『生きるガール』
今回ピックアップするのは今や国民的ガールズバンドへと成長を遂げたSHISHAMOです。
2019年には名曲を網羅した初のベストアルバムをリリースしたSHISHAMO。
もちろんベスト盤に収録されていないアルバム曲やカップリング曲にも人気曲が多数存在します。
今回、その魅力に迫ってみようと思うのは隠れた人気曲『生きるガール』です。
アルバム『SHISHAMO 3』に収録
『生きるガール』は2016年に発表されたアルバム『SHISHAMO 3』に収録されています。
『君とゲレンデ』『みんなのうた』などの有名曲でSHISHAMOの存在感を見せつけた作品です。
この作品には初期のSHISHAMOの魅力が存分に詰め込まれています。
青春時代の甘酸っぱさを巧みに表現した歌詞。
ライブハウスで鍛え上げられた確かな演奏力。
その真骨頂ともいえるのがSHISHAMOにしか歌えないであろう失恋ソング『生きるガール』なのです。
ここからは『生きるガール』の歌詞の魅力を徹底的に解剖していこうと思います。
変わらない日常
ひとりで乗る電車
ひとりでバスに乗って ひとりで電車に乗って
今日も生きてる
出典: 生きるガール/作詞:宮崎朝子 作曲:宮崎朝子
メロディックパンク風のギターリフからそのまま1番に突入します。
軽快なエイトビートとキャッチーなメロディーに終始する『生きるガール』。
一聴すると気楽な女子ひとり旅的な歌としても受け取ることができそうです。
しかしここから事態は急変します。
あなたがいないのに...
ひとりでバスに乗って ひとりで電車に乗って
今日も生きてる あなたがいないのに息してる
出典: 生きるガール/作詞:宮崎朝子 作曲:宮崎朝子
しかし続く歌詞で主人公である少女は大切な人との別れを体験していることが明らかにされます。
失恋の痛みを抱えながらも健気に日常生活を送る少女の姿が目に浮かぶようです。
以前は2人で眺めていたであろう車内から望める風景。
車窓から見える街並みはその頃と変わることはありません。
しかし主人公の目に映る光景は以前とは決定的に変わってしまっているのです。
変わらず日常を過ごすことへの後ろめたさ
「あなたがいなくちゃ生きていけない」その気持ちは本物だった
出典: 生きるガール/作詞:宮崎朝子 作曲:宮崎朝子
突如転調されるBメロでは主人公の感情の揺れ動きが表現されます。
彼なしでは息もできない、それほどに大切な存在だったはずなのに...。
別れた後も変わらない日常を過ごしている自分のことを誰かに言い訳しているようです。
主人公は自分自身の気持ちに後ろめたさを感じていることが分かります。
個人のつらい体験とは別に日常は淡々と進んでいくものです。
失恋したときに過ごす日常の何とも言い難いモヤモヤ感がここまでの歌詞で見事に表現されています。