バタヤンの『島の舟歌』を聞いてみて、なにかお気付きになった方はいますか?
歌詞を載せますので、この曲の特徴点を皆さん考えてみてください。
小島離れりゃ 船唄で
今日も暮れるか 海の上
いつも俺いらは 波まくら
ひとり船頭で くらすのさ
何が恋しゅて 浜千鳥
小松がくれに 呼ぶのかよ
星もきれいな 夜(よ)じゃないか
なまじ見せるな 未練気を
出典: 島の船歌/作詞:清水みのる 作曲:倉若晴生
上に引用したのはこの曲の1番と2番の歌詞です。
これを音読するといかにリズムが良いか分かると思います。
その要因は文字数。
一文が7文字ないし5文字で構成されています。
これは日本の文字芸術である俳句や短歌と同じ字数ですね。
この字数の制限によって、はじめてリズム感が出てくるのです。
これはのちほど紹介する美空ひばりの『港町十三番地』でも同じです。
望郷の念を描き出す
もう一つの特徴点は「望郷の念」です。
マドロス歌謡の主人公は、船乗りや水兵。
かれらは遠く故郷を離れ、異国で仕事をします。
仕事が長期間に及ぶことも多く、皆一様に故郷を懐かしということです。
マドロス歌謡に出てくる主人公は、必ずといってよいほど故郷を懐かしみます。
故郷を「故郷」とはいわず、隠喩で他の「モノゴト」に例えることも多いです。
『港町十三番地』楽曲解説
実在した「港町」
マドロス歌謡がどういう音楽ジャンルだったか、簡単に解説しました。
それを踏まえて今回のテーマである『港町十三番地』を紹介したいと思います。
発売年は1957年。
横浜生まれで海や港となじみ深かった美空ひばりが、終生好んで歌った曲として知られています。
本楽曲のタイトルにある「港町」とは、美空ひばりが所属のレコード会社日本コロムビアの本社及び工場があった川崎市川崎区港町からとられている。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/港町十三番地
飄々とした洒脱なユーモアあふれる曲♪
イントロのバイオリンとバンジョーの掛け合いがいい!!
イントロのバイオリンとバンジョー。
そして伴奏パートのギター。
素朴な演奏です。
しかしそのなかには、軽いユーモアがちりばめられています。
筆者は「音」にもユーモアがあると思っています。
それは「変な音」という意味ではありません。
どちらかというと「シャレっ気」のある音と表現した方が確かかもしれません。
このイントロを聞いただけで、嫌な気分が吹っ飛んでしまいます!!
それは、どんな大音量のヘビーメタルでさえ叶わない「スパイス」が含まれているからだと思います。
イントロの後半部分にはハーモニウムが加わり、より一層楽しくなります。
ハーモニウムとは鍵盤楽器。
皆さんも小学生のころ、鍵盤ハーモニカを学校で演奏していたと思います。
そして真打ち登場。
美空ひばりです。
彼女の歌が入ると、楽曲が良い意味で締まります。
出だしのドスの効いた声。
そこから伸びる高音。
なによりもそのコブシ。
コブシの使い方が天才的です。
抑揚をつけながら良い塩梅に挿入されています。
これは練習だけでは得られないテクニック。
天性の才能を感じさせます。
また歌のメロディーをハーモニウムが、なぞるように奏でていますね。
『港町十三番地』歌詞解説
1番目
長い旅路の 航海終えて
船が港に 泊まる夜
海の苦労を グラスの酒に
みんな忘れる マドロス酒場
ああ港町 十三番地
出典: 港町十三番地/作詞:石本美由起 作曲:上原げんと