”原点回帰”がテーマの「Liar! Liar!」

Liar! Liar!」は、B'zの23rdシングルに当たり、1997年10月にリリースされました。

1997年は、3月に松本孝弘のコーラスとべースが聴ける「FIREBALL 」、7月にB'z史上最長の制作期間となった「Calling」、そして10月の「Liar! Liar!」と、3枚のシングルがリリースされています。

制作意欲にあふれた、乗りに乗っている時期だったのではないでしょうか。

その中でもこの「Liar! Liar!」は、全部生音で作成された「FIREBALL」とは対照的に、この時期のB'zとしては珍しく打ち込みをかなり使用しています。

イントロからすでにその要素は十分に感じられますが、それでも曲調としてはしっかりハードロックになっているところがB'zの凄いところ。

ギブソンレスポールのハードな歪みサウンドと打ち込み音が、こんなにしっくりくるのはB'zならではといえるでしょう。

元々デビュー当時B'zは、ギター以外はデジタルサウンドが中心だったこともあり、この曲のテーマは”原点回帰”だと松本孝弘は当時語っています。

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「Liar! Liar!」の歌詞に注目

ここで「Liar!Liar!」の歌詞の内容を見てみましょう。皮肉めいていて、ちょっと意味深な歌詞に注目です。

もう信じられない……!

まっ黄色いシャツ着ちゃって 歌いだしそうな表情さらして
ダンナと仲良く腕組んで 道横切ってんのはオマエだろう

つっこんじゃうぞ アクセルべったり踏んで
大渋滞のせいじゃない こんなひどい頭痛
どこまでも 追いつめても むなしいだけ

You,liar,liar もう信じられないや
なんてスッパイんだ オトナのパラダイス
好きかキライか それだけじゃ甘いや
青くさいやつが おいてけぼりくらうよ

出典: Liar! Liar!/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘

ダンナとはうまくいってない、とでも聞かされていたのでしょうね。

でも偶然にも見てしまいました。仲よさそうに並んで歩く姿を。しかも腕まで組んで。

きっと彼女の言うことをそのまま素直に信じていたのでしょう。

自分が支えてあげなくちゃ、とか、僕が守る、というようなことを思っていたのかもしれません。

それだけに、ショックはかなり大きいようです。

出来れば、見たくなかった。彼女の言うことが、嘘だと知りたくなかった。

好き嫌いだけじゃなくて、オトナの嘘ってやつを上手く嗅ぎ分けて生きていかないと、割を食らいます。

やっとそのことにも、彼女の嘘にも今気付いた自分の青臭さにうんざりとしている様子ですね。

いいか悪いかでは決められない

先生はママと 政府は火星人と 警察は悪い人と
僕の知らないとこで とっくに ああ ナシがついてる
それってダンゴウ社会

うたぐり深いやつになっちゃったのは
週刊誌のせいじゃない オマエのせいでしょ
でも真実を 知ることが すべてじゃない

Oh,liar,liar もう信じられないや
迷路みたいだ オトナのパラダイス
いいか悪いか それだけじゃ甘いや
アレやコレやで 地球だって回らぁ

出典: Liar! Liar!/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘

嘘をつくのはいけないこと。そう教えられて、多くの人は大きくなってきたことでしょう。

でも実は、自分が信じていたものも嘘で塗り固められているのかもしれないのです。

表向きはそうでなくても、裏で話はついている。

”ダンゴウ社会”だと、今更思い知ります。

大切に思っていた”オマエ”も嘘をついていた。

その事実を知ってしまったことを、後悔します。

知らなければよかったと。

でも、オトナの世界は複雑で。

確かに昔習った通り、”嘘はいけないこと”なんだろうけれど、それだけで済ませられない”嘘”もたくさんあります。

いいか悪いかだけで判断できない、難しい”嘘”も。

人を助けるためにつく”嘘”や、哀しい思いをさせたくないためにつく善意の”嘘”という存在だってあります。

そんないろんな”嘘”をちりばめながら、日常は進んでいくのです。うまく回っていくのです。

僕らのplace! けわしいspace! さぁ ハラくくろう

You,liar,liar もう信じられないや
なんてスッパイんだ オトナのパラダイス
完全な芝居で 信じさせてよ
ウソなどないと 思いこませてくれ
Oh,liar,liar だれもがliar
愛する人が ハッピーになりゃそれでいいや

出典: Liar! Liar!/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘

嘘と真実が混じり合うこの社会。それでも、何とか生き抜いていかなければなりません。

嘘ついていてもいい。

でもつくんだったら、絶対に嘘だと悟られないようにしてくれたらよかったのに、と軽く恨み節ですね。

誰もがliar=嘘つきだと嘆きながらも、それでも”僕”は最後にはこういいます。

”愛する人が幸せなら、もうそれでいい”と。

嘘でも、本当でも。大切な人が幸せだったら、どっちでもいいのです。

とても懐が大きく、器の大きさを感じさせますね。

できることなら、私たちもこうありたいと思う姿です。

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この後の英詞が深い!

でもここからがB'zの面白いところ。そのまま一筋縄では終わりません。

Baby,do you want the truth?
Baby,do you want it?
Baby,do you want the truth?
Baby,do you want it?

出典: Liar! Liar!/作詞:稲葉浩志 作曲:松本孝弘

”ねえ、真実が知りたいの?

ほんとにそれが知りたいの?”

と問いかけます。

果たしてこの問いは、どういう意味でしょうか。

自分みたいに知りたくない真実まで知ってしまいたいの?という問いでしょうか。

それとも、”誰もがliar”なのですから、”愛する人がハッピーになればそれでいい”のも嘘なのでしょうか。それが真実なのでしょうか。

あなたはどっちだと思いますか?

9thアルバム『SURVIVE』収録