愛すべき 生まれて 育ってくサークル
気まぐれにその大きな手で触れるよ
長い夜をつらぬき 回ってくサークル
君や僕をつないでる緩やかな 止まらない法則
涙流さぬまま 寒い冬を過ごそう
凍えないようにして 本当の扉を開けよう カモン!
出典: 天使たちのシーン/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二
自然の中で生きている私たちが共同体を育んでゆく姿。
人間の共同体だけではなく自然との共棲の中で生まれる大きな円環。
小沢健二はそうした個人から始まりやがて広く大きな視点で捉えられる共同体に執着します。
この共棲の中で私たちは冬を温めあいながら乗り越えてゆくのです。
それが自然と人間の付き合い方の本質だと彼は歌います。
こうした仕組みに気付くことで新しい世界への扉を開くことができると信じているのです。
小沢健二には智慧への信頼というものが根っこの部分にしっかりとあるのでしょう。
ギター・ソロはおそらくこの時期よく使っていたテレキャスターの音色。
細い音ですが力強く惹かれる旋律は覚えやすくてとても印象的です。
スキャンダラスな歌詞
神様への言及
月は今 明けてゆく空に消える
君や僕をつないでる緩やかな 止まらない法則 ずっと
神様を信じる強さを僕に 生きることをあきらめてしまわぬように
にぎやかな場所でかかりつづける音楽に 僕はずっと耳を傾けている
耳を傾けている 耳を傾けている Wow wow
出典: 天使たちのシーン/作詞:小沢健二 作曲:小沢健二
神様への言及はちょっとしたスキャンダルになりました。
小沢健二が宗教に傾倒しているのではないかと話題になります。
また雑誌「噂の真相」が「小沢健二が自己啓発セミナーに通っている」というデマを流しました。
フリッパーズ・ギター時代の小沢健二の歌詞は神様や宗教とは一番遠いところにあったので衝撃でした。
しかしこのラインは神様を単純に信仰することを推奨した歌詞ではないのです。
大切なのはその後の強く信じることの方にあります。
自然や人間の暮らしの「法則」を強く自覚することが大切だと彼は歌っているのです。
「法則」の自覚が人に智慧をもたらします。
その智慧をもってして長い冬の時代を乗り越えてゆこうと歌っているのです。
根本にあるのは自然への畏怖の心と人の理性への深く重い信頼。
神様の使いである「天使」をタイトルに用いたのも人間を包む大きな円環への視線の移動を促すもの。
人間の営みへの愛はありますが人間だけで世界が成り立っている訳ではないので視線を自然へ向けよう。
そんな心情・信条こそが自然の移り変わりと人の暮らしを並べて対比させていることの真意です。
ひとりひとり解釈が分かれる曲
自分自身の想いを一番大切に
「天使たちのシーン」の歌詞は長く、また核心は詩的描写に昇華しているために解釈が難しいです。
この記事の解釈だけがすべてではなく受け手の解釈に広く開かれた歌詞になっています。
「天使たちのシーン」などを発表した後、「渋谷系の王子様」を演じた小沢健二。
王子様時代の曲も祝祭感にあふれていて素晴らしいもの。
今のJ-POPの雛形をひとりで創り上げてしまいました。
それでも「天使たちのシーン」が小沢健二の最高傑作だとする人は根強くいます。
ここに綴られた本当の言葉への信頼こそが今日までの小沢健二の人気を支えている原動力です。
アルバム「犬は吠えるがキャラバンは進む」は2019年5月下旬現在、残念ながら廃盤。
それでもそれなりの実売数があった作品ですので中古市場の価格は落ち着いています。
未聴の方はぜひ入手してみてください。
「LIFE」以前の小沢健二の素晴らしさに触れていただきたいです。
シリアスな小沢健二の真骨頂がこの作品にはあります。
「天使たちのシーン」は一筋縄ではいかないですが皆さんご自身の解釈を何よりも大事にしてください。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
OTOKAKEで振り返る小沢健二
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【小沢健二】おすすめ人気曲ランキング10選!伝説の“渋谷系”人気曲から隠れた名曲までファンが厳選♪ - 音楽メディアOTOKAKE(オトカケ)
フリッパーズ・ギター解散以降、精力的にソロ活動を続けていた小沢健二もいつしか線路を降りてしまいました。そんな彼が「流動体について」でキラキラの姿で復帰した際にはすべてのファンが歓喜したもの。小沢健二のソロ・キャリアの中から特に重要な曲を10曲厳選してみました。万感の想いを込めてお届けする記事です。
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