艱難辛苦を経て、ようやく故郷の土を踏んだ主人公。
意気揚々に最寄りの酒場へと歩み寄ります。
そこには同じ船乗りの仲間たちがいる。
そして何より酒がある。
これ以上何も言うことはありません。
海の余韻に浸り、酒に浸り、仲間の温情に浸る主人公。
ただの「港町」ではなく「十三番地」と加えるところに、この曲のリアリティーがありますね。
2番目
銀杏並木の 敷石道を
君と歩くも 久しぶり
点るネオンに さそわれながら
波止場通りを 左にまがりゃ
ああ港町 十三番地
出典: 港町十三番地/作詞:石本美由起 作曲:上原げんと
並木の「銀杏」は咲いているのでしょうか?
主人公は我が家へと帰ってきました。
そこに待っているのは主人公の妻。
あるいは恋人かもしれませんね。
その「君」と休日、街中をデートする。
日暮れてきて、横丁にネオンが灯りだす。
そうすると、主人公が何をするのかは言わずもがな(笑)
そうです、主人公はまた酒を飲みます(笑)
「左にまがりゃ」ということは、まだ「十三番地」には行っていないということ。
「辿り着いた」のではなくその「途中」を描くのもまた一興です。
3番目
船が着く日に 咲かせた花を
船が出る夜 散らす風
涙こらえて 乾杯すれば
窓で泣いてる 三日月様よ
ああ港町 十三番地
出典: 港町十三番地/作詞:石本美由起 作曲:上原げんと
3番目は、主人公の過去の情景を描いています。
ここで登場する「花」は例え。
おそらく主人公は好きな女性がいたのでしょう。
その女性と結ばれようとしたとき、図らずも彼に仕事が入ってしまう。
その仕事とは辛い仕事。
今度いつ会えるかわからない、長期間の仕事でもあります。
一般的な仕事より、事件、事故にあう確率も高いと思います。
それを鑑みて、結ばれた花を自ら「枯らす」主人公。
哀切がある歌詞です。
悲嘆に暮れる主人公はいつものように酒場へ。
窓から見ているのは、主人公を嘲笑っているかの如く、照り映えて美しい三日月。
憎らしいですね。
こうして主人公は悲しみを酒で流し込み、大海原へと繰り出すのです。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
今回はマドロス歌謡の傑作『港町十三番地』を解説しました。
マドロス歌謡とは「船乗りの歌」。
そして船乗りが感じる、故郷や愛する人への憧憬。
それを綴った歌詞が印象的です。
歯切れのよい言葉のリズム。
そこには俳句、短歌に似た「字数制限」があります。
限られた字数で表現する「海」の世界。
皆さんもマドロス歌謡の船乗りと一緒に、大海原へと繰り出してみてはいかがですか?
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