『生きるガール』も2番に入ると少しずつ内面の変化をうかがわせる記述が散見されるようになります。
まずは大好きな彼にフラれてからの21日間の苦悩が告白されるのです。
引き寄せの法則とでもいいましょうか?
人は喪失を埋めるために無意識に自身の欲求を目に焼き付けてしまう傾向があります。
街を歩けば目に入るのは仲の良さそうなカップルばかりです。
普段は意識もしていなかった光景、しかし当時の主人公はそればかりを目で追ってしまいました。
破壊衝動を抑圧すること、そしてあまりの哀しさに涙が止まらなかったのです。
しかし時間の経過により徐々に喪失を受け入れることができるようになりました。
通過儀礼を通して成長した主人公
あなたがいないの どこを探しても
だけどそれでも 明けない夜はないから
出典: 生きるガール/作詞:宮崎朝子 作曲:宮崎朝子
主人公は通り過ぎる無数の人々の中に無意識に元カレの姿を追い求めてしまいます。
このような行為は失恋で広がってしまった傷口に塩を塗り込むようなものです。
しかしこの通過儀礼を通して主人公は喪失の哀しみを乗り越え成長していきます。
雨降りの後には必ず明るい太陽が雲の間から顔を覗かすように...。
私は笑ってる
変化した内面
笑うよ 下を向いても何も掴めないから
前向きな応援ソングは柄じゃないけど
あなたがいない いない たったそれだけのこと
今日も世界はあなた以外の素晴らしいものを教えてくれる
出典: 生きるガール/作詞:宮崎朝子 作曲:宮崎朝子
1度目とはまったく違う歌詞で構成されたサビを見てみましょう。
歌詞を変えた理由は主人公の内面の変化を事細かに描写するためです。
1番と比較すると物事を未来志向で捉えているのが分かります。
世界とは自らの心の写し鏡なのです。
しかし彼女はまだ自身の成長には気付いてはいません。
それでも世界は明るくて
あなたはもう私のことあまり思い出さないかもしれない
私はもうはっきりきっぱり振られたし
それでも世界は明るくて それでも時々笑えるの
おかしな話だよね 本当に好きだったのにね
出典: 生きるガール/作詞:宮崎朝子 作曲:宮崎朝子
世界の求めに応じて笑顔を作っていた主人公。
ここでは自然な笑みを浮かべるようになっているのです。
ここまで『生きるガール』の歌詞を見てきました。
歌詞の構成について何かお気づきではないでしょうか?
宮崎さんは『生きるガール』を終始語り口調で書き上げています。
これはSHSHAMOの楽曲において度々使用される手法です。
では宮崎さんはなぜこのような構成にしようと考えたのでしょう?
未来から過去の自分に宛てた手紙
『生きるガール』の歌詞は成長を遂げた主人公が過去の自分に宛てた手紙のようなものなのでしょう。
人生とは永遠に終わる事のない別れの連続です。
かけがえのない毎日だから後悔のないよう常に前を向いて歩んでいこう。
常に笑顔を絶やさずに...。
そうすればきっとあなたは強く生きるパワーを得ることができるんだよ。
傷つき、毎晩泣いてばかりいた過去の自分にそう伝えたかったのでしょう。
同じフレーズ、だけど異なる意味
ひとりでバスに乗って ひとりで電車に乗って今日も生きてる
あなたがいないのに…
出典: 生きるガール/作詞:宮崎朝子 作曲:宮崎朝子
『生きるガール』のラストはイントロと同じフレーズに回帰して終わりを迎えます。
しかしその意味合いはオープニングとはまったく異なる表情を浮かべているのです。
SHISHAMOの楽曲の魅力は聴くたびに味わいを増していく懐の深さにあります。
皆様は『生きるガール』を聴いてどのような感想を抱くでしょう?