傷ついた経験から悲しみを完全に捨てることができる人は少数でしょう。
どんなに強くあろうと思っても、喜びなどの記憶よりも悲しみなどの辛い感情の記憶の方が勝ってしまう時もあります。
そんな悲しみの感情を“失くした”のではなく“無くした”彼女。
自主的に排除しようとしているのでしょう。
“無くした”といっても、今後の展開から戦っている様子も見受けられますよ。
BURN BURN BURN...重要なサビ
少しずつ着実な1歩
限りない喜びは遥か遠く
前に進むだけで精一杯
やわらかな思い出はあそこにしまって
BURN BURN BURN BURN BURN
OH...
出典: BURN/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
選んだ道は平坦ではありません。
古傷が痛むことがあるように、痛みの記憶が蘇りやっとの思いで前を向いている時だってあるでしょう。
まだまだ元段階では幸せを勝ち取ることだって難しい。
しかし、“喜び”という到達点を視野に入れつつも急足の様子は窺えません。
記憶に上書きはせずに、彼女は戦いながら着実に1歩ずつ進んでいるのではないでしょうか。
“あそこ”との表現は吉井和哉なりのいつものご愛嬌でしょう。
感じ取りたい民謡チックなロマンティスト・テイスト
印象的なメロディと独特な歌唱法はサビでも詰め込まれています。
民謡のコブシを思わせる歌唱法そして歌詞の表記と違った発音。
明確なのは“思い出”でしょう。
“おもいでぃ”と聞こえませんか?
東北からの影響とはこういったところでしょう。
帯びる程度の赤もある
夜は薄紅色の夢を見て
朝は希望のブラインド開けることなく
せめて身体だけはキレイに
可愛い可愛い寂しくはない
OH...
出典: BURN/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
薄紅色…
若干赤みを帯びた色であり、化粧品である紅を薄っすら引く意味も持ちます。
ほんのり赤みがさした唇や頰はどことなく官能的な光景が浮かんできます。
そして日の光を見ずに身体は汚さずにいたいという感情は夜のお仕事も連想してしまいますが…
“可愛い”そして“寂しくはない”。
どうしても自分に言い聞かせているように思えるのです。
やはり寂しさ、悲しさという感情に襲われてしまったから言い聞かせながら暗示をかけているのではないでしょうか。
エロス要素は忘れない
夏の海とか冬の街とか思い出だけが性感帯 OH YEAH
なぜか今夜は眠ったはずの魂が燃える
AH...HOLD ME HOLD ME
HOLD ME HOLD ME
出典: BURN/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
ここへきてエロスを交えてくるのはさすが吉井和哉。
四季と風景の中には、情緒的で郷愁にかられる思い出も。
どんなに暖かく優しい思い出でも、あまり触れたくないし触れられたくもない、秘めていたいから仕舞い込んでいたのでしょう。
触れてしまえば、性的興奮状態の時と同じようなことが精神的にも起こってしまうのです。
思い出の片隅には、寂しかった感情や悲しい記憶も潜んでいます。
寂しくなんかない、強くあるべき、そう自分を押さえつければ押さえつけるほどに、ちょっとした瞬間に感情が溢れ出てしまうこともありますよね。
ただただ抱きしめて欲しい。
言葉も何もいらないから、ただ抱きしめて欲しいのです。
羽ばたけない人間と飛べない鳥
飛べない鳥はとり残されて
胸や背中は大人だけれど
出典: BURN/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
自然界での鳥は、飛ぶ術を習得しなければ獲物すら仕留められません。
美しい声や体色を持っていようと、その世界で生き抜いていくことができないので淘汰されていきます。
人間でも一緒のこと。
見た目は大人であろうと、羽ばたくことができなければ1人で耐え抜いていかなければなりません。