以前すでに出会っていた?
いつか望んだあの背中
菫の咲いた小道に
見ないふり
月並みに泣いた春のこと
出典: 曼珠沙華/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
この歌詞は女性視点のような気がします。
1行目ではこの女性はすでに以前、この男性に会ったことがあるのでしょう。
(意中の男性とは地位ある男性のこと)
2行目の「すみれ」は春の訪れを告げる素朴で可憐な花。
春は恋の季節。つまり恋の訪れを匂わせます。
ですがこのときの女性は愛しい男性の後ろ姿を目で追っただけ。
「私のような者があの高貴なお方を想ったところで叶うはずもない」
手に入らない恋に涙する女性の姿です。
ふたりのあいだには越えられない社会的格差があるのでしょう。
しかしふたりはついに…
想いを遂げる
「想 要 什么?」
妄想 参照して
一切合切投げ捨てて
今宵は明けるまで遊びましょ
出典: 曼珠沙華/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
1行目の中国語は「何が欲しい?」。
この歌詞は恋するふたりの共通の想いでしょう。
ひそかに以前から気持ちの通い合っていたふたり。
ついに想いを遂げます。
曲の中でこの部分は疾走感あふれるラップ調。
止まらない恋の宴を表すかのようです。
恋の代償
華やかに踊り踊れや 天下の綻び
手招いた ボクは桃の花
それとも曼珠沙華
出典: 曼珠沙華/作詞:まふまふ 作曲:まふまふ
春の恋遊びにおぼれ堕落するふたり。
1行目「天下~」の詞を見るかぎり、やはり男性は国の頂点(=皇帝)のようです。
皇帝はこのままいくと恋のために国を危うくしかねません。
思えばこの皇帝は女性の自分への気持ちを知っていたのでしょう。
だから自分の側から女性にアプローチしたのです。
女性にとっては雲の上の男性。
お声掛けにどれほど心を震わせたことか。
それにしても皇帝をとりこにしたこの女性。
きっと桃の花のように魅力的な人なのでしょう。
皇帝=2種類の花
2~3行目の歌詞。
皇帝は2種類の花に自身をなぞらえています。
いけないと知りながら引き寄せてしまった恋。
そこには罪の意識が感じられます。
<この恋は毒にしかならない>のです。
皇帝もそのことを分かっています。
なのに止められない想い…。
ところで曼殊沙華(ヒガンバナ)の花は毒を持ちます。
そしてここでの桃とは「夾竹桃(きょうちくとう)」とも考えられます。
桃の花と似る夾竹桃も有毒植物です。
もし夾竹桃でなく桃の花であったとしても、桃の種には微量の毒があります。
つまりどちらの花も毒に関する植物。
皇帝は恋の毒にとりつかれ、いずれ身を滅ぼすのかもしれません。
そんな自分のことを自虐的にふたつの毒花に例えているのでしょう。
ヒガンバナは春の花ではないのになぜ?
彼岸花の名は秋の彼岸頃から開花することに由来する。別の説には、これを食べた後は「彼岸(死)」しかない、というものもある。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒガンバナ
曼殊沙華(ヒガンバナ)は秋の花。
春の歌なのに秋の花が登場するのが不思議に思えます。
しかしここには理由があったのです。
つまり「ふたりの恋は(命を落とすほどに)破滅的」。
曼殊沙華は誰もが知るとおり毒々しい姿をしています。
鮮やかで思わず摘みたくなる華やかさ。
恐ろしい色ですがどこか心惹(ひ)かれる花でもあります。
皇帝の恋の毒にあてられた女性の行く手にも死が待っているのかも…。