青春」とはいつのことを指すのでしょうか。

元々の言葉の意味だと、十代から二十代頃を指すようです。

しかし近年では、心が若々しくいられる様を指す言葉としても使われています。

"今が青春だ"とか"あの時が青春だった"と思えるような時期は、きっとそれぞれで違うでしょう。

どちらにせよ、キラキラした時代というイメージを思い浮かべませんか。

けれどこの曲では「青春」や「若さ」をそのようにはとらえていない印象があります。

身に付いたものもなく、理解者もおらず、孤独を深めている

そんな様子として描写されているのです。

不安定な時代

壊れたいわけじゃないし 壊したいものもない
だからといって全てに 満足してるわけがない

出典: 深夜高速/作詞:鈴木圭介 作曲:鈴木圭介

キラキラしたイメージとは裏腹に、十代は悩める年代でもあります。

いわゆる思春期に、鬱屈した思いを抱えた方も多くいるでしょう。

または、今もなおその思いを燻らせ続けている人も。

破壊的な衝動で鬱憤を晴らす人もいるかもしれません。

例えば深夜に学校のガラス窓を壊して回るような。

しかしこの曲の中ではそれも是としているわけではありません。

満ち足りない思いを抱えつつ、どうしたらそれが埋められるのかすらわからない。

そんな心が揺れ動く様を描いているのです。

それもまた青春と呼べるものでしょう。

ロックンロールの衝動

考えてみると"ロックンロール"は元々、体制に反発する音楽でした。

メジャーというよりは"はみ出し者"の音楽だったのです。

音の格好良さはもちろんですが、その在り方に共感する人も多くいたはずです。

満たされない思いを抱えた人々は夢中になったのでしょう。

今はロックもメジャーなカルチャーとなった印象があります。

けれど、元々はそういった意味で青春真っ只中にいる人たちのよすがだったのかもしれません。

それに夢中になった人々は、自らも楽器を持ち音楽を作るようになりました。

それこそ、フラワーカンパニーズのメンバーもそうであったのでしょう。

そして思春期を過ぎてもなおバンドを続けている。

本来"青春"と呼ばれる時期を過ぎてもその道を走っている。

それはどこか、醒めない夢の中にいるようでもあります。

だからこそ「ごっこ」と呼ぶのかもしれませんね。

続いていく、その先に

ヘッドライトが照らせないもの

そんな青春時代を過ぎても、余程のことがない限り人生は続いていきます。

けれど人は、未来の自分がどうなるかを予測することはできません。

それが数十年後のことであっても、たった一秒後のことであってもです。

「青春ごっこ」を続ける彼らにとってもそれは同じでしょう。

少し先も見通せない夜の高速道路をひた走る様子。

それは私達の人生とも重なります

「目的地」も「帰り道」もない旅

目的地はないんだ 帰り道も忘れたよ

出典: 深夜高速/作詞:鈴木圭介 作曲:鈴木圭介

人生は道を歩む(または、走る)ことに例えられます。

けれど私達が歩く時には必ず「目的地」があるもの。

買い物に行く店や職場や学校などに"行く"ため、人は歩きます。

しかし、彼らの「深夜高速」を行く旅には目的地はないようです。

それどころか今走ってきた道すら忘れてしまっている。

彼らには"今、ここ(と、ライトで照らされて見える少しだけ先の道)"しかありません。

これはどういうことなのでしょう。

どこに向かって走るのか

「青春ごっこ」はバンド活動を意味していると前述しました。

ではバンド活動における「目的地」とは一体なんなのでしょうか。

例えば日本武道館でライブをやりたいという人がいます。

CD売上枚数やダウンロード数が目標に掲げられることもあります。

それを達成した時、大抵の場合人は達成感を得ます。

ここまで活動し続けて良かったという気持ちにもなるでしょう。

それこそが「生きててよかった」瞬間かもしれません。

けれど大抵の場合、活動はそこで終わることはありません。

人生は続いていくのですから。

もちろん次々と新たな目標を立てていく人々もいるかもしれません。

しかしその繰り返しが続くほど、疲弊してしまうこともあります。

達成できなかった場合、心がくじけてしまうこともあるでしょう。

それでも「青春ごっこ」を続けるなら、どうすればよいのでしょうか。

その問いへの彼らの答えこそが、このサビなのです。

生きていれば得られるものを求めて

場所ではない彼らの目的

生きててよかった そんな夜はどこだ

出典: 深夜高速/作詞:鈴木圭介 作曲:鈴木圭介