33作目のシングル
前作からわずか4カ月
2004年に発表された、浜崎あゆみの「INSPIRE」。
「鼓舞させる」「発奮させる」という意味のタイトルを冠した、33作目のシングルです。
前作シングル「Moments」からのスパンは、わずか4カ月という短さ。
さらに、「INSPIRE」の2カ月後には、次のシングル「CAROLS」をリリースします。
どの曲も、週間シングルチャートでは当たり前のように1位を獲得しました。
彼女の作品について詳しくなければ、「INSPIRE」は人気絶頂期の曲の1つとしか映らないかもしれません。
しかし、目まぐるしいリリースサイクルの真っ只中で、この曲の歌詞には特別な意味が込められていました。
自身の曲において全ての作詞を手掛ける、浜崎あゆみ。
「INSPIRE」の歌詞は、シンガー、作詞家として自らを表現する彼女の成長の証だったのです。
パワフルな歌詞
ベストアルバムにも収録
6thアルバム「MY STORY」に収録された「INSPIRE」。
その後に発売された、幾多のベストアルバムなどにもラインナップされています。
優れた歌唱力はもちろん、鋼(はがね)さえ射抜くと思えるほどの鋭い目つきで繰り出すダンスも印象的です。
パワフルな歌詞に励まされ、勇気付けられたリスナーも多いかもしれません。
どんな歌詞なのか、まずは読んでみましょう。
リアルな心象
ふさわしそうな笑顔選んで
もっともらしいセリフ並べて
頭んなか真っ白で
感情なくしたフリはそろそろ終わりにして
そう人はひとりじゃ生きれない
そんな当たり前の事とか
そう愛だってなきゃ生きれない
今更身に染みてる
出典: INSPIRE/作詞:ayumi hamasaki 作曲:Tetsuya Yukumi
「ふさわしそうな笑顔選んで」
「もっともらしいセリフ並べて」とは、その場を取り繕うためだけの笑顔、言葉を指すのでしょうか。
「感情なくしたフリ」は、自分の正直な気持ちにふたをすること。
そんな馬鹿げたことは「そろそろ終わりにして」というメッセージです。
「人はひとりじゃ生きれない」
「愛だってなきゃ生きれない」
そんなことは、分かり切っていたはずなのに。
「今更身に染みてる」という自嘲的な言葉は、彼女自身のリアルな心象を隠さず映し出したかのようです。
答えがないからこそ
もうこんな時代だからって
それってどういう言い訳
ねぇ愛だとか夢だとかを
口にする事は
カッコ悪い事なんかじゃない
誰に向けた言葉なのか
何のための過程なのか
生きるって何なのか
もしも確かな答えがあったらつまんないよね
出典: INSPIRE/作詞:ayumi hamasaki 作曲:Tetsuya Yukumi
「こんな時代だから」とは、あらゆる場面で誰もが口にしやすい言い訳。
浜崎あゆみは、そんな安易な言い訳をバッサリと切ってみせます。
多くの人にとって、臆面もなく語るのがはばかられる「愛だとか夢だとか」。
「口にする事は カッコ悪いことなんかじゃない」と、背中を押してくれるのです。
リスナーを「INSPIRE」、まさに奮い立たせるストレートな言葉は、さらに続きます。
「言葉」は愛に不可欠なコミュニケーション、「過程」は夢に向かっての行動や努力を指すのでしょう。
それらに「確かな答え」があるのだとしたら、何をするにも最初から行き着く先が見えてしまうということ。
それは「つまんないよね」というメッセージです。
「生きるって何なのか」という問いには、「確かな答え」など存在しません。
だからこそ人は生きる、という強いアイデンティティーを説いた歌詞なのです。
何度だって立ち上がる
もう迷う必要なんてない
守りたいものならわかってる
もう引き返す事は出来ない
そんなの承知の上
そう何度だって立ち上がる
壁なんて壊してしまえばいい
ねぇまだまだこれからなんじゃない
道が続く限り
扉なら開いてけばいい
出典: INSPIRE/作詞:ayumi hamasaki 作曲:Tetsuya Yukumi