リリース当時のバンドをめぐる状況について
1982年10月5日リリース、16枚目のシングル
1982年の時点で16枚目のシングルですか…1978年デビューのバンドですから、活動5年目で16枚(!)という事になるんですね。 これは当時としても破格のハイペースだったと考えられます。
要は、82年の時点でサザンはすでに国民的ロックバンドであり、なおかつコアな音楽ファンからも尊敬を集める存在となっていた。
そして文字通り、多くの人から「次のリリースはまだか!?」と待ち望まれ、(出すシングル全てが大ヒットとは言えませんでしたが)シングル・アルバムの連発を許される状況だった…と言えます。
ネットで得た知識ではなく、当時を知る者(私)が、状況を詳しく解説いたしましょう。
リリースに至る状況
78年にシングル「勝手にシンドバッド」でデビュー。
親しみやすいのに斬新な歌詞・歌唱、畳み掛けるようなバンドサウンド、今聴いても秀逸なリズムアレンジ。
この曲はいきなりのヒットとなります。 TBSの歌番組(懐かしい言葉です)、「ザ・ベストテン」にバンドが初登場した時の鮮烈な印象。相当のインパクトがありました。
そして79年の3rdシングル「いとしのエリー」が大ヒット。
「ベストテン」に度々出演するようになり(日清カップやきそばUFOのCMとかにも出ていたな)、その年末の紅白歌合戦にも出演。「国民的お茶の間ロックバンド」となっていきます。
…と同時に、先程も言ったようにコアな音楽ファンの尊敬を集めるバンドでもありました。
小学生にもわかりやすく、親しみやすいのに洋楽ロックテイストが強く、当時チャートの主流だった歌謡曲・アイドル歌謡・演歌とは明らかに異なる音楽性。
それは音楽誌で「(洋楽の)パクリと加工の妙」などと評されていましたが、皆おおむね好意的な意味でした。
バンド及び桑田さんの親しみやすいキャラも功を奏してか、サザンに対しては昔からネガティブな論調や、歯に物が挟まったような褒め方の記事など一度も見たことがありません。
(↓「Ya Ya」はオリジナルアルバム未収録。以下のベスト盤で聴けます)
圧倒的才能とキャラ、そして強運の持ち主
アルバムは一貫して高い評価を受けながらも「いとしのエリー」以降しばらく大きなシングルヒットのない状況が続くと、どうだ!とばかりにバンドは82年、名曲「チャコの海岸物語」をリリースします。
あきらかに「売ること」を意識していると思わせながら、想像のはるかナナメ上を行く楽曲。あざとくも見事な歌詞、哀愁のメロディー…。
シングル発売前から「こんな曲もやれるのか」、「ずるい、売れないわけがない!」等の評価を集めており、事実大ヒット。
個人的には、サザンが安定した評価を得、かつヒットを連発するようになり磐石の体制となったのはこの曲以降と認識しています。
あと、「チャコの~」のヒットを受けバンドは82年にも紅白歌合戦に出場するのですが、この時のパフォーマンスがあの有名な「三波春夫事件」に繋がります。
稀代のメロディーメーカーはトラブルメーカー!?
要は紅白歌合戦の本番で、直前の出番だった三波春夫さんの真似でサザンが歌(+顔面白塗り)を披露。
演奏もこの時以外に聴けるわけがない、ありえない三波春夫っぽいアレンジ。
テレビで見ているこっちは大爆笑でしたが、大御所を茶化しているとも取られかねない内容だったわけで「…でもこれ、大丈夫なの?」と子供心に心配にならずにはいられませんでした。
後年桑田さんの著書を読み知ったことですが、この紅白のパフォーマンスでバンドは非難を受け、局(NHK)に謝罪することになったそう。
このような事件は当時(今の常識から考えても)前代未聞だったわけで、それでも今日に至るまで第一線で活動を続けている彼らを見ていると「時の運を味方に付けるのも才能のうち」と思わざるを得ません。
そんなような事件やら、桑田さんのオールナイトニッポンでの自由奔放なしゃべりっぷりやらを見、聴き…。
シングル「ボディ・スペシャル」のトップレスのジャケット、全編英語詞シングル「Tarako」のリリース(勿論肝心の音楽自体の格好良さも)、ファンは「次は何をやってくれるのか?」と興味深々でした。
↓こちらが84年リリースの21stシングル「Tarako」。全編英語詞、アルバムには一切未収録(でも「ミス・ブランニューデイ」をさらにハードエッジにしたようなカッコいい曲)。
異様な雰囲気のシングルジャケット
しかし曲はバンド屈指のバラードの名曲
シングル「Ya Ya(あの時代を忘れない)」がレコード屋の店頭に並んだのは、1982年10月のことです。
このモノクロのシングルジャケット、禿げた頭の男が女の子の腕に注射しているイラストを見て「一体どんな音が出てくるのか?」と思わずにはいられませんでした。
(それまでのサザンのジャケットとはかけ離れたイメージだったので、異様な雰囲気を感じたのです。)
歌詞の中身は…?
胸に残る いとしい人よ
飲み明かしてた なつかしい時
秋が恋をせつなくすれば
ひとり身のキャンパス 涙のチャペル
ああ もうあの頃のことは夢の中へ
知らぬ間に遠く Years go by
出典: Ya Ya(あの時代を忘れない) 作詞:桑田佳祐/作曲:桑田佳祐