目の前の日常に着目していた主人公は地球全体、世界に意識を向けました。
この曲の収録アルバムがリリースされた時期は1999年7月です。
1991年1月に勃発した湾岸戦争以降も、世界各地で紛争は絶えません。
こうした世界の惨状を意識したうえで改めて自分を見つめ直しています。
そのとき自分の前に立ちはだかっていたのが「ちっぽけな壁」でした。
この比喩的な表現が意味しているのは「小さな困難」ではないでしょうか。
■ベルリンの壁崩壊
1989年11月9日に(中略)東ドイツ政府が「事実上の旅行自由化」と受け取れる表現で発表したことで、翌日1989年11月10日にベルリンの壁の撤去作業が始まった出来事である。
翌年1990年10月3日に(中略)東西ドイツの統一がなされた。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ベルリンの壁崩壊
もしかしたら「ベルリンの壁崩壊」に思いを馳せ、自分が直面する困難を小さいと感じたのかもしれません。
世界規模で比較すると、等身大の自分が抱える問題は解決しやすいはず。
小さな悩みを解消して次の段階へ進もうといった意気込みが感じられます。
「鳥の場所」とは?
そう あの頃なら遠く見えた
鳥の場所へ届きそうで
今は体流れるこの
気高く赤い血を燃やして
出典: Viva la revolution/作詞:降谷建志 作曲:降谷建志
辿り着きそうもないと感じていた地点に到達しそうだから、誇りをもって血気盛んに生きよう。
意訳するとこんな感じです。
ただ、歌詞2行目と4行目の「鳥、血」という言葉が少々意味深に聞こえるかもしれません。
もちろんリスナーが自由に解釈できるよう一般的な言葉が使われています。
そこをあえて深読みしましょう。
■最後の晩餐
キリスト教の新約聖書に記述されているキリストの事跡の一つ。イエス・キリストが処刑される前夜、十二使徒と共に摂った夕食、またその夕食の席で起こったことをいう。
共観福音書では、イエスが賛美の祈りののち、パンと葡萄酒をそれぞれ「自分の体」「自分の血」として弟子たちに与え、『ルカによる福音書』は「これをわたしの記念として行え」と命じたと記す。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/最後の晩餐
この曲の作詞作曲をした降谷建志さんことKjさんはミッション系の学校に通っていました。
そのためキリスト教、讃美歌、聖書になじみ深いと公言されています。
すると新約聖書「マタイによる福音書」6章25節の「空の鳥を見なさい」。
あるいは「ルカによる福音書」26章などの「最後の晩餐」といったエピソードが連想されます。
とくに前者は「空を飛ぶ鳥を見習って日々の暮らしについて悩まないこと」といった教訓が書かれています。
この点を踏まえると、歌詞2行目「鳥の~」は「悩みから解放された境地」と解釈できそうです。
キリスト教がベースにありつつ、幅広く一般的な意味にも受け取れます。
2番の歌詞をチェック
行動に移そう!
勇気を持ってかかげた誓い
鼻で笑うように流れる世界
駆け抜けよう共にこんな時代
塗り替えるのは僕達の世代
そう一人暗い部屋で
うずくまったまま
何もせずにそれじゃ臆病なまま
時間が解決するって言って
そのまま
見て見ぬふりしてるならこのまま
出典: Viva la revolution/作詞:降谷建志 作曲:降谷建志
例えば日本のヒップホップやラップはブームを繰り返しつつ、ようやく市民権を得たのではないでしょうか。
何事でも先陣を切るのは大変です。
Dragon Ashは日本にヒップホップやミクスチャーロックの音楽革命をもたらした立役者の一角。
この曲や収録アルバムがリリースされた1999年頃には、とくにDragon Ashが時代の寵児となりました。
出る杭は打たれると縮こまっていてはできないことです。
また何年後に聴いてもその時々の時代性を反映できる歌詞になっています。
この点も、革命ソングたらしめている要素の1つといえるでしょう。
謙虚な姿勢を崩さない
ここに立ってる意義がほしかった
だから僕達必死で戦った
勝ちとった 小さなプライド
ポケットにつめ込んで
またここに立ってみる
すこし誇らしげな顔の自分がいる
満面の笑みを浮かべている
キミ達がすぐ目の前に見える
出典: Viva la revolution/作詞:降谷建志 作曲:降谷建志
結果的に日本の音楽革命という大きなことを成し遂げたDragon Ash。
しかし、それは日々の努力の積み重ねだったのではないでしょうか。
最初から大それた野望を抱いていたわけではありません。
目の前の困難を、大したことではないと言い聞かせながら乗り越えた結果。
自分たちがその時代に生まれた重要性を追求した結果とも言えるでしょう。
革命とは自分が変わること、日々の暮らしを更新し続けること。
そう受け取れます。
何かを成し遂げたと実感しても、謙虚な姿勢を保ったまま誇りをもつ。
そんな彼らだからこそ、自らもまわりも笑顔にできるのかもしれません。