【天使たちのシーン/小沢健二】歌詞の意味を紐解く!君をつなぐ"サークル"とは?込められた想いが深い…の画像

愛すべき生まれて 育ってくサークル
君や僕をつないでる穏やかな 止まらない法則

大きな音で降り出した夕立ちの中で 子供たちが約束を交わしてる

出典: 天使たちのシーン/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二

ここで私たちを繋ぐ「サークル」や「法則」について考えます。

小沢健二が「王子様」を演じ終えた後に環境保護運動に邁進したことと「天使たちのシーン」の相関

この曲で様々な様相で現れる自然と人が同じシーンに登場する現象について考える必要があります。

自然の摂理のようなものと人が命運を結びつけることの大切さ。

人間存在の逃れられない「法則」について小沢健二はこの頃から環境保護運動の理念を託していた。

自然に対して人の存在を決して矮小化することなくその「サークル」や「法則」を考えていたのでしょう

夕立ちの音にひるむことなく自分たちの約束を結ぶ子どもたちの描写。

自然も人もどちらも大切にする思想が見え隠れします。

しかしあまりに詩的な描写の中で押し付けがましさなど微塵もないところが素晴らしいです

自然と人との共棲に目を啓く

自然と人の営みの対比

【天使たちのシーン/小沢健二】歌詞の意味を紐解く!君をつなぐ"サークル"とは?込められた想いが深い…の画像

金色の穂をつけた枯れゆく草が 風の中で吹き飛ばされるのを待ってる
真夜中に流れるラジオからのスティーリー・ダン 遠い町の物語話してる

枯れ落ちた木の間に空がひらけ 遠く近く星が幾つでも見えるよ
宛てもない手紙書き続けてる彼女を 守るように僕はこっそり祈る

出典: 天使たちのシーン/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二

様々なバリエーションで自然と人の暮らしの対比がなされます。

季節は完全に秋になりました。

枯れ草が風に吹かれる姿とスティーリー・ダンの音楽。

自然には自然の理(ことわり)があり、人の暮らしには独自の根拠がある

スティーリー・ダンはAORの草分けで「Aja」などの名盤があります。

環境のいい場所で見られる満天の星空と投函されるか分からない手紙を書く少女への「僕」の恋慕。

自然と人の暮らしが文脈を違えているのに同じ世界に共存しているのだということの神秘に眼を啓きます

「天使たちのシーン」の歌詞は執拗に自然と人の暮らしを対比させるように書かれているのです。

人の営みを肯定する

火の発明と冬の時代

【天使たちのシーン/小沢健二】歌詞の意味を紐解く!君をつなぐ"サークル"とは?込められた想いが深い…の画像

愛すべき生まれて 育ってくサークル
君や僕をつないでる緩やかな 止まらない法則

冷たい夜を過ごす 暖かな火をともそう
暗い道を歩く明るい光をつけよう

出典: 天使たちのシーン/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二

火の発明は人間と自然との主従関係を逆転させました。

小沢健二は後に環境保護運動を開始しますが人の営みや文明を否定する気はさらさらないのです

人にとって過酷な冬を温める火は道を照らす灯りにもなります。

そうした人の文明文化の中で育てる縁で「君」と「僕」はつながりを得て社会を形成するのです。

人は生まれながらにして愛を媒介にして社会性を育ててゆくもの

「サークル」や「法則」の正体はそのあたりにありそう。

しかし「天使たちのシーン」での小沢健二は愛という言葉を遠回りするように慎重に言葉を紡ぐのです

愛という言葉はとても大切なものですが歌詞の中では手垢がついてしまっている印象があります。

そうした安易さを「天使たちのシーン」ではどうしても回避したかったのでしょう。

一番効果的な箇所でしか愛という言葉を用いません。

小沢健二だけの本当の言葉

自然の生命力と自分の力

【天使たちのシーン/小沢健二】歌詞の意味を紐解く!君をつなぐ"サークル"とは?込められた想いが深い…の画像

毎日のささやかな思いを重ね 本当の言葉をつむいでる僕は
生命の熱をまっすぐに放つように 雪を払いはね上がる枝を見る

太陽が次第に近づいて来てる 横向いて喋りまくる僕たちとか
甲高い声で笑いはじめる彼女の ネッカチーフの鮮やかな朱い色

出典: 天使たちのシーン/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二

歌詞を真剣に紡いでいる小沢健二自身の姿が登場します

フリッパーズ・ギター時代から歌詞に関しては絶大な自信を持っていた小沢健二。

しかしそんな彼にとっても「天使たちのシーン」の歌詞を書くことは簡単ではなかったはず。

日々の想いをつらつらと書いては消し書いては消しを繰り返したかもしれません。

雪の重みに負けまいとする木の枝の生命力に自身の鍛錬する姿を重ね合わせます

他の誰にも書けない本当の言葉。

私的な印象になりますがこの「天使たちのシーン」が日本の音楽史で一番素晴らしい歌詞と感じます

冬に耐えている人々のもとに春の胎動が押し寄せる瞬間を描く。

情景や色彩など視覚への訴えかけが鮮明になっています。

冬を乗り越える力

私たちの智慧