何を「言わせてみてぇもんだ」なのか

天才・桜井和寿の苦悩

Mr.Children【言わせてみてぇもんだ】歌詞を徹底解説!もがく姿に共感…必要とされたいあなたへの画像

2004年4月7日発表、Mr.Childrenの通算11作目のアルバムシフクノオト」。

このアルバムの冒頭を飾る「言わせてみてぇもんだ」に焦点を当てます。

発表からかなりの時間が経ちましたが一向に古びない楽曲です。

後期ビートルズのようなブラスアレンジは小林武史と山本拓夫によるもの。

スネアドラムでロールするパーカッションの音なども印象的でしょう。

おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドはこれから始まる様々なドラマに期待せずにはいられません。

歌詞の方も実に興味深いものです。

天才といわれる桜井和寿がこれ程の苦悩を率直に曝け出す姿に驚きを感じます。

べらんめえ口調や江戸弁のように語尾をまくしたてるような特徴が印象的です。

誰かに必要とされる人間になりたい。

押しも押されもしないロック・スターの言葉は予想以上にシリアスな苦悩を背景にしているのです。

こうした誠実な言葉を紡いでくれるのでMr.Childrenは愛され続けるのでしょう。

言わせてみてぇもんだ

発表から大分経ちましたが、この名曲歌詞を仔細に見ていきましょう。

まっさらな気持ちに戻ろう

愛の永続性を蹴散らせて

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愛想を尽かしてくれても 一向に構わない
君の言う「永遠」など 僕だって当てにしてない

自慢にしてた黒帯は とっくに捨ててしまった
ぶら下がっただけの 存在でいたくはない

出典: 言わせてみてぇもんだ/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

どきりとする歌い出しです。

言葉の間合いまでもが後期ビートルズのジョン・レノンを彷彿とさせます。

人を突き放すような歌詞でありますが、この先にどんな展開があるのでしょうと気になるでしょう。

主人公は愛の永続性を端から信じていないと強がります。

これでは実際に愛は長くもたなくなるでしょう。

やけっぱちになってしまう主人公の気持ちを桜井和寿はルーズな歌い方で再現します。

過去の栄光など無意味

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黒帯」はおそらく自身の過去の栄光の隠喩でしょう。

過去の栄光に自身のアイデンティティを見出すような恥ずかしい仕草など彼には無縁です。

もっと今の自分自身の魅力で勝負したいと歌います。

たとえばどんなに成績優秀で学業を終えたとしても実社会では何の意味も持たないでしょう。

社会人になった後も学歴などを鼻にかけて自慢するのはとても恥ずかしいことです。

「言わせてみてぇもんだ」の主人公はそうした態度を惰性と感じているよう。

自分はあくまでも今ある実力で世界を切り拓いてゆくよと歌うのです。

実力勝負を極めるためには過去の栄光にぶら下がる態度を戒めないといけません。

Mr.Childrenアルバム「シフクノオト」で新しい音楽に挑戦する。

だから君も過去の大ヒット作のイメージを忘れて、まっさら心持ちで聴いて欲しい

そんな想いを1曲目の冒頭で宣言したのかもしれません。

スーパースターにも苦悩はある

口語調の言葉を採用した理由

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自分にしか出来ない事 身に付けようとしているけど
代わり映えしねぇなぁ なんかつまんねぇなぁ
届かぬ空を見ては またしても赤面の至り

出典: 言わせてみてぇもんだ/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿

スーパースターにもこんな悩みがあるのでしょうか

主人公の想いのすべてが桜井和寿の心の声ではなく想像力に任せた言葉もあるでしょう。

それでも「言わせてみてぇもんだ」の歌詞には真実の声を感じてしまうのです。

おそらくそうした効果を狙って、桜井和寿はこの曲で口語調の歌詞を採用したのでしょう。

口語調の言葉たちは真に迫った想いのように感じられます。

リスナーは桜井和寿の肉声を聴いているのです。

自分に合った魅力を育てよう

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主人公は自身の個性に沿った魅力を身にまとう努力をします。

決して他人の真似をしようとするような無理あることはしていません。

しかし一向にうまくいかないと桜井和寿は歌うのです。

アルバム「シフクノオト」は前作から1年11ヶ月のインターバルを置いて発表されました。

この間の創作における苦悩が反映されているのかもしれません。

一方で遠い空を目指して歌を紡ぎます。

もっと成長していきたいという願いを空に重ねるのです。

しかし実作はうまくいかなかったのでしょうか、自分の実力のなさを恥ずかしく思うと歌います。

Mr.Childrenの活動は何度かの小休止がありますが、概ね順風満帆だと見做されているはずです。

しかし当事者の桜井和寿は中々うまくいかないことを嘆きます。

歌詞に現れるパブリック・イメージとの落差は、桜井和寿が誠実なひとであることの証でしょう。

いつだって自身の表現を磨き上げることを考えて生きているのです。