刹那に全てをかけて
恐らく、この「Balloon Balloon」の語り手も、同じように思っていたのでしょう。
どこまでも客観的な部分を持ち続けているはずの語り手。
にも関わらず、そんな刹那的な思いに身を任せてしまう。
それだけ大きな愛だったのかもしれません。
少なくとも、その時の語り手にとっては。
2人だけの部屋で
忘れられない情景
隠れ家みたいなアパートで 少しだけ窓を開けながら 午後の日差しを見つめている
横顔だけが忘れられない
出典: Balloon Balloon/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
まるで絵画のように、目に焼き付いて忘れられないワンシーン。
描写されているのは、ぼんやりと窓の外を見つめているだけの「君」の姿です。
けれど、それだけだからこそ、その情景が語り手の心に強く美しく印象づいていることが感じられます。
しかし、つまりこれは過去の情景を思い出しているということ。
恐らく今の語り手の側には、実際の「君」や、2人が育んだ愛は残っていないのでしょう。
けれど、語り手はまだ、2人だけがいた部屋から“出られずに”いるのです。
若さゆえ、なのか
秘密の鍵をひねってしまえば この世界は僕たちだけのもの
出典: Balloon Balloon/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
これは1番のサビの前のフレーズです。
2人だけで秘密を共有するという、若く青い愛を象徴するような描写。
では、それを現在の語り手はどう思っているのでしょう。
やはり、全ては若気の至りだった、と笑うのでしょうか?
まだ残っている「愛」
愛をまやかしと言うのなら この世界は生きてるだけの場所
出典: Balloon Balloon/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
“大人”になった語り手は、若かった自分たちのことを笑いませんでした。
2人が共有していた、秘密の部屋。
それは2人が出ていってしまったら、世界から無かったも同然になってしまうのかもしれません。
けれど、そうはしたくないと語り手は思っています。
なぜなら、その愛の記憶はいまだ、語り手の中に残っているからです。
それも、人間らしく生きていくために、必要なものとして。
あの頃なりの「未来」
野原を駆け出す子供みたいに
未来だけ見て進んでいたよ
出典: Balloon Balloon/作詞:吉井和哉 作曲:吉井和哉
過去も未来もいらない、今だけでいい。
そう考えていたはずのあの頃も、その時なりに未来を考えていたのだと語り手は述懐します。
幸せな「今」が、ずっと続いてほしい。
ずっと「今」のままであってほしい。
どこかでそう願っていたのだ、と。