出して、人間界にはびこる妖(あやかし)を倒します。
しかし物語が進んでいくにつれ、神とはどういう存在で、何故夜トがひよりに過去を明かしたがらず、誰にも知られないところで何かに怯えているらしいのかということがわかってきます。
菅原道真公(天神様)や毘沙門天、恵比寿や貧乏神など、日本人なら誰でも知っているような神様が多く登場しますし、それぞれ個性的で魅力があります。
また、神様が使役する神器(しんき)というキャラクターも多く登場し、本来は死霊であり、生前の記憶がなく、普段は人間の姿をしていますが、呼ばれれば武器になるという設定も興味深いです。
「ノラガミ」は「野良神」の意味らしく、夜トが「無名の神様であること=野良の神様である」ということにかけてあるようです。
夜トとは別に、「野良」と呼ばれる幼い姿をした女の子の神器も登場しますが、彼女は何か大きな鍵を握っているようで、また、夜トに執着しすぎていることも気になります。
2014年1月から放送されたテレビアニメでは主に、夜トとその神器である少年・雪音(ゆきね)をめぐる人間模様と、その後に続く毘沙門天との戦いが重点的に描かれています。
全12話で構成され、後半はあだちとか氏によるオリジナルキャラクターが登場し、アニメオリジナルのエンディングを迎えました。
その後、2015年10月より第2期となる『ノラガミ ARAGOTO』が放送されました。
神様とは何か
人はよく神様に祈ります。
特に日本では、「八百万の神」という考え方が浸透しているためか、自然や物にさえも神様がいる(あるいは憑く)ということを、自然と受け入れています。
しかし、『ノラガミ』で語られる神様の成り立ちを読み、ハッとさせられました。
神様は、「誰かが作った」ものなのです。
たとえば素晴らしい人が亡くなった時に、その人を崇め奉ることで神格化し、神様にまでしてしまった代表格が、菅原道真公とも言えます。
勉学の神様と言われ、各地の「天満宮」には多くの受験生が殺到しますが、この世から菅原道真公が忘れ去られることがない限り、学問の神様は存在し続けます。
なんだかんだで「貧乏神」などの、あまり好まれない神様であっても、人に認知されているから存在できているのです。
しかし、主人公である夜トは何故か無名の神様。
「父様」と呼ばれるとある存在の、たったひとつの大きな執念から生み出された神様であるため、夜トはどんなに彼が悪くても、許しがたい敵であっても、殺せないのです。
彼を殺すと、多分、夜トも消えてしまうから──。
ひよりと出会ったことにより、夜トを覚えていてくれる人ができましたが、それもまた「父様」によって阻まれそうになり、夜トは自己を保てなくなりかけます。
人は何でも都合が悪くなると神様に祈りますが、いざ問題が解決してしまうと、あっさりとその存在を忘れてしまうのです。
誰かに覚えていてもらわなければ存在できないのが、神様の本質だということが、『ノラガミ』では静かに語られ、重要なファクターとして背景に溶け込んでいます。
そんなことを考えながら、『ノラガミ』のアニメOPをご覧ください。