後戻りなどできないほど
飲み込まれてくスプーン一杯の愛
出典: Balloon Balloon/作曲:吉井和哉 作詞:吉井和哉
「君」に飲み込まれた、語り手の愛情。
こんなに惹かれているのに、たった一さじだけ?と思うでしょうか。
実はこの「スプーン一杯」、イメージよりも大きな意味を持つのかもしれません。
これまでのすべてを
蜜蜂が一生のうちに集められる蜂蜜の量は、おおよそティースプーン一杯分だといわれています。
それでも舌先にのせると、きっとその時はとても甘く感じられるでしょう。
けれど、飲み下してしまえば甘味もそのうちさらりと消えてしまう量でもあります。
しかし差し出した方からすれば、それは一生分の愛なのです。
「8」から「9999」へ、過去から今へ
蜜蜂については描写がないので、やや強引な解釈にも思えるかもしれません。
しかし「9999」の一つ前のアルバムは「8」でした。
蜂のモチーフやモデルにしたキャラクターのグッズも出されていたのです。
また、この歌詞を読み込んでいくと、一番と二番で視点が少し違っているようにも感じられます。
どちらも「〜みたいな」という比喩が多用され、客観的な視点で語られている歌詞。
しかし、どちらかというと二番の方が、一歩引いた点から見ているような印象があるのです。
つまり、恐らく一番はその場にいた時の、二番はそのシーンを述懐している語り手の視点。
そう考えると、過去のアルバムのモチーフを踏襲したというのもあながち遠からず…とも思えませんか。
欲しいのは「今」だけ
いつか笑える日が来ても
いつかは誰もが風に吹かれて
全ては若いせいだと笑う
破れたハートの穴を塞いで
入り口摘み 唇絡めた
出典: Balloon Balloon/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
タイトルの通り、心が風船のようであるならば。
強弱の別なく風に吹かれたら、今とは違う所へ飛んでいってしまうこともあるでしょう。
これまでの一生分の愛を捧げるなんて、若気の至りだ。
もしかしたら自分自身もが、過去の自分をそう笑う日がくるかもしれない。
愛の渦中に飲み込まれながらそう考え、客観的な姿勢も崩さない語り手。
自分たち自身をも、そうやってどこか冷めた目で見ています。
それでも、傷ついた心から空気が漏れるのを一時的にでも止めていたい。
その一心で愛に溺れていくのです。
もしかしたらそんな気持ちこそが、若さゆえのものなのかもしれません。
一瞬と永遠
さて、1番の冒頭に、こんなフレーズがありました。
過去も未来も今だけになる
出典: Balloon Balloon/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
この「今だけ」という感覚、それを大事にするということ。
THE YELLOW MONKEYの曲には、他にもそのような描写が出てくるものがあります。
真実を欲しがる俺は 本当の愛で眠りたいのさ
恥ずかしいけどそれが全てさ
永遠なんて一秒で決まる
永遠なんていらないから
出典: SPARK/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
これは1998年のヒット曲「SPARK」の一節です。
この先はいらない、まさに一瞬ではじけて消える火花=「SPARK」のような幸せでもいい。
今この瞬間だけでも、それを手にできていればいい。
そんな気持ちが疾走感あふれるサウンドとともに歌い上げられています。