君は心まで 抱かれてはいない
それが涙に変わる Oh oh
I believe… ”Hold on Babe“
出典: さよならベイビー/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
想像力を刺激するメタファーに富んだ歌詞は、曲の後半で一気にリアリティーを増します。
「君は心まで抱かれていない」という、生々しさを感じさせる歌詞。
そこには「戻れない乙女」の背景が示されています。
おぼれるほどの恋は、他の誰かが「君」の心にいたままの恋だったのか。
あるいは、どうしても心まで抱かれることができなかった、何か別の理由があったのか。
それまでの歌詞に込められた切なさが、「痛み」に変わっていく歌詞です。
悲しみはクライマックスに
救われることのない空虚さ
互いに大事な他人だと 決めてた
言葉にならない Ah ah 君だけが辛いわけじゃない
出典: さよならベイビー/作詞:桑田佳祐 作曲:桑田佳祐
曲が進むにつれ、歌詞のストーリーはさらに展開します。
切なさと痛みを併せ持つリアリティーの究極は、サビのこの歌詞。
「互いに大事な他人だと 決めてた」というフレーズです。
身も心も捧げ合った仲だったということは、この部分で確実に。
さらに続くのは、辛い気持ちを必死にこらえながら「君」の辛さを慰めるような歌詞です。
「辛かった」ではなく「辛い」という言葉の使い方もさずが。
過去形ではないことで、悲しみがまだそこに漂っているような臨場感を醸し出しています。
半面、2人の別れにどれほど重大な理由があったのかは、分からないまま。
そんな中、歌詞の最後に繰り返されるフレーズは、「ひまわりが揺れる夏なのに」。
悲しみの後に残るのはやはり、どこまでも救われることがない虚しさなのです。
歌詞を引き立たせるメロディー
感情を刺激する旋律
胸を締め付けるような悲しみが伝わる歌詞を引き立たせているのが、そのメロディー。
マイナーコードを主体に組み立てられた、いかにも情緒的な旋律です。
サビを締めくくる「ひまわりが揺れる夏なのに」「君だけが辛いわけじゃない」。
これらの歌詞の始まりにメジャーコードを差し込むことで、悲しみに包まれていた曲の雰囲気がわずかに変わります。
言うまでもなく、この音階が感じさせる穏やかさは、満ち足りた充実感が生む穏やかさではありません。
それは、抜け殻のような「空虚」そのもの。激しい恋が終わった後の虚しさを、浮き彫りにさせるのです。
歌詞もさることながら、桑田佳祐がメロディーメーカーとしても一流、と言われる理由。
それは、歌詞に込められた心情を的確に表現できる、高度な作曲能力によるものなのです。
アルバム「Southern All Stars」に収録
ターニングポイントの1枚
サザンの再始動後初、9枚目のオリジナルアルバム「Southern All Stars」。
90年代が幕を開けた月にリリースされた本作に、「さよならベイビー」は収録されています。
アーティスト名をそのままアルバムに冠するのは、無名の新人が「名詞代わり」に使う手法。
すでに活動歴10年を超えるバンドとしては異例でしたが、再始動の並々ならぬ決意が読み取れます。
本作は彼らにとって、初のセルフプロデュース作品でもありました。
全13曲の中には、世紀をまたいだ今なお多くの人に聴き継がれる名曲の数々が収められています。
25枚目のシングル「女神達への情歌(報道されないY型の彼方へ)」。
27枚目のシングル「フリフリ'65」。
そして、桑田佳祐がメガホンを取った映画「稲村ジェーン」のサウンドトラック「忘れられたBig Wave」。
アルバムのセールスも、彼らにとって初のミリオンを達成しました。
まさに、サザンの評価を飛躍的に押し上げ、定着させた1枚と言えます。
バンドの長い歴史の中で、大きなターニングポイントとなったアルバムを、ぜひ聴いてみてください。
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世代を超えたサザンオールスターズのおすすめ曲ランキング - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
2017年1月までに出したシングルが55枚、アルバムが15枚。サザンオールスターズは幾度の栄光と挫折を乗り越えた、日本を代表するバンドです。そんなサザンオールスターズだから書ける喜怒哀楽を織り込んだおすすめ曲の数々。鉄板のバラードから、まさかの下ネタまで、サザンのおすすめ曲をランキング形式で紹介していきます。