旅に出たバスの中、僕は君を想いながら歌を紡ぎます。
この後の「星」、到着時の「朝」という言葉から考えると、このバスは長距離の夜行バスなのでしょう。
静かな夜とバスの走る音の中、僕は君からベスト10のランキングを想います。
君の中の魅力をベスト10にして、歌の中に描き出していくのです。
この「ベスト10」は、昭和の頃に放送されていた音楽番組「ザ・ベストテン」を連想させます。
「minority」には他にもどこかレトロな言葉が登場し、不思議な魅力となっています。
なおリリックでは「君」の表記が3種類ありますが、解説文では「君」に統一します。
その意味については後ほど考えていきます。
今日をハッピーに彩って
チューイングガムを口に入れる
グーグルマップに君の名前を入れて
特に何もない今日とゆう日をハッピーに
色付けして
出典: minority/作詞:ove,syun 作曲:plnt
「チューイングガム」と「グーグルマップ」で韻を踏む一節。
どこかレトロな印象を受ける「チューイングガム」。
対して現代的な「グーグルマップ」というふたつの言葉の対比が面白いです。
グーグルマップは行き先を入力すれば、そこまでの経路を教えてくれるアプリ。
そこに入力するのは君の名前。
それはまさに、旅の行き先は君だということを示しています。
何もない日だからこそ、自分のイメージの力でハッピーに彩っていきたい。
そんな言葉が多くの人の共感を呼んだのかもしれません。
TikTokではここから始まることが多いダンス。
ちょうど世の中はコロナ禍により外出自粛が求められた時期です。
多くの人が毎日、「おうち時間」を工夫して過ごしていました。
出かけることもままならない時期。
だからこそ、自分たちのイメージや笑顔で毎日をハッピーにしよう。
そんな想いが、このナンバーのヒットにつながったのかもしれません。
左利きの奏でる音の上で
マイノリティな左利きの音と涙
左利きのギタリストが奏でる音の上で
どうして泣いてるの強がらないでいいからさ
出典: minority/作詞:ove,syun 作曲:plnt
左利きで有名なギタリストといえば、ジミ・ヘンドリックスを連想する方も多いかもしれません。
ほとんどのギターは右利き用に作られているため、左利きのまま弾きこなすことは容易ではありません。
そんな「左利き」でギターを奏でる姿は、まさに「minority=少数派」。
その音に涙する君は知ってか知らずか、同じマイノリティであるのかもしれません。
マイノリティは数が少ない故に、たびたび理解されずに苦しむことがあります。
泣いている理由を語らない君は、「強がり」という言葉の通り強い人なのでしょう。
そんな君だからこそ、僕は君を理解したいと願うのです。
覚めない夢が示すもの
一番星を捕まえて夜の空に呼びかけた
シャボンの泡が弾けて覚めない夢から覚めた
出典: minority/作詞:ove,syun 作曲:plnt
夜行バスの窓から見える一番星と夜の空。
きらめくものを手に入れようとすると、シャボン玉が弾けるように夢は終わってしまう…。
そんなイメージが伝わってくる一節ですが、「覚めない夢」が覚めるというのはどんな意味でしょうか。
一見矛盾した表現のように感じられますが、何を例えているか考えてみましょう。
ここで僕が抜け出そうとしているのは、今まで住んでいた雑然とした街です。
つまり、今までの生活を「覚めない夢」に例えているのです。
そんな夢が覚める時。
それは、今までの生活から旅に出て変化しようとしていることを示しているのです。
さて、TikTokではこのサビの部分のダンスがとても可愛らしく、印象に残ります。
まだ未見の方は是非チェックしてみてください。
たどりついた最終回で
旅の終わりの朝
現実逃避の最終回
愛されたい人で大渋滞
朝の光に目を細める
優しさに見返りを求める
出典: minority/作詞:ove,syun 作曲:plnt
たどり着いた旅の終わり。
冒頭の「第1章」に対して、「最終回」と置くことで対比させています。
夜行バスを降りて朝の光のまぶしさを感じます。
ここに集まっているのは愛されたいと思うたくさんの人々。
見返りを求める人々は、僕にとって「多数派」の姿なのでしょう。
愛を求め、見返りを求めて優しくする多数派の人々。
それに対して、泣いた理由も語らない少数派の君の魅力が浮かび上がります。