宛てのない恋をしても
きっと 傷つくだけと
友達に叱られたけれど
それでもいい それでもいい
逢いたい
出典: ポケベルが鳴らなくて/作詞:秋元康 作曲:後藤次利
1行目の恋とは、実らない恋を指しているのでしょう。
決して結ばれることがない、いつか別れがくる恋、なのかもしれません。
恋愛のゴールは一般的に結婚ですが、不倫の末、略奪婚にでもならない限りゴールはないのです。
それを知った主人公の友人は「そんな恋愛やめなさい」と言ったことでしょう。
幸せになれないとわかっている恋ですから、友達も手放しで応援はできないのです。
しかし主人公は、4行目のようにそれをわかったうえで構わないと思っています。
幸せになれなくても、結ばれなくてもいい。
きっと彼女にとっては、“今一緒に居たい”という気持ちの方が上なのではないでしょうか。
「恋は盲目」という言葉があるように、まさに彼女は周りの意見に聴く耳を持ちません。
あなたから来る一方的な連絡をまっているの
ポケベルが鳴らなくて
恋が待ちぼうけしてる
ねえ あなたは 今 どこで
何をしてるの?
ポケベルが鳴らなくて
恋が待ちぼうけしてる
私の方から 電話できない
現実より 愛している
出典: ポケベルが鳴らなくて/作詞:秋元康 作曲:後藤次利
サビ部分の歌詞です。
時代はスマートフォンよりももっと前のポケベル時代。
しかもこの楽曲がリリースされた時は、ポケベルもまだ普及する前の最先端のアイテムでした。
そのポケベルが主人公たちの唯一の連絡手段だったのです。
相手は妻子ある男性。頻繁に連絡を取れないのも承知の上だったはず。
しかし、それでも彼女はなかなか鳴らないポケベルを握りしめているのでしょう。
いつ鳴って呼び出されるか、期待に胸を膨らませて。
ポケベル世代の方だったらきっとこの気持ちをわかっていただけると思います。
今のLINEのような用途とはまた別で、用事があるときに鳴らすのがポケベル。
つまりそれは、会えることを意味しています。
主人公の方から連絡をすることができないのは、不倫のルールでもあったのでしょう。
一方的に待つだけの恋に不安を感じている様子がうかがえますね。
恋が始まった時は、もしかしたらここまで待ち焦がれることもなかったのかもしれません。
しかし一緒に過ごす時間が増えるにつれ、奥さんの元に返したくないという想いもあったはず。
それはもう自分で想っていた以上に彼のことを好きになってしまった証拠なのです。
不倫だから仕方ない…でも
約束をしない あなたのずるさが
今日の一日を 独り占めしてる
高層ビルとか 地下鉄の中は
愛を呼ぶ声が 届かないから
出典: ポケベルが鳴らなくて/作詞:秋元康 作曲:後藤次利
この辺りからは徐々に彼女の焦る気持ちが見え隠れてきます。
不倫というリスクがある中で、彼を責める気持ちもでてきてしまうのでしょう。
1行目の「ずるさ」に注目してみると、妻がいる男性の常とう手段のようにも思えます。
「次はいつ会えるかわからないから今日は会おう」
そんな駆け引きで、主人公との時間をあたかも貴重であるかのように装っていたのかもしれません。
そんなことを言われたら、彼女は会うしかないでしょう。
例え“もう会わない”と決心していても、それすらも揺らいでしまうくらいずるい言葉です。
愛してはいけない相手を愛してしまうと、やっぱり自分が傷ついてしまう。
4行目から、彼女がそう思ったであろうことが読み取れます。
ここでの気持ちは「私の気持ちなんて、あなたにわかりっこない」ということではないでしょうか。
辛い恋愛であることがよく伝わってきます。
聞き分けのいい振りをするわ
聞きわけがよすぎるのね
いつも 受け身の方が
あなたには 都合いいのでしょう
それでもいい それでもいい
逢いたい
出典: ポケベルが鳴らなくて/作詞:秋元康 作曲:後藤次利
それでも彼女は、彼の前では何でもないフリをしているのでしょう。
聞き分けの良いフリをして、都合のいい女でいることを何とも思っていないように振る舞うのです。
本心では寂しさや憎さがあったとしても、既婚者を好きなってしまったのは紛れもなく自分。
誰を責めるわけにもいかないことは彼女自身がわかっています。
だからこのまま…彼にとって都合がいい女でもいいと思ってしまうのです。
この歌詞から読み取れる気持ちは、彼を奪おうなんて考えていないというものはないでしょうか。
あくまで受け身のまま、会ってくれるだけでいい。
自分の立場を分っていて、気持ちを最小限抑えた結果の想いだと思います。
2番目なら2番目らしく…
気まぐれで構わない
早く 私 呼び出して…
そう 未来の不安より 今が淋しい
気まぐれで構わない
早く 私 呼び出して…
あなたの一部が 私のすべて
2番目でも 愛されたい
出典: ポケベルが鳴らなくて/作詞:秋元康 作曲:後藤次利
ここではさらに受け身に徹しようとする彼女の気持ちが汲み取れます。
自分から一切のわがままを言わず、彼が逢いたい時に呼び出してくれればいい…。
そんな気持ちではないでしょうか。
3行目で綴られているように、彼女にとって2人の未来は関係ありません。
不倫からスタートしている以上、結ばれることなど期待してはいないのでしょう。
それよりも、“今”の気持ちを大切にしたいという想いもあるのだと思います。
切ないこの歌詞からは、自分の要求など一切しないし、気まぐれでもいいから会いたい。
そんな気持ちだけがただひしひしと伝わってきます。