厳しい思春期だった

夢を託されて

水樹奈々の父親は、歯科技工士だったそうですが、歌手になりたいという夢を持った人物でもあったといいます。

そのため、水樹奈々5歳の頃からなんと中学校を卒業するまでの約10年間、毎日休まずの猛特訓を受けていたとか。

両親が自宅でカラオケ教室を経営していたため、環境は整っていたようですが、父親から託された夢は〈演歌歌手〉

演歌を低く見るわけではありませんが、さすがにこの年齢の少女にそれを押し付けるのは酷であるような気もします。

同じ年頃の子たちはきっと、その時代に流行ったアイドルやポップスなどの方が好きだったでしょうし、話題も多かったでしょうから。

それでも水樹奈々は親の言うままに、音感を養う目的でピアノやエレクトーン教室に通うだけでなく、「将来サインを求められても困らないように」という驚きの理由で、書道まで習っていたのです。

自分の夢を娘に託して手を尽くした父親ですが、躾は厳しかった模様。

まぁ、いかにも「昭和時代の厳格な親父」という人物像が思い浮かびますね。

今、テレビやライブなどで見られる水樹奈々は、天真爛漫で元気ハツラツ、明るくユーモアのあるお茶目な女性で、そのような子供時代の面影はまったく感じられないかも知れません。

しかし、やはりどこかにまだ何かを抱え込んでいる部分があるのではないかと感じさせられるような作詞をすることもあります。

それでも、どんな経験も自分の糧とする強さも生まれ持っていたのでしょう。

マイナスを補うだけのプラス要素を、彼女は築いていたはずです。

デビューしてからも

1997年に、水樹奈々はまず、声優としてデビューします(デビュー作品の発売は1998年)。

その後、2000年にようやく歌手デビューを果たし、ゲームやアニメソングの他、テレビドラマやバラエティ番組、CMソングとしても多くのタイアップを得ました。

またそれだけではなく、女優やナレーションの仕事もこなし、洋画の吹き替えやラジオのパーソナリティとしても活躍、さらには作詞家やタレントの顔も持っています。

まさしく〈マルチアーティスト〉と呼ぶに相応しく、しかもどの分野でも平均点以上の出来栄えで高い完成度のものを生み出すのですから、幼い頃の厳しい躾も役立ったと言えるのかも知れません。

声優が歌手として活動するということは当時はまだ多くはなく、声優として出演したアニメのキャラクターソングを歌う程度のことはあっても、別の仕事として両立させるのは難しかったはずです。

しかし、オリコンチャートでは、声優が個人名義でリリースした楽曲や映像などが上位にランクインするなど、かつてなかった記録を多く生み出しました

そして2007年には14枚目のシングル曲となる「Justice to Believe」で、〈第1回 声優アワード〉で歌唱賞を受賞するまでに至ったのです。

【TESTAMENT/水樹奈々】作品のカラー出しつつ新たな挑戦をした一曲!シンフォギアAXZのOP曲の画像

その後も立て続けにヒット曲を連発し、2009年には歌手として出場した声優は水樹奈々が初めてとなった、〈第60回NHK紅白歌合戦〉への生出演という偉業まで成し遂げたのです。

2011年には、同じく声優としては初めてであり、なおかつ日本人の女性ソロ歌手としても史上8人目となる、東京ドームでのコンサートを開催するまでに成長しました。

近年ではご存知の人も多いと思いますが、T.M.Revolutionとコラボレーションした楽曲でも〈NHK紅白歌合戦〉に出場していますね。

特別アニメファンでなければ、そこで初めて水樹奈々を知ったとか、声優だとは思わなかったという人もいるでしょう。

それほど水樹奈々の歌唱力は高く、また表現力や独自の世界観を持っています。

雑誌の取材を受けた際には、「声に関するパフォーマンスならジャンルにこだわらず何でもやってみたい」と答えていて、周囲の関係者からも高い評価を得ている声が多く聞かれます。

指摘されたことはどんどん改善できてしまう天才肌である反面、ひたむきに努力を重ねる姿は、一緒に仕事をする相手までもを動かし、さらに良いものを作り上げる原動力になっているのでしょうね。

アニメ『戦姫絶唱シンフォギア』と出会う

まさかの大型シリーズ化

2012年1月から、アニメ第1期にあたる『戦姫絶唱(せんきぜっしょう)シンフォギア』の放送が開始しました。

水樹奈々は主人公クラスのキャラクターで、物語の始まりのきっかけともなる風鳴翼(かざなり・つばさ)役で出演しています。

翼は人気ボーカルユニット〈ツヴァイウィング〉の一人として、歌手活動をしている高校生。

そして同時に、〈ノイズ〉と呼ばれ、人を飲み込んで炭素にしてしまうという認定特異災害と戦う〈シンフォギア・システム〉の装者でもあります。

まずは雰囲気がわかりやすいように、そのアニメPVを見てみましょう。

「戦姫絶唱シンフォギアAXZ」PV

はじまりの発端

もともとこの作品は、音楽クリエイター集団「Elements Garden」の代表を務める上松範康(あげまつ・のりやす)が、初めてにして唯一原作を手掛けたアニメ作品。

上松範康は、作詞作曲家や編曲家、音楽プロデューサーとして多くのアーティストに楽曲を提供してきました。

ジャンルもJ-POPからアニメソング、ゲーム・ミュージックや劇伴に至るまで、さまざまな場面で活躍していますから、ご存知の人も少なくないでしょう。

そんな上松範康がどういう経緯でアニメを手掛けようと思ったのかは不明ですが、いくつか企画を練ったものの、やはりこれまでずっと音楽を専門にやってきた自分だけでは難しいと痛感。

そこで具体的な物語としての構築を目指し、ゲームクリエイターである金子彰史に原作・シリーズ構成を依頼したところから、アニメ化が進んでいきました。

アニメ『戦姫絶唱シンフォギア』は、これまでに4期に渡ってシリーズとして放送され、タイトルも後ろにアルファベットが付くようになりました。

第1期はそのままで『戦姫絶唱シンフォギア』でしたが、第2期は『戦姫絶唱シンフォギアG(ジー)』です。

第3期には『戦姫絶唱シンフォギアGX(ジーエックス)』となり、第4期には『戦姫絶唱シンフォギアAXZ(アクシズ)』となりました。

【TESTAMENT/水樹奈々】作品のカラー出しつつ新たな挑戦をした一曲!シンフォギアAXZのOP曲の画像

各13話で構成されているシリーズの中で水樹奈々は、この第4期に当たる『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』でOP曲「TESTAMENT」を披露しています。

また、2019年4月からはアニメ第5期となる『戦姫絶唱シンフォギアXV(エクシヴ)』が放送開始予定とされていて、もちろん水樹奈々も風鳴翼役で出演するでしょう。

アニメの主人公がアイドルであるなど、ライブと学園モノ、ライブと戦闘モノ、ライブと青春モノなど、もちろん恋愛要素もあったりもしつつ、とにかく歌モノが強い傾向にある昨今のアニメ

そんな中で、上松範康の中には、何かの二番煎じになったり、他のものと同列に埋まってしまったりすることのないようにと、既存のものとは違った演出などを提案したいという思いがありました。

そして「女の子たちが歌を歌って召喚したものを、自らの身体に憑依させて戦う」という〈変身ヒロインもの〉として、『戦姫絶唱シンフォギア』が生まれたのです。

キャラクターのデザイン的にも、〈女の子とメカの融合〉にこだわって原案者を選び、日本人では出せない雰囲気作りを目的に、フランス人デザイナーに美術や背景設定を任せています。

【TESTAMENT/水樹奈々】作品のカラー出しつつ新たな挑戦をした一曲!シンフォギアAXZのOP曲の画像

「TESTAMENT」の意味

戦う少女たちを思って

「TESTAMENT」(テスタメント)は、水樹奈々の36枚目のシングル曲として、2017年7月にリリースされました。

このタイトルの意味は、「試練」や「証言」となっていて、まさに『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』の作中において、戦う少女たちを見事に表現していると言えます。

では、ショートヴァージョンですが、水樹奈々のPVをご覧ください。