多くの人を惹きつける曲

懐かしく新しく、彼ららしく

「Balloon Balloon」はTHE YELLOW MONKEYの9枚目のアルバム「9999」に収録されています。

彼らにとっては再集結後初、ゆうに19年ぶりのリリースとなったオリジナル・アルバム

シングルとしてリリースされていたり、単体で先行配信されている曲も多くあります。

そんな中で、アルバムのみに収録されていながら人気を博しているのがこの曲です。

リリース後に、WOWOWの欧州サッカー選手権のテーマソングにも決定しました。

歌謡曲を思わせるメロディと、クラシカルなロックンロールのサウンドの融合。

どこか懐かしく、けれど新しい。

いうなれば“彼ららしい”曲調に仕上がっているのはさすがの一言です。

まるで小説のような恋

サウンドにリズム良く乗る歌詞は、つい口ずさみたくなるようなフレーズばかり。

それでいて、読んでいると映画や絵画のように情景が浮かんでくるような言葉選びも秀逸です。

しかしその実、どこか謎めいてもいる歌詞の意味について、少しずつひもといていきましょう。

惹かれていく、落ちていく

惹きつけられるのは

麝香猫みたいな前足で 転がる獲物を弄ぶ どこかで嗅いだ匂いなのか

出典: Balloon Balloon/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉

麝香猫とは、猫というよりイタチなどの動物に似た夜行性の動物です。

その名の通り、下腹部から分泌される液は「麝香」つまり「ムスク」とよばれる香り。

現在は禁止されていますが、かつては香水の原料としても使われていました。

それも、催淫効果のある香りとして。

匂いに惹かれて

「前足」とは、動物のそれというより、その香りがする腕なのでしょうか。

すると、その中で弄ばれているのは曲の語り手自身なのかもしれません。

そしてこの「匂い」

人はフェロモンの匂いを嗅ぎ分け、自分と合った相手を探し当てるといいます。

どこで嗅いだのかはわからないけれど懐かしさを感じるそれに、惹かれずにはいられないのでしょう。

絡まっていく関係

カフェオレみたいな巻き髪が 真綿のように絡みついて

出典: Balloon Balloon/作曲:吉井和哉 作詞:吉井和哉

「君」の顔が近づくことで、甘やかな茶色のやわらかい髪が首に絡みついてくる。

映画のワンシーンのような情景ですが、恐らく込められた意味はもう1つ。

じわじわと追い詰められることを“真綿で首を絞められる”と表現することがあります。

まさにそんなイメージで、語り手は「君」との恋に落ちていっているのでしょう。

このスプーンいっぱいの愛を

小さな、けれど大きな一杯