『COSMONAUT』に収録
BUMP OF CHICKENのメジャー4作目のオリジナルアルバム『COSMONAUT』。
『イノセント』はそのアルバムに収録されています。
張り上げられた声も合わさって心の真ん中を突き刺されたような鋭さも感じる歌詞。
その中に確かにある優しさに救われた人もいると聞きます。
イノセントは無罪、無邪気、潔白を表す言葉です。
いったいイノセントとは何を指すのか、曲を通して考えていきましょう。
自分を正当化するために
自分の非を認めるのは大変なことです。
他の人が羨ましいと感じてもプライドが邪魔して素直に認められないこともあります。
だから自分を正当化する嘘をつきます。
それが嘘だと誰よりもわかっているのは、自分自身です。
馬鹿にするのは
子供じみていて恥ずかしいよと 馬鹿にしたけど
恐らく自分より 素直で勇敢なだけ
努力はおろか行動さえ 起こせないのに
周りの奴等は ずるいと決めて
出典: イノセント/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
頑張るとか努力とか、たったひとつのことに必死になるとか。
体が大きくなるほどそういったことが恥ずかしいと思えてきます。
だから自分は興味ないという風にクールぶって格好つける。
必死に頑張っている人間を指して笑うことすらあるかもしれません。
けれども本当にくだらないと思っているのならばわざわざ気にすることもないでしょう。
馬鹿にしている心の奥底には羨ましさがあるのではないでしょうか。
もっと突き詰めれば自分から行動を起こせない自分への言い訳。
自分を奮起させるよりも周りを下げるほうが簡単なものでしょう。
だからこそ自分を正当化するために相手を「ずるい」と決めつけます。
果たしてずるいのは、どちらでしょう?
同じだったはずなのに
自分が置いていかれたら 逆恨みして
あいつは変わったと 欲に目が眩んだと
出典: イノセント/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
自分と同じように隣で走っていたと思っていた人。
気付けば自分よりずっと前方を走っていることに気づきます。
観客でしか過ぎなかったはずなのにステージで輝いているその姿。
素直に相手を応援してあげればいいだけなのに相手を非難する。
相手が前に進んでいる理由は俗的なものに違いないと陰口をたたきます。
本当は置いていかれたわけではなく自分がその場から動かないだけなのに。
けれどそれを認めてしまったら今の自分の弱さを認めることになります。
今の自分の現状が間違っていると認めることがどうしようもなく恐ろしいのです。
きっかけさえあれば
恵まれなかったから 才能とチャンス それさえあったら
出典: イノセント/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
動けない自分を、変われない自分を肯定するために何度もつぶやきます。
「僕だってきっかけさえあれば」。
前に進んでいる人間はたまたまチャンスをつかめただけの幸運な人間。
自分はチャンスすらもたらされなかった不運な人間だから動けなくても仕方がないこと。
ひどくわかりやすい言い訳です。
「もしも」の話ほど意味のない物はないでしょうに。
1人でしか生きられない
一人で生きてくもんだと 悟った顔
一人でも平気な 世界しか知らない
出典: イノセント/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
人は結局孤独なものだ。
他の人が皆前を歩いていて1人取り残されて、1人になってそう呟きます。
だから自分は1人でも問題ないと強がります。
実際に生活しているけれども1人でも問題ないじゃないかと笑うのでしょう。
そもそも、ただ生活するだけなら1人でも問題ありません。
衣食住さえしっかりしていれば人は暮らしていけますから。
しかし、他の人と深くかかわろうと思えばそうはいきません。
深くかかわるということは責任も覆いかぶさってくるということです。
そうなると1人では抱えきれなくなっていきます。
他者と深くかかわらないのならば背負うものは自分1人。
身軽にどこでも行けるのに行くのは1人でも平気な世界。
ぬるま湯の中にプカプカと浮かんでスマホの画面を眺めています。
1人でしかその生活はきっと成り立ちません。
それが自分の理想の姿なのかは別としても。