「everything i wanted」の危険な世界

ビリー・アイリッシュ【everything i wanted】歌詞の意味を和訳しながら徹底解説!の画像

2019年11月13日発表、ビリー・アイリッシュのシングルeverything i wanted」。

アンチ・ポップ・スターでありながら時代のポップアイコンになったビリー・アイリッシュ。

彼女の偽りのない心情が吐露されているのが「everything i wanted」という曲です。

全米シングルチャートで最高8位、全英シングルチャートで最高3位のヒット曲になりました。

ビリー・アイリッシュは確実に時代を画するアーティストになります。

しかし彼女はまだこの時点では18歳の少女です。

あふれる才能ゆえに一躍スターダムにのし上がりましたが、その分感じやすい心に傷が付きます

everything i wanted」で彼女は夢について歌いました。

それは希望あふれるピカピカの夢ではありません。

ある朝に見た気が滅入るような夢の話です。

夢は記憶の整理作業とも深層心理の反映ともいわれますのでそこに現れたものは興味深いものでしょう。

果たして彼女はどのような夢を見たのでしょうか。

歌詞和訳しながら解説してゆきましょう。

それでは実際の歌詞を見ていきます。

すべては夢の話としても

あなたが想像するような夢じゃない

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I had a dream
I got everything I wanted
Not what you'd think

出典: everything i wanted/作詞:Billie Eilish O'Connell Finneas Baird O'Connell 作曲: Billie Eilish O'Connell Finneas Baird O'Connell

「私は夢を見たの

欲しがっていたものはすべて手に入れてしまったような夢

あなたが考えるようなものとは違う感じの夢よ」

歌い出しの歌詞になります。

登場人物は語り手の私、これはビリー・アイリッシュ自身を投影しています。

もうひとりあなたが登場するのですが本当の正体は分かりません。

おそらく共作者で兄でもあるフィネアスがモデルと思われます。

その他、大勢の人々つまり「they」が登場。

この人々も歌詞の中で重要な役割を担っています。

私たちリスナーのことも含む3人称複数形ですから中々胸に迫るものを感じるはずです。

夢の具体的な内容は後ほど明らかになるでしょう。

鬱々としたトーンがビリー・アイリッシュらしいです。

夢の機能は記憶の整理ではないかと考えられています。

一方でフロイトの「夢判断」という著作のように心理学的なアプローチをする人もいるでしょう。

この曲では記憶の整理でも深層心理の反映でもどちらでも解釈しやすい内容の歌詞になっています。

夢の具体的な内容に触れるとその寒々しさに心が凍るかもしれませんのでご注意ください。

オフステージでは笑顔も素敵な少女であるビリー・アイリッシュですがここでは違った顔をのぞかせます。

彼女が望んでいることがすべて叶ってしまう夢とはどのようなものか想像しながら先を見てください。

まさに私たちが想像する夢とは斜め45℃上、あるいは下へ向く内容のものです。

正直にいうと悪夢だった

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And if I'm bein' honest
It might've been a nightmare
To anyone who might care

出典: everything i wanted/作詞:Billie Eilish O'Connell Finneas Baird O'Connell 作曲: Billie Eilish O'Connell Finneas Baird O'Connell

「正直になるとしたら

それは悪夢のようなものであったに違いないわ

気遣ってくれる人の誰しもにとって」

そう語り手の私が見たのは悪夢のような内容なのです。

しかしこの悪夢によって私の望みがすべて叶ってしまうといいます。

そんな具合のいい悪夢などあり得るのでしょうか。

ビリー・アイリッシュのささやくようなボイスは消え入るようにつぶやかれます。

あまりの果敢なさに胸が痛むでしょう。

しかし歌っている当人はもっとつらい思いをしているのではないかなどと考えさせられます。

ビリー・アイリッシュは見たくない事柄を歌で提示するのです。

こんなことを歌にしたらリスナーは逃げるかもしれないというような内容を歌い込みます。

しかし絶妙なバランスでこれが新世代の歌であることを証明してくれるのです。

高いクオリティのサウンドに助けられている点もあるでしょう。

ただアメリカ合衆国のインディーズ・シーンでこうした内省的な歌は珍しくはありません。

さらに大西洋を超えたUKシーンでも数多くのアーティストが自分の内面を赤裸々に歌いました。

ビリー・アイリッシュが特殊なのは大爆発するような勢いで全世界の時代を制覇してしまったことでしょう。

この巨大なサクセスという出来事が、一方で「everything i wanted」の核の部分を作っているのです。

ゴールデンゲートブリッジから

飛び降り自殺を企てたのか

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Thought I could fly (Fly)
So I stepped off the Golden, mm

出典: everything i wanted/作詞:Billie Eilish O'Connell Finneas Baird O'Connell 作曲: Billie Eilish O'Connell Finneas Baird O'Connell

「私は空を飛べるとさえ思っていた

だから私はゴールデンゲートブリッジから飛び降りたの」

訳出の際に苦労した箇所です。

ここに登場する「the Golden」が何なのか分かりませんでした。

海外のサイトでのリスナーの指摘によって謎が溶けます。

シングルのジャケットがゴールデンゲートブリッジを描いたものだと気付いた人がいたのです。

当地のリスナーも最初は何を指しているのか困惑していました。

ゴールデンゲートブリッジはアメリカ合衆国のサンフランシスコにかかる巨大な橋です。

高さは227.4メートルですからここから飛び降りるとはつまり自殺を図ったことになります。

この橋は実際に自殺の名所になっているのです。

建造物としては世界一の自殺者数になります。

ここから飛び降りた人は死亡率98パーセントです。

様々な対策をしていますが、防御用のネットが完成するのは2021年だといいます。

私が悪夢かもしれないねと歌うのも無理はないでしょう。

しかし本当の悪夢はもっと違う点にありました。

先を見ていきましょう。

誰も泣いてくれなかった悲劇

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Nobody cried (Cried, cried, cried, cried)
Nobody even noticed
I saw them standing right there
Kinda thought they might care (Might care, might care)

出典: everything i wanted/作詞:Billie Eilish O'Connell Finneas Baird O'Connell 作曲: Billie Eilish O'Connell Finneas Baird O'Connell