終焉を迎えた恋……共感必至の歌詞を紐解く
ここからは「オリビアを聴きながら」の歌詞を読み込んでいきたいと思います。
優しい唄とジャスミン茶の香りに包まれた一人の夜
お気に入りの唄 一人聴いてみるの
オリビアは淋しい心 なぐさめてくれるから
ジャスミン茶は 眠り誘う薬
私らしく一日を 終えたい こんな夜
出典: オリビアを聴きながら/作詞:尾崎亜美 作曲:尾崎亜美
更けゆく夜を一人過ごす女性。
淋しい心を抱えているようですが、その理由はいったい何でしょう。
現状は本来の彼女が理想とするものではなく、それ故に眠れない様子がうかがえます。
お気に入りの唄とお茶が彼女をなぐさめ、眠りへと誘ってくれることを願っているのですね。
その唄を歌っているのは、タイトルにも入っている「オリビア」。
後ほど詳しく説明しますが、イギリス出身の歌手・オリビア・ニュートン・ジョンのことです。
出逢った頃とはまったく違ってしまった、今
※出逢った頃は こんな日が
来るとは思わずにいた
Making good things better
いいえすんだこと 時を重ねただけ
疲れ果てたあなた 私の幻を愛したの
出典: オリビアを聴きながら/作詞:尾崎亜美 作曲:尾崎亜美
この部分全体をざっと読むと、恋を失ったのかな? と想像できますね。
1行目に戻って詳しく読み解いてみましょう。
相手に出会って恋に落ちた時、それが終わる日を恐れることはあると思います。
ですが、それがどんな形での終焉なのかまでは分かりません。
まさかこんな風に……と、呆然とするような終わり方もあるでしょう。
彼女も今、まったく想像していなかった形で終わりを迎えたのかもしれません。
3行目の英文は、直訳すると「良いことを、より良くしましょう」となります。
しかし二人の恋は「時を重ねただけ」で、より良くはならなかったと振り返っていますね。
しかも彼は「疲れ果てた」挙句、彼女の「幻を愛した」といいます。
この二人にいったい何があったのでしょうか?
もう少し先を読んでみる必要がありそうです。
オリビア・ニュートン・ジョンについて
その前に、ここでオリビア・ニュートン・ジョンについて説明しておきましょう。
オリビアは1970~80年代にかけて、日本でも大ブレイクした歌手です。
当時は深夜放送を中心とした、ラジオの全盛期。
邦楽洋楽を問わず、電話やはがきによるリクエストで曲をかけてくれるという番組がたくさん!
そんな中、オリビアは新曲がリリースされるたびにリクエストが殺到するほどの人気でした。
杏里が尾崎亜美制作の楽曲でデビューすることが決まったのは、ちょうどそんな時期と重なります。
尾崎亜美が杏里に好きな歌を訊ね、それを歌っているのがオリビアだったことから、この曲が生まれたのでした。
先程の引用にある英文も、オリビアの楽曲タイトル「Making a Good Thing Better」からです。
しかしちょっと待って!
こちらは「a Good Thing」と単数形、杏里の曲では「good things」と複数形です。
ここに何らかの意味が隠されていそうな気がしますね。
窓越しに数える星明りの向こうに
眠れぬ夜は 星を数えてみる
光の糸をたどれば 浮かぶあなたの顔
誕生日には カトレアを忘れない
優しい人だったみたい けれどおしまい
出典: オリビアを聴きながら/作詞:尾崎亜美 作曲:尾崎亜美
さて、続きです。
別れた人の面影を星空に見るというのは、ロマンティックな表現ですね。
彼に対する想いの名残を惜しんでいるのでしょうか。
カトレアの花は、2018年現在でもかなりの高級花です。
現在は栽培技術が進歩しているのにも関わらず、1本700円以上するようですよ。
調べてみたところ、1本の茎に花が3つついているものだと、約2500円とか!
この曲が生まれた1978年当時だといくらしたのでしょうか……。
誕生日に贈るくらいですから、1本ということはないように思います。
それにプレゼントも付けていたら……すごい金額になりそうですね。
そんな優しい人だったのに「みたい」とまるで他人事。そのうえ「けれどおしまい」。
あまりにもバッサリ切り捨てているようで、ちょっとびびってしまいます。
前半のロマンティックな部分との対比が凄すぎませんか?
終わった愛への未練はない?
夜更けの電話 あなたでしょ
話すことなど 何もない
Making good things better
愛は消えたのよ 二度とかけてこないで
疲れ果てたあなた 私の幻を愛したの
※くりかえし
出典: オリビアを聴きながら/作詞:尾崎亜美 作曲:尾崎亜美
当時は携帯電話はおろか、留守番電話さえもまだありません。
いわゆる「黒電話」の時代です。当然、誰が電話をかけてきたかなんて分かりませんね。
でも、こんな夜更けに電話をかけてくるのは彼しかいないと確信しているようです。
2行目では「話すことなど 何もない」……またもばっさり。
そして4行目でたたみかけるような言葉の連続。
彼女は未練どころか、彼に対して嫌悪感まで持っているのでしょうか?
そんな風に考えてしまうほどの強烈さですね。
この後※印部分が繰り返されます。