ふてくされてばかりの10代をすぎ 分別もついて歳をとり
夢から夢といつも醒めぬまま 僕らは未来の世界へ駆けてく
出典: 愛し愛されて生きるのさ/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二
一見ラブソングの体裁を取る「愛し愛されて生きるのさ」。
しかし楽曲に登場する主語はほとんどが「we(僕ら)」でありsomebody(誰か)です。
この傾向は同じく川崎北部出身のスチャダラパー(BOSEは除く)にも見られます。
両者が共演したあまりにも有名な「今夜はブギー・バック」しかり。
彼らの代表曲「サマージャム’95」も同様の傾向が見て取れます。
「LOVE IS WHAT WE NEED」
「道」や「曲がり角」が示唆するものとは?
“家族や友人たちと 並木道を歩くように 曲がり角を曲るように
僕らは何処へ行くのだろうかと 何度も口に出してみたり
熱心に考え 深夜に恋人のことを思って
誰かのために祈るような そんな気にもなるのかなんて考えたりするけど"
出典: 愛し愛されて生きるのさ/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二
セルジュ・ゲンズブールのような間奏後に挿入される語りのパートを見てみましょう。
分かりやすいのが「道」は「人生」を示し、「曲がり角」が示唆するのが「成長」である可能性。
そして「愛し愛されて生きるのさ」に付けられた英題は「LOVE IS WHAT WE NEED」。
家族、恋人、友人たちと迎えるであろう未来。
未来に向け人生を共に歩んでゆくために必要なのは「愛」だというシンプルな回答が提示されます。
このような価値観の形成には「渋谷系」の重要なツールであるアナログ・レコードが関係しています。
アナログ・レコードに残された土地の記憶
小沢健二のレコード・コレクターぶりは有名です。
彼のアナログ・レコードへの偏愛は家庭環境がルーツとされています。
ドイツで過ごした幼少期。
クリスマスに流れるのはドイツ語の宗教音楽のアナログ・レコードだったそうです。
その環境は日本に帰国してからも続き、ふと気付きます。
レコードには、その国の匂いが滲みついている。
だからどこか遠くに連れていってくれる感覚を持つんだ、と。
愛こそすべて!
ニュータウンで育った若者に共通する鬱屈感からの逃避。
音楽が見せてくれるのはどこか遠い異国の街の風景です。
どこか懐かしいあの景色...。
小沢健二が愛したアナログ・レコードには愛について歌われた作品が目立ちます。
「Hymne à l'amour(愛の賛歌)」
いつしか人生の活路に愛を求めた小沢健二は「愛こそすべて」と歌うようになります。
その第1期の完成形ともいえる表現が「LIFE」であり「愛し愛されて生きるのさ」だったのです。
最後に
今回は小沢健二の「愛し愛されて生きるのさ」について真面目に考えてみました。
生きてゆくのに大切なのは愛を共有すること。
常に他者の幸福を想い続けて生きてゆこう!
そんなポジティブなメッセージに溢れる楽曲でした。
日本を離れ長い空白の期間が訪れる直前にリリースされた「ある光」。
2018年、Apple Musicの動画コンテンツで峯田和伸とデュエットで披露された楽曲。
そこにも絶望の淵で「愛」を追い求める小沢健二の姿を見ることができました。
小沢健二についてもっと知りたい!
若い世代の方にこそ小沢健二の楽曲を聴いていただきたい。
そんな強い気持ちからOTOKAKEサイト内にある関連記事を紹介させていただきます。
小沢健二【強い気持ち・強い愛】映画『Sunny』を彩る歌詞の意味とは?90年代の名曲が君の心を掴む - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
2018年8月に公開された映画「Sunny」の主題歌が小沢健二の「強い気持ち・強い愛」。1995年にヒットした彼の代表曲です。なぜ主題歌が「強い気持ち・強い愛」なのか?曲の歌詞まで解説します!